従者が記す世界大戦記

わきげストレート

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黒騎士

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~鉱山の街パルプール~
コツ、コツ、コツ・・・夜の街路に石畳を叩く足音が響く。女は家路を急いでいた。酒場の並んだ明るい通りから、人気の無い路地裏へと入った。こっちのほうが近道だから・・・後悔は先には立たない。
コツコツという音が建物と建物の間で木霊する。生ぬるい風が女の頬を撫でた時、不意に後ろで"ガシャッ!"という音がした。
女は一瞬立ち止まったが、唾で喉を鳴らすと早足で駆け出した。
もうすぐ・・・もうすぐ明るい大通りよ!
カッ、カッ、カッ・・・と足音が速く鳴る。その時、女はゾッとした。
ガシャッ!ガシャッ!ガシャッ!
何かが背後から迫ってくる。
恐くて振り向けない。でも、何が追ってきているのか・・・。
走りながら、勇気を出してそっと振り向く。
視界が"それ"を捉えた瞬間、女は顔に熱いものを感じた。
「アッ・・・」
後ろから追ってきた"それ"に顔を斬りつけられたのだと気づいた時には、女の視界は血で溺れ、意識が飛びかけていた。
そして最後に残ったマリオネットの糸を切るが如く、女の身体は縦に裂け、血飛沫を上げたのだった。
「ああ・・・綺麗だよ・・・これで僕が、君を初めて殺した男になったんだ・・・君の臓物を初めて見た男・・・君の心臓を初めて握りしめた男・・・そして、君が最後に見た男になれた・・・」
肉塊と成れ果てた女の瞳に最後に映ったのは、血にまみれた漆黒の鎧を着た騎士の姿であった。


「えーと、今月のスカウトは2人であり、指令書の消化は・・・」
平野のガタガタ道を行く馬車の中、下手くそな字がさらにクネクネになりながらも報告書を書く俺。
「・・・てゆーか、なんで俺ばっかり報告書書かせんだよ!」
馬車生活が長引くとどうでもいいことにイライラしてしまうものだが、これはいつでも納得いかないことだ。
「え~っ?だって、オーリィは『騎士団長』様ですのよ?上官よ、上官!あたしは独自の記録をつけてるし・・・あれ?あんたの役職なんだっけ?」
シルバがニヤニヤしながら眉を上げる。くそ!『従者』が雑用係だからってよ!くすん。
ソビトとナショアの衝撃的な死から2ヶ月が経った。今は次なるA級指令の地へ向けて移動中なのである。
途中、C級以下の指令を何件かこなしつつ、一般兵のスカウトもしつつ・・・なかなか和やかに過ごしていた。ちなみにC級指令の難易度は、横領している役人をとっちめたり、村や集落の領土問題を解決したり、国外で勢力を伸ばしている武力団体の面接を受けてみたりするようなものだ。
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