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前説の物語1 鈴鳴りの魔女リリィ
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リリィは天才魔女である。
そして超ド級のバカである。
世の理を理解し、あらゆる魔法を習得し。
絶えず様々な問題を起こし続ける。
そう、皆にとって厄介この上ない存在なのである。
だが戦いにおいて、相手にとってその存在が不運であるとも言える。
まさに天災レベル。それは事故として受け止めるしかない。
ここは幾つもの浮島により構成された世界【アナシア】
住人全てが魔女。人々は自分のホウキか巨大なロック鳥に乗り移動をする。
今この世界は二分する勢力により、戦争状態にある。
一つは自然との調和を目指す白の魔女の国「ミストラン魔法王国」
もう一つは自然の支配を目指す黒の魔女の国「ウォリック魔法皇国」
その考え方の違いは、互いに歩み寄る事を不可能にしており、争いは数百年続いていた。
しかし、永久に続くかと思われたこの戦争状態は、一人の魔女の登場で一瞬で決着がつく。
それがウォリック魔法皇国の【鈴鳴りの魔女リリィ】である。
首に付けたその鈴が鳴るたびにどこかで災いが起こる。
ウォリックのある地方では近年この様な格言がある。
「鈴の音が聞こえたら、一目散にその場を逃げなさい。さもないと生きては家に帰れないわよ」
これは笑い話でも都市伝説の類でもなく、まぎれもない事実を言い表している。
小さな子供が泣いていると「リリィがやって来るわよ」の一言で泣き止むと言われるほどでもある。
まさに畏怖の対象なのだ。
リリィ本人は、当初この戦争に参加する気など毛頭なかった。
家でダラダラと不登校生活の毎日。一応学生の身分。
不登校の理由は、魔法学校のレベルを彼女がとっくに超えてしまい、好きな魔法研究に打ち込むという自称「引きこもり」というだった。
「引きこもり」と称するクセに、夜な夜な魔法研究だと辺りを更地や炭に変えて周った。
ある時は一夜で森を焼き尽くし。
またある夜は月が見えないという理由で山を平地に削る。
更に違う夜は濡れるのが嫌だと湖を干上がらせた。
自然ですら彼女の前では雑多の一つにすぎないのだ。
好奇心は旺盛なのに、極端に怠惰。
言わば最低の性格である。
近くにいるだけでも迷惑な存在。
どこかで破壊活動をしていない時間は、相棒の黒猫スロウスの肉球をグリグリするか昼寝をしているくらいの、本当にしょうもない生活態度だった。
この生活態度にいい加減、母親がぶち切れ、リリィを無理やりこの戦争に放りこんだのである。
めんどくさがりのリリィは思った。
「何をチマチマ何百年もやってるのかしら。敵の本拠地を消し去ればおしまいでしょうに」
思ったら即行動に出る性格のため、単身ミストランに乗り込み、白の国を一瞬で消し去った。
文字通り、国があった島ごと無に帰したのだ。
禁忌とも言える殲滅の魔法によって。
これにはウォリックの首脳陣も、正直ちょっと引いていた。
「いや、やろうと思ってもやっちゃダメでしょう」
「倫理とか。そういうのちゃんとあの子に教えていたの?」
「無理よ、そもそもあの子最近学校にすら来てなかったらしいのよ」
「これじゃあ赤子にリーサルウェポンを委ねているに等しい状態じゃないの」
「どうするのよ、これ」
母国でさえこの狂乱の魔女の扱いに困っていたのだ。
そんな折に【招待状】が届く。
鏡文字にて書かれた文の差出人は【世界の根幹】と名乗る者。
そこにはこう書かれたいた。
「闘いに勝利すれば望みのモノを与えよう」
リリィは先の戦争の褒美として、魔法学校の特例卒業処置と共に、この戦いに送り込まれた。
要は体のいい厄介払いだ。
ただリリィはまだ見ぬ世界に興味があり、結構ノリノリでこの闘いに向かった。
実は母親から「お前もそろそろいい年なんだから家を出て独り立ちしなさい。私が若い頃にはね……」とグダグダ言われていた事も大いに影響していた。
ひょっとしたら、この母ちゃんこそ世界最強の生き物だと言えるかもしれない……。
そんな経緯でリリィはこの闘いに参加する事になった。
だらけ仲間の黒猫スロウスと共に。
そして超ド級のバカである。
世の理を理解し、あらゆる魔法を習得し。
絶えず様々な問題を起こし続ける。
そう、皆にとって厄介この上ない存在なのである。
だが戦いにおいて、相手にとってその存在が不運であるとも言える。
まさに天災レベル。それは事故として受け止めるしかない。
ここは幾つもの浮島により構成された世界【アナシア】
住人全てが魔女。人々は自分のホウキか巨大なロック鳥に乗り移動をする。
今この世界は二分する勢力により、戦争状態にある。
一つは自然との調和を目指す白の魔女の国「ミストラン魔法王国」
もう一つは自然の支配を目指す黒の魔女の国「ウォリック魔法皇国」
その考え方の違いは、互いに歩み寄る事を不可能にしており、争いは数百年続いていた。
しかし、永久に続くかと思われたこの戦争状態は、一人の魔女の登場で一瞬で決着がつく。
それがウォリック魔法皇国の【鈴鳴りの魔女リリィ】である。
首に付けたその鈴が鳴るたびにどこかで災いが起こる。
ウォリックのある地方では近年この様な格言がある。
「鈴の音が聞こえたら、一目散にその場を逃げなさい。さもないと生きては家に帰れないわよ」
これは笑い話でも都市伝説の類でもなく、まぎれもない事実を言い表している。
小さな子供が泣いていると「リリィがやって来るわよ」の一言で泣き止むと言われるほどでもある。
まさに畏怖の対象なのだ。
リリィ本人は、当初この戦争に参加する気など毛頭なかった。
家でダラダラと不登校生活の毎日。一応学生の身分。
不登校の理由は、魔法学校のレベルを彼女がとっくに超えてしまい、好きな魔法研究に打ち込むという自称「引きこもり」というだった。
「引きこもり」と称するクセに、夜な夜な魔法研究だと辺りを更地や炭に変えて周った。
ある時は一夜で森を焼き尽くし。
またある夜は月が見えないという理由で山を平地に削る。
更に違う夜は濡れるのが嫌だと湖を干上がらせた。
自然ですら彼女の前では雑多の一つにすぎないのだ。
好奇心は旺盛なのに、極端に怠惰。
言わば最低の性格である。
近くにいるだけでも迷惑な存在。
どこかで破壊活動をしていない時間は、相棒の黒猫スロウスの肉球をグリグリするか昼寝をしているくらいの、本当にしょうもない生活態度だった。
この生活態度にいい加減、母親がぶち切れ、リリィを無理やりこの戦争に放りこんだのである。
めんどくさがりのリリィは思った。
「何をチマチマ何百年もやってるのかしら。敵の本拠地を消し去ればおしまいでしょうに」
思ったら即行動に出る性格のため、単身ミストランに乗り込み、白の国を一瞬で消し去った。
文字通り、国があった島ごと無に帰したのだ。
禁忌とも言える殲滅の魔法によって。
これにはウォリックの首脳陣も、正直ちょっと引いていた。
「いや、やろうと思ってもやっちゃダメでしょう」
「倫理とか。そういうのちゃんとあの子に教えていたの?」
「無理よ、そもそもあの子最近学校にすら来てなかったらしいのよ」
「これじゃあ赤子にリーサルウェポンを委ねているに等しい状態じゃないの」
「どうするのよ、これ」
母国でさえこの狂乱の魔女の扱いに困っていたのだ。
そんな折に【招待状】が届く。
鏡文字にて書かれた文の差出人は【世界の根幹】と名乗る者。
そこにはこう書かれたいた。
「闘いに勝利すれば望みのモノを与えよう」
リリィは先の戦争の褒美として、魔法学校の特例卒業処置と共に、この戦いに送り込まれた。
要は体のいい厄介払いだ。
ただリリィはまだ見ぬ世界に興味があり、結構ノリノリでこの闘いに向かった。
実は母親から「お前もそろそろいい年なんだから家を出て独り立ちしなさい。私が若い頃にはね……」とグダグダ言われていた事も大いに影響していた。
ひょっとしたら、この母ちゃんこそ世界最強の生き物だと言えるかもしれない……。
そんな経緯でリリィはこの闘いに参加する事になった。
だらけ仲間の黒猫スロウスと共に。
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