<夢幻の王国> サムライドライブ

蒲生たかし

文字の大きさ
11 / 33

  幕間の物語4 予知の少女ミリア

しおりを挟む
ミリアは兄と二人で暮らしていた。

兄は建築家を目指しており設計事務所で見習いとして働き、ミリアは看護師のアルバイトをしていた。
それぞれ共に両親が働いていた職種ではあったが、二人とは既に死別しており、親が残した郊外の家に住んでいた。

ミリアには特別な力があった、それは「予知夢」という力だ。

その内容はとても断片的なイメージなのだが、時にはそのおかげで命が助かった時もあった。
ある日、兄にいつものバスに乗るのを止めて、一本後のに乗る様に言った。
乗る予定のバスは事故に遭い大破、乗客は全員死亡した。

ご近所の人々にも予言をしたことがり、それが噂として広まってしまった。
兄はもうその力は使うわない様にと釘を刺した。

ある時を境に悪夢を見ることなる。
その内容は、兄とは離れ離れになり、ミリアが檻に入れ閉じ込められるというものだった。
回避策は無いのかと聞いても、無いと答えるミリア、だけけれども光はある、ある者が私たちを助けてくれると答えた。
兄に「ある言葉」を覚えておいてと、それを伝えていた。

妹思いで心配性の兄は家の警備を強化した。
家の中には武器も用意した。

しかしその日はやってきた。

武装した何十人もの人間が、二人の家を強襲したのだ。
ミリアはあっさりと捕まり人質となった事で兄は抵抗ができなくなり大人しく降伏した。

兄妹は別々の施設に送られた。
ミリアはある施設に連れていかれ、頭にたくさんのチューブが繋げられた。
ヘルメットの様なものを被らされ、カプセル状のベットに寝かされ蓋を閉められた。
これが予知で見た檻かとミリアは思った。

変な注射を打たれて意識があるが身体は動かせない状態を保たれた。
自分でも起きているのか寝ているのかわからない状態だ。

どうやら自分の見ている予知夢を投影するの装置につながれているらしかった。

それから、ミリアはただ予知夢を生み出すための装置となった。
身動きはとれず、ただひたすら自分のビジョンを伝えるだけの日々が続いた。
そのうち自分を保てずに、自我を失いそうになる。

そんな時、何者かがミリアに話しかけて来た。頭の中に直接。

セバスチャンと名乗るその人物は、ミリア同様に施設に捕らえられた
「テレパシー」という能力があり、離れた人とも意識の中で会話ができた。

ミリアはセバスチャンとの日々の会話で何とか自分を保つ事が出来た。

次第にお互いの身の上を話す様になった。
セバスチャンはある家に使える執事だった。
戦争に寄り身よりを失った所を、ある富豪の夫婦にやとわれたのだ。
セバスチャンは会話をせずともこの夫婦の考えが分かり、日々従事した。
言わなくとも思いを理解し生活のサポートをするこの執事を特に気に入っていた。
例えば、紅茶を飲みたいと思った時には、そう伝える前に紅茶のセットをもって来るのだ。

この老紳士はセバスチャンの事を大層気に入り、社交界などの場で自慢をして回ってしまった。
「私の執事はまるで超能力者の様に、私の考えを読み取り動いてくれる」
周りの人間たちは冗談であると思っていたが、中には冗談とはとらえなかった者たちがいた。

その者たちによりセバスチャンは捕らえられ、抵抗する老夫婦はその場で射殺された。

家族に続き従事していた老夫婦までも失い、絶望の中で施設に送られた。

この能力で他に捕らえられた人間たちと会話を試みたが、既に心を壊した者たちばかりだった。
そんな中、あるミリアと出会った。

セバスチャン老い先短い我が身ではるとは理解していた。
しかし、このミリアだけは助けてから死のうと考えていた。

その決意を知らぬままミリアは今日もセバスチャンとの会話を続けている。

ある日、ミリアはセバスチャンに言った。いつもとは違ってうれしそうに。
「もうすぐです、セバスチャン。もうすぐ彼がやって来てくれます」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...