<夢幻の王国> サムライドライブ

蒲生たかし

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  幕間の物語11 魔王子ベルザ

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人が住む世界とは別の世界である。
そこは「魔界」と呼ばれる。
魔王が君臨し、絶えず人間界への侵攻を企む。
その進行を阻むのが天使軍。
この戦いは永遠とも思える期間続いている。

しかしある時、この戦争に終止符が打たれる。
魔界の内部より魔界が壊滅したのだ。
きっかけは魔王とその弟の争いだった。
やがてそれが魔界全土に波及し、最後は魔王とその弟の相討ちという形で終わった。

その戦いのさなか「ダークコア」と呼ばれる暗黒結晶が使われた。
一瞬で大消滅を起こす超兵器だ。
魔界は広大だ、その全てを掌握している者はいないと言われていたが、このダークコアの使用により、魔界全土の8割は消失したと言われいる。

魔王子ベルザは魔王の息子だ。
息子の数はハッキリとはしないが少なくとも100は超えるという。
魔王が倒れた後は、この魔王の息子たちによる跡目争いが始まった。
またも魔界は凄惨な戦いの日々となった。

ベルザは魔王の側近であり、ベルザの教育係りであった老魔ガジの口により、魔王と弟の戦いはある正体不明の者の仕業だと告げた。
その者の名は「リビアナ」。次元を超えて旅をする商人と名乗っていた。
魔王に「ダークコア」を売り、対する魔王の弟にも「ダークコア」を売ったという。
ウサギの付け耳をし、その瞳孔は漆黒に染まり、その中に赤い線が走っていたという。
老魔ガジによれば、悪魔以上に悪魔的な瞳だったという。
リビアナは突如として現れ、そして消えるという。どこから来てどこへ行ったのか誰も知らない。

ベルザは跡目争いなど興味はなく、このリビアナを討つ事を人生の目的とした。

魔王子ベルザには力があった。
「闇壊」という能力で、「壊れろ」と念じれば物を壊せる。壊せる物は物体に限られ、生物を壊す事はできない。
だが大きな闇壊の衝撃は生物にもダメージを与えることができる。
攻撃可能な距離は5mほど。
この力を使うには闇の力を使っており、闇の力が尽きれば闇の力を吸収するまでこの能力は使えない。
闇に満ちた魔界では無敵の能力だが、他の世界では夜の間しかこの力を吸収できない。
また、力を使い切れば全く動けなくなるため、旅には護衛が付いた。
長身で細身のダリアと大柄のモガン。魔界でも有数の戦士だ。

魔王子ベルザはとある世界である商人から話をきいた。
その商人は次元を超えて仕事をしているというが、最近確かに戦争や争いが増えていると感じているという。
原因は些細な内紛や外交上の些細な事がきっかけだったりするという。
まさに魔界と同じだった。

旅を続けて数年、ある世界の情報屋から手がかりを得る。
「中央世界」というところがあり、そこにウサギの付け耳をした商人がいるという。
その情報屋が法外な報酬を要求してきたので身体を刻んだ。
「悪魔かよ」
と問われたので、
「ああ、悪魔だよ。悪魔の王子さ」
と答えていた。

数カ月間世界を渡り「中央世界」にたどり着いた。
飲み屋で話を聞くと、ここでは「デュエル」というものが行われているという。
勝てばなんでも望むモノが手に入るという。
呑気な娯楽だと魔王子ベルザは思った。
欲しいものがあれば、ただ奪えばいい。それが魔界の考え方だ。
この旅でも基本、殺し、奪い、生活をしてきた。

あるクラブのVIPルームにリビアナがいるという情報を掴み、そこに向かう。
途中数人のガードマンを半殺しにした。

VIPルームの一室にウサギ耳の女が優雅な椅子に腰を掛けてお酒を飲んでいた。
大きなスクリーンでデュエルが放送されている。
「お前がリビアナか?」
「ここはVIPルームですよ~。ナンパなら他でやってくださらない?」
言い終わらないうちに魔王子ベルザは椅子を壊す。
椅子から落ちて体勢を崩した所を剣で刻もうかと思ったが、そこにはリビアナはいなかった。
「中々強引な方の様ですわね」
声は椅子のあった別の壁際から聞こえた。
「嫌いじゃありませんのよ、そ~ゆ~殿方は。だってカワイイじゃありませんか」
「だまれ! このウサギが!」
「あなた、もしかして私を誰かと勘違いなされていませんか?」
「貴様はリビアナだろう!」
その女は?という顔をしている。
「リビアナって誰ですか?」
「これはすまなかった」
「ダリア、モガン、別の部屋だ」
部屋を出ようとしたとき、その女は笑い出した。
「ふふふふふふふふふ」
「女、何がおかしい」
「失礼いたしました。まさかここまでウブだなんて、笑いがこらえる事が出来ませんでした。あなた方はそんなだから、魔界があんなことになってしまうんですわよ。ベルザ王子ちゃま~」
「やはり貴様がリビアナか!」
ベルザは怒りで部屋中の物を「闇壊」で破壊し続けたが、リビアナは瞬時に移動し続け全く影響がない。
ベルザは膝をつく。
「クソ、力を使い過ぎたか」
「王子、後は我々が」
ダリアとモガンがそれぞれ武器を構え前に出る。
「あらあら、王子様はもうへばってしまったの~? 私はあと何回戦でも行けますのに~」
「えーい! 黙れ!」
ベルザは手をかざすが何も起きない。
部下のダリアが諭す。
「王子! もう力を使ってはなりません。行くぞモガン!」
「ウガ!」
「あら、か弱いレディに二人係りですの? 私、3Pはあまり好みではありませんのに」
「黙れゲスが!」
飛び掛かるダリアとモガン。

次の瞬間二人の身体は上下に裂けた。

「戦う力はございませんが、これくらいの事はできますの」

二人の死体は4つになり地に落ちた。
「ダリア! モガン! クソ!」
力を使い果たしベルザは動けない。
そこにリビアナがゆっくりと近づいて行く。
「ストーカーさんに家がばれてしまっては、引っ越しをしなければですわね。この中央世界は何かと便利だったのに。ざんねん、ざんねん」
突然リビアナは自身の後ろの空間を次元を切り裂いた。
「ん? 気のせいだったのでしょうか? まあいいわ」
リビアナはベルザの横まで来て、その頬にキスをして言う。
「じゃあねベルザ王子ちゃま。できたらもう二度と会いたくないですわ」

そしてリビアナは姿を消した。

しばらくし、床にもう1体身体を二つに裂かれた者が現れた。
悪魔の騎士バニス。ダリア、モガンと3人で王子の護衛をしてきた。
常に姿を消しており、ベルザにとっては奥の手として機能していた。
「発信機は付けれたか?」
「は。何とか付ける事は。しかし、気配を消してなお感づかれるとは」
「よくやってくれた、バニス」
「どうやら私もここまでかと。どうか、我々の悲願を……」
バニスも息絶えた。

「ダリア、モガン、バニス。先に行っていてくれ、私も事をなしたらそちらに行く」

魔王子ベルザは優秀な部下3人を失ったが、リビアナに発信機を取り付ける事は出来た。
正面からぶつかっては勝ち目がない事は分かった。
リビアナを討つために準備が必要な事を理解した。
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