<竜騎傭兵> ナイン・スペード・ドラグドライブ

蒲生たかし

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第14話 バック・スタバー

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「銃を買いに行くぞ」
「いよいよ実践訓練ですね!」
「違う護身用だ」

ナインは付きまとう弟子志願のサイを振り切る事をあきらめ
最低限自分自身の身は守れる様にすると決めた
厄介事が向うからやってくるナインの側にいれば
否が応でも危険にめぐり合う

ナインはサイを連れて
地元の街であるアルカディアで
なじみのガンショップに向かった

「師匠みたいな銃がいいです」
「馬鹿言え
 これはライじいの特注品だ」
「誰ですか
 ライじいって」
「そのうち会うさ」

店に入ると店主が出迎えた
「よおナイン
 ん?
 そっちの子は誰だい
 まさかお前の子供か!?」
「ふざけるな
 俺はまだ23だ」

店主の名前はモンコ
昔は結構名の知れた傭兵だったが
ある戦いで片腕を失いガンショップを営んでいる
ナインは銃弾や装備の購入でいつもお世話になっている

「それよりナイン
 実はいい品を入荷したんだ」
店主はカウンターに古びたライフルを置いた
「おいおい
 『メイトリックスAS 85年型』じゃねーかよ」
「ふふ
 お前さんのために探して来たのよ
 どうだい
 1万2000で」
「こんな銃が1万2000もするの!?」
横からサイが口を挟む
「おこちゃまは黙ってろ
 これは大人が嗜む趣味の話だ」
「1万って1年暮らせる金額じゃないか」
「だから大人の趣味なんだよ」

ナインはアンティーク銃を集めるのが趣味である
国王と知り合いになったのも実はこの趣味が原因でもある

実際借金の一因はこの趣味も影響している
ある目的があってアンティーク銃を求めていたが
今は目的よりも趣味が優先している
「今は持ち合わせが無いから
 次に来た時に絶対買うよ」
「今度来ても
 もう売れてなくなってるかもしれんぜ~」
「俺のために見つけてくれたって言ったじゃん」
「価値のあるものは金のある所に流れていくのが道理なのよ」
モンコは銃をカウンターの奥にしまう
「取り置きとかできない?」
「手付金で2000置いておけば1カ月は置いておいてやるよ」
「せめて3カ月は頼むよ」
「こっちも商売だからな」
「俺とあんたの付き合いじゃないかよ」
「関係性じゃお腹は膨れないからな」
「わかったよ
 とりあえず2000は後で払う
 それより
 今日はこいつに護身用の銃を買いに来たんだ」
ナインがサイを指さし言う
「師匠の銃みたいのがいいです!」
「なんだ
 お弟子さんなのかい」
「弟子じゃない
 付きまとわれてるだけだよ
 小さくて軽いやつ
 何か無いかな?」
「あいよ
 ちょっと待ってな
 えーと」
店主のモンコは小型銃を一丁持って戻って来た
「なら
 これかな」
「カンパリか
 確かに弾詰まりは無いしちょうどよさそうだ」
「やだよ!
 こんなガキが持つような銃」
「ガキのお前にはちょうどいい」

小銃の購入の終わり際
モンコがナインに聞いてきた
「いつも通り
 コレクション見ていくかい?」
「ああ
 定期確認に
 少し寄っていくよ」

ナインは銃のコレクションをモンコの個人金庫屋に預けている
金庫室は4桁の番号を入れるタイプの錠前でロックをかけている

ナインはサイを連れて金庫室に入る
『リッグスMG 87年型』
『マクレーンBW 88年型』
『ランボーSS 82年型』など
そこには数々のアンティーク銃のコレクションが並んでいる
リッグスとマクレーンとランボー
そして先ほどメイトリックスが4大メーカーと呼ばれ
銃文化の総明記を飾っていた
ナインはメイトリックスの初代モデルだけを持っていなかったので
是が非でもこれを手に入れたいところではあった

ナインはあるコレクションのある場所で止まった
「一つの銃が消える」
「師匠
 この間に空いてる場所に銃があったの?」
ナインは外で待つモンコに声をかける
「モンコ入って来てくれ!」
「いいのかい」
「ああ
 確認したい事がある!
 来てくれ!」
モンコが入ってくる

「ここにあった銃が消えてる」
「何言ってるんだ
 セキュリティは万全とまでは言わないが
 こっちも信用で商売をしてるんだ
 第一
 鍵の暗証番号だって俺は知らないんだ」
「いや
 あんたを疑ってる訳じゃないんだ」
「実は元トランプの連中なら
 俺がいつも使うナンバーは全員知ってるんだ」
 
3
9
10

ナインは4桁の番号を設定する時
弟分のタズ(3)と自分(9)と団長(10)のナンバーを
常に使っていた
団長からはいい加減その番号は止めろと言われていたが
意固地にもなって使い続けている

「つまり
 ここに入って銃を持っていたのは
 元メンバーだ
 そしてその間抜けは
 この地面が教えてくれる」
ナインは消えた銃が置いてあった机の前の地面を指差した
「さぁ
 間抜けがいよいよ罠にかかった
 釣りの時間だ」

「足元に特殊な塗料を撒いていて
 それを踏んだ人間を匂いで追跡するなんてできるんですか
 師匠?」
「ああドラゴンの中には鼻の利くやつがいてな
 そこにあった匂いの記憶まで嗅ぎ分けられるって話だ」
ナインとサイはその強い嗅覚を持つというドラゴンを借りに
傭兵ギルドに向かっていた

「サイ
 てめーは家に帰ってろ」
「嫌だ着いて行く」
「あのな
 これから行く場所は
 間違いなくやるかやられるかって場所だ」
「なら尚更だ
 師匠に着いていくって決めたんだ
 命のやり取りの覚悟だって出来てるよ」
ふーっとナインはため息を一つついた
「分かったよ
 ならこれだけは肝に銘じておけ
 自分の身は自分で守れ
 俺はお前と俺どちらかしか守れなかったら自分を守る 
 分かったか」
「言ってるだろ
 覚悟はできてる」

傭兵ギルドで嗅覚の鋭い小型ドラゴンをレンタルして
追跡を開始した

イザナミとサイの相棒の飛竜クロンは
休みなく進み
2時間ほどのところで
犯人がいると思しき建物に着いた
そこは地方警備隊の施設だった

ナインはサイを外で待たせて単身潜り込んだ
内部を調べて行くと
そこで知った顔を見つけた

その男は隊長室に入っていった
ドアの名札は違う名前だが
その顔を忘れるはずもなかった

トランプ傭兵団の裏切者
ジュダの相棒
ファイブ・スペード(5♠)こと
ダーティ・ロウだ


ロウがデスクにつまれた何かの書類から視線を上に向けると
目の前には銃を構えたナインが居た

「まさか
 くそったれのロウ様が釣れるとはな」
「ナインか」
「戦ってもいいんだぜ
 殺さないくらいに半殺しにしてからよ」

ロウは胸からタバコを取り出し
火をつけ一口吸い
煙を吐いた
「いつかこの日が来るとは思っていたが
 あの古銃から足がついたのか
 さすがスペードのエース様だな」
「ご明察だよ
 鈍重なあんたにしちゃよく分かったじゃないの」

額に銃を向けられているのに
ロウには焦った様子は全くなかった
再びタバコを一口吸い
煙を吐く
「知りたいのはジュダの居場所だろ
 残念ながら
 俺は知らねーんだよ」
「なんだと」
「新天地でいい思いをさせてやるって言われて協力したのによ
 今じゃこんな辺境の警備主任ときたもんだ
 最近久々に連絡してきたと思ったら
 ナイン
 お前のコレクションから一丁の銃を盗んで来いだとよ
 ガキの使いかってんだよ
 俺はパートナーだと思ってたのに
 結局つかいっぱなしくらいにしか思われてなかったんだよ
 クソが」
「クソはおめ―だろが
 俺たちの家を壊しておいて」

しばらく無言で見つめ合う二人

「俺から盗んだ銃はどうした」
「使いの人間に渡した
 ご立派なジュダ様は
 もう俺に直接会いにも来ないときたもんだ
 ハッハ」
「よーし
 これが最後だ
 これに答えたら楽に殺してやる
 あの銃は何なんだ」
「知らねーよ」

銃声

「流石腐っても元スペードだ
耳焼かれても眉一つ動かさないか」

銃声を聞きつけ隊長室に隊員が大勢駆け付けた
一斉にナインに向かい銃を向ける
ロウが声をあげる
「おめーら手出しすんじゃね!
 こいつは元トランプのナイン・スペードだ
 名前くらいは知ってんだろ!」
「しかし隊長」
「いいからお前ら全員引っ込んでろ!」

隊員たちはしげしげと隊長室を後にした

「やるなら早くやれ
 どうせ近いうちにジュダに殺されるだろうからな
 もう俺には利用価値もありゃしねーだろう」

「奴はどこだ」
「さっきのが最後の質問じゃなかったのかよ
 まあいい
 答えてやる
 知ってりゃ俺が殺しに行ってら」
「そうか」

「なんで団を裏切った
 あんたは古参のはずだ」
「『正義のためだ』とジュダに言われた
 詳しい事は俺も知らん
 正直
 団の中でも居心地が悪くなってきてたしな
 見返りも期待したんだが
 今じゃこんなもんだ」
「後悔はあるのか」
「無い」
ロウは微笑む

銃声が三発響き渡る

「一足先に地獄で待ってろ
 すぐにジュダも送ってやるよ」
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