ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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中学一年生、冬の頃5

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「いつか、ナツを連れて行きたい」

 まるで恋人のようなその発言に、わたしのまわりだけ時が止まった。

「坂道が辛いなら、俺の自転車の後ろでも乗ればいいよ。本当にすっごく綺麗な景色なんだ。見下ろした町も、見上げた夜空も。だから絶対ナツにも見てほしい」

 かくかくと小刻みに頷いて、忘れていたまばたきと呼吸を再開すれば、時はゆっくり動き出す。

「い、行きたいっ」
「うん。行こ」
「い、いつか絶対連れてってっ」
「うん。絶対連れてく」

 ハルくんが立てた小指にわたしの小指を絡めてする、指きりげんまん。
 日にちも何も決まっていないおぼろげな約束でも、ハルくんなら必ず守ってくれると思った。
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