ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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中学一年生、冬の頃6

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 はらり、ハルくんがページをめくると、今度は夏の星座たちが現れる。

「俺、さそり座好き」
「どうして?」
「だって乱暴者のオリオンをこいつが殺したんだろ?なんかカッコいいじゃん」
「ハルくんよく知ってるね。でも同じ夏の星座の中に、死者を生き返らせちゃう強者つわものもいるよ」
「え、どれどれ」
「へびつかい座」
「へえ、知らなかった」

 そんな会話をしながら、もう一枚ページをめくると。

「出た、出しゃばり北斗七星っ」

 夏のページの続きなのに、春の星座が入り込んだ。

「出しゃばりってなんだよナツ~っ」

 ウケを狙ったつもりはなかったが、ハルくんのツボには入ったようで、彼は大いに笑っていた。

「こんなのどっかの人間が勝手に星座の季節決めただけじゃんっ。北斗くんにはなんの罪もないのに超かわいそう~」

 北斗くん。それにはわたしが大爆笑。

「ちょ、ちょっとハルくん!北斗くんってなにっ!なんか人みたいっ」
「ええ?だって人の命じゃないの?前にナツが教えてくれたじゃんかっ」
「そうだけど、で、でも北斗くんってっ」

 止まらぬ笑い。腹を抱え身をよじっていると、なんだか涙まであふれてきた。

「泣くほど笑うかあ?」
「だ、だっておかしくて」

 ついさっきまでは恋人のように感じていたのに、今度は長年付き合っている友達といるみたいに面白おかしい。ハルくんといるとどうしてこんなにも、感情が忙しいのだろう。
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