僕らの10パーセントは無限大

華子

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ホームレスのテメさんと、ココアサイダー味の飴と

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 よれっとしてはいたけれど、汚れは目立たない白のTシャツを着ていた。その下に履いているハーフパンツはチェックの柄で、穴とかは空いていなかったような気がする。

 ひげは生えていなかった。
 髪は男性にしては少し長かったけれど、ボサボサではなかった。
 臭くなかった、歯も白かった。ココアサイダー味の飴玉を、赤の他人のわたしに分け与えるくらいの、経済的余裕はある人だ。

 そう自分に言い聞かせて、心を落ち着かせる。
 暗くてただ見えづらかっただけで、本当はものすごく粗末な格好をしていたらどうしようと、そんな不安も過ぎったけれど、頭をふるふると横へ振って誤魔化した。

 わたしの呟きに対して、しばらく黙りこくっていたユーイチが、足を組んで背を反らし、遠い目で天井を見つめて言う。

「電気もあって屋根もある家に住んでる俺等にとっては、ホームレスって気の毒に見えるけど、当の本人たちから気持ちを聞いたわけじゃないから、本当のところ、どう思ってるのかなんて謎だよな」

 その言葉で、わたしの視線も上を向く。

 優しいバニラ色した天井の中央に、オセロの石の片面のような、丸くて真っ白なライトがある。

 見慣れたこの頭上にあるものが、ホームレスと呼ばれる人たちにはない。

 あの人は……テメさんは、いつからホームレスになったのだろう。以前は家族がいたような、そんな発言をしていたけれど。

 テメさん。

 そう心の中で呼んでおいて、少し申し訳なくなる。だってこのあだ名は、『テメエ』という高圧的な二人称からきているから。

 だけどわたしは、彼の本名を教えてもらってはいないし、今はこう呼ぶ以外他にない。

 彼の心情を思うと、勝手に気持ちが沈んでいった。
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