僕らの10パーセントは無限大

華子

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傘不要の降水確率と、チャップリンの名言と

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 テメさんの姿は見当たらないけれど、壁際には黒のボストンバッグと毛布が並んで置いてあった。

 着替えとか歯ブラシとか、あとは財布や時計。

 今朝、その中身をわたしにそう説明したテメさんを思い出し、慌てて駆け寄る。

「ちょっとおい和子っ。なに勝手に開けてんだよっ」

 他人の持ち物であるバッグを無遠慮に開けるわたしを見て、ユーイチが大きな声を出した。

「危ねえから触んなよっ。なんか変なもん仕込まれてるかもしれねえじゃんっ」

 これはテメさんのバッグで、この中には彼の貴重品が入っていて。

 なんて、そんなことを知らないユーイチにとっては、この黒い物体が不審物に見えたのだろう。

「おい、和子ってば!」

 わたしの肩を引っ掴み、止めようとするユーイチに構わず、わたしはバッグの中身を漁っていった。すると。

 ああ、よかった。ちゃんとお財布入ってた。

 その中に二つ折りの茶色い財布が見えて、わたしはほっと胸を撫で下ろす。

 ただでさえ、元奥さんにお金をたくさん盗られてしまったのに、今あるお金すらも誰かに盗まれてしまっては、絶対に困ると心配していたから。

 バッグを漁っていた手を止めて、へなへなとアスファルトに座り込むわたし。その隣で、ユーイチも静かに腰を下ろす。

 これは不審物ではなさそうだ、と判断したユーイチの目線が、ボストンバッグの傍に落ちる。
 すると彼は、とあるものを発見していた。

「なにこれ、写真……?」

 親指と人差し指で、ユーイチが地面から拾い上げたもの。それは一枚の写真だった。

 無我夢中でわたしがテメさんの財布の有無を確認している間に、バッグの中から落としてしまったのだろう。
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