原田くんの赤信号

華子

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原田くんは、変わっている人だ

子猫の話1

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「さあ、今日は子猫の話をするよ」

 そして今日も、二十名ほどが集まったところで、エレン先生のお話会は始まった。

「あ、べつに子猫じゃなくてもいいんだ。子犬でも子象でも子フェレットだっていいんだけど……でもやっぱり、子猫にしよう」

 子猫も好き、エレン先生のことも好きなわたしだから、早速わくわくし始めた。

「ある雨の日のこと。一匹の子猫が歩いていました。ミャアミャアと鳴きながら、夜の小道でひっそりと」

 かと思えば、突然始まる物語。

「そこに女の子が通りかかりました。雨に打たれて歩く子猫を可哀想だと思ったその女の子は、思わず子猫を拾い上げ、家へと連れて帰ります。子猫はミャアと鳴きました」

 みんなは静かに聞いていた。

「家に帰ると、お母さんは怒りました。勝手に拾ってくるんじゃない、すぐに返してきなさいと。女の子は言いました。せめて雨がやむまで待ってほしい。こんな中、外に返すのは可哀想。だからお願い、雨がやむまでここで飼わせて。お母さんは困りましたが、仕方ないわねと言いました。結局雨がやんだのは三日後で、女の子と子猫は三日間、一緒に暮らすことができました。最後に笑ってお別れを言うと、子猫もミャアと鳴きました」

 ちゃんちゃん、と物語は締めくくられた。少しの間をあけてから、エレン先生はみんなに聞く。

「この物語の感想を教えてくれる?」
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