原田くんの赤信号

華子

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原田くんは、思わせぶりな人だ

原田くんの天気予報4

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 お母さんのことをオカンって呼ぶ人って、関東にもいるんだ。

 色々な驚きから言葉をなくしていると、原田くんはそれを承諾したとみなしたのか「じゃあオカンにしよう」と言ってきた。なので、慌てた。

「いやいやいや!原田くんのオカン知らないし、来られても困るから!」
「俺のオカン良い人だよ」
「そ、そういう意味じゃなくて!」
「瑠夏のオカンは何歳?」
「えーっと。四十、くらい?」
「へえ若いな!うちのオカンもうすぐ五十!」
「って、オカンの話になってますけど!」

 原田くんといると、調子が狂う。彼のペースに持っていかれないようにと、わたしは本題に戻す。

「何度も言うけどね、わたしはその日、エレン先生にチョコをあげたいの。だから他の人と遊ぶにしろ他の予定を入れるにしろ、その大事な予定が終わってからがいいの」

 原田くんの目を見てはっきり言った。今度こそ原田くんの心に届きますように、と願って。

「なんでエレン先生なの」

 けれど、全然届かない。

「す、好きだから」

 届けっ。

「好きだから、わざわざチョコあげに家まで行きたいの?」
「そう」
「そっか……」

 届いたかな、諦めてくれたかな。

「じゃあ──」

 おもむろに動いた原田くんの手が、わたしのあごに触れたかと思ったら、そのままくいっと持ち上げられた。近すぎる距離、友達じゃない顔の距離。

「じゃあ、俺のこと好きになってよ」
「え……」
「俺のこと好きになって、俺に瑠夏のチョコをちょうだいよ」
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