原田くんの赤信号

華子

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原田くんは、赤信号みたいな人だ

ジョーカーの話4

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「そのカードはジョーカーかジョーカーじゃないカードです。僕はジョーカーを出してほしい。めくってみてくれる?」

 美希ちゃんは少し間を空けてから、ゆっくりカードをめくっていた。

「スペードの七です」
「そっか。スペードの七か」

 わたしにも、同じように一枚手渡す。

「そのカードは半分の確率でジョーカーです。僕はジョーカーを出してほしい。めくってみてくれる?」

 わたしはわりとすぐ、カードをめくった。

「三つ葉のジャックです」
「そっか。ジャックか」

 そして、今度は原田くん。

「そのカードはジョーカーかもしれません。僕はジョーカーを出してほしい。めくってみてくれる?」

 食い気味にめくった。

「ダイヤの八」
「そっか。ダイヤの八か」

 エレン先生の口角が、にやりと上がる。

「どうしてそんなにすぐカードをめくれたの?さっきはあれだけ手間取っていたのに」

 ダイヤの八を持たせたまま、原田くんに問いかけた。

「ジョーカーが出ると思ったから」
「どうして?」
「エレン先生が、ジョーカーかもしれないって言ったから」
「僕を信じてくれたの?」
「うーん……っていうか、なんかそんな気がした」
「そんな気?」
「ジョーカーを出せるんじゃないかって、そんな気」

 エレン先生は微笑むと、「教えてくれてありがとう」と言っていた。拳をふたつ、肩の位置で構える。

「いつだって君たちの前には、やるかやらないか、できるかできないか。それしかないんだ」
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