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原田くんは、諦めない人だ
うそつきな原田くん7
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数百メートルほど走り、速度を緩める。原田くんは、追ってこなかった。
「はあっ、はぁっ……」
走ることをやめたわたしは、ゆっくりとした歩行に切り替える。信号機を渡ったところで足を止め、ふと後ろを振り返る。
「原田くん……」
青が点滅し出して、色が変わる信号機。赤信号がなぜか、原田くんに見えた。
お願い瑠夏、行かないで。
信号機の付近には誰もいないのに、空っぽな空間から聞こえてくる、彼の声。
お願いです、瑠夏。行かないでください。
その声を振り払うように前を向き、再びわたしは歩き出す。見上げた先にある青空だけが、わたしの唯一の心の支えだった。
✴︎✴︎
「よし、投函成功っ」
『Smith』と書かれているポストにチョコを入れて、わたしはふうと息を吐く。万が一他にもスミス家があったらどうしよう、なんてチョコを入れる寸前で思ってしまったものだから、端から端までいちからポストを見直す作業を組み込んでしまい、けっこうな時間ここにいる。
大丈夫だよね、こんなに寒いし溶ける心配もないよね。『大原瑠夏より』ってメッセージカードにも書いたし、わたしからのチョコだって、エレン先生わかってくれるよね。
そんなことを思っていたら、ふと頭を過ぎる原田くんの言葉。
瑠璃色した綺麗なガラス細工だった。四角の中に、入道雲みたいな絵が描いてあって。まるで瑠夏の名前をイメージしたようなプレゼントだった。
もしかして、このメッセージカードでわたしの名前の漢字を知ったとか……?
ヒュウッと一瞬にして、鳩尾あたりが気持ち悪くなった。ジェットコースターに乗っているわけでもないのに、そんな感覚に陥った。
「はあっ、はぁっ……」
走ることをやめたわたしは、ゆっくりとした歩行に切り替える。信号機を渡ったところで足を止め、ふと後ろを振り返る。
「原田くん……」
青が点滅し出して、色が変わる信号機。赤信号がなぜか、原田くんに見えた。
お願い瑠夏、行かないで。
信号機の付近には誰もいないのに、空っぽな空間から聞こえてくる、彼の声。
お願いです、瑠夏。行かないでください。
その声を振り払うように前を向き、再びわたしは歩き出す。見上げた先にある青空だけが、わたしの唯一の心の支えだった。
✴︎✴︎
「よし、投函成功っ」
『Smith』と書かれているポストにチョコを入れて、わたしはふうと息を吐く。万が一他にもスミス家があったらどうしよう、なんてチョコを入れる寸前で思ってしまったものだから、端から端までいちからポストを見直す作業を組み込んでしまい、けっこうな時間ここにいる。
大丈夫だよね、こんなに寒いし溶ける心配もないよね。『大原瑠夏より』ってメッセージカードにも書いたし、わたしからのチョコだって、エレン先生わかってくれるよね。
そんなことを思っていたら、ふと頭を過ぎる原田くんの言葉。
瑠璃色した綺麗なガラス細工だった。四角の中に、入道雲みたいな絵が描いてあって。まるで瑠夏の名前をイメージしたようなプレゼントだった。
もしかして、このメッセージカードでわたしの名前の漢字を知ったとか……?
ヒュウッと一瞬にして、鳩尾あたりが気持ち悪くなった。ジェットコースターに乗っているわけでもないのに、そんな感覚に陥った。
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