メンヘラ×メンヘラ＝恋、暴走中！？～お前なしじゃ生きられない！…いや、マジで無理だから！

俺んちの合鍵、いる？

「真尋」  

カフェでコーヒーを飲んでいた真尋は、向かいに座る玲央が突然真剣な顔をしていることに気づいた。  

「……なんだよ」  

「そろそろ合鍵、渡す？」  

「は？」  

思わずコーヒーを吹きそうになり、慌てて口を押さえる。  

「ちょ、待て。何急に」  

「いや、最近お前ん家と俺ん家、どっちかにいるのが当たり前になってきたし。そろそろ合鍵持ってたほうが楽じゃね？」  

玲央は何気ない口調で言うが、真尋は警戒するように睨んだ。  

「いや、普通に断るけど？」  

「……は？」  

「だって、合鍵とかそんな簡単に渡すもんじゃねぇだろ」  

「真尋、俺のこと好きじゃないの？」  

「なんでそうなる」  

「好きなら、俺の合鍵くらい受け取るよな？」  

玲央がわざとらしく拗ねた声を出す。  

「いや、それとこれとは別問題だろ」  

「別じゃねぇだろ。好きなやつが困らないようにするのが、恋人ってもんだろ」  

「いや、どの口が言ってんだよ」  

「俺、お前のこと困らせたことないし」  

「いや、毎回だろ！！！」  

玲央はコーヒーを飲みながら、軽く肩をすくめた。  

「で、どうする？」  

「だから、いらねぇって」  

「俺のこと信用してない？」  

「いや、そういう話じゃなくて」  

「じゃあ、渡す理由なくねぇ？」  

「……」  

確かに、最近はほぼ半同棲みたいな生活になっている。  

それなら、鍵を持っていたほうが何かと便利なのもわかる。  

だが、玲央が当然のように話を進めてくるのが気に入らない。  

「なんで玲央のほうが渡す前提なんだよ」  

「え？」  

「俺の鍵を欲しいとは思わねぇのか？」  

玲央が一瞬固まり、真尋をじっと見つめる。  

「……お前の鍵、くれるの？」  

「いや、聞いてるだけだし」  

「は？　じゃあくれよ」  

「やるとは言ってねぇだろ！！」  

玲央は満足げに笑いながら、「じゃあ交換な」と当然のように言い出す。  

「いやいや、そうはならねぇだろ」  

「なるだろ。ほら、今持ってる？」  

「持ってるけど」  

「じゃあ渡せよ」  

「……」  

なぜか、完全に玲央のペースに巻き込まれている気がする。  

「……なんでこうなるんだ」  

「これで、俺たちちゃんと半同棲ってことで」  

玲央が満足げに笑いながら、合鍵をひょいっと真尋の前に差し出した。  

真尋はそれを見つめながら、少しだけため息をつく。  

「……仕方ねぇな」  

結局、なんだかんだでお互いの鍵を交換することになった。  

「でも、お前勝手に入ってくんなよ」  

「いや、入るだろ」  

「入るな！」  

玲央はニヤニヤと笑いながら、「楽しみだな」とぼそっと呟いた。  

真尋はその言葉に、なんとなく嫌な予感がした。