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お前、俺のライブ優先できねぇの?
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「俺、全国ツアー決まった」
玲央がそう言ったのは、夜のリビングだった。
ソファでスマホをいじっていた真尋は、一瞬手を止めて顔を上げた。
「へぇ、よかったじゃん」
玲央のバンド「NO EXIT」はメジャーデビュー後、着実に人気を伸ばしている。
これまでライブハウス中心だった活動が、全国ツアーにまで発展したのは大きな進歩だった。
「まあ、応援してるけど、すげぇな。ツアーってことは、しばらく帰ってこねぇのか?」
「まあな。でも、それより――」
玲央がこちらをじっと見つめる。
「真尋、もちろん来るよな?」
「……は?」
思わず眉をひそめると、玲央は当然だろという顔をした。
「ツアーだぞ? 俺の晴れ舞台だぞ? 彼氏なら、全国ついてくるのが普通じゃね?」
「いやいやいや、俺、仕事あるんだけど」
「は?」
一瞬で玲央の眉間にシワが寄る。
「俺のライブより仕事優先すんの?」
「当たり前だろ! 仕事しねぇと生活できねぇんだよ!」
「でもさ、真尋の恋人は、今めちゃくちゃ勢いに乗ってるバンドマンなんだけど?」
「それがなんだよ!」
「俺のこと、もっと自覚しろよ」
「それはお前だろ!!」
思わず声が大きくなる。
玲央は不満そうに腕を組み、足を組み替えた。
「……じゃあ、全国回るのは無理としても、せめてファイナルくらいは絶対来いよ」
「……ファイナル?」
「ツアーの最後の公演。東京のアリーナ」
「……その日なら、なんとかなるかも」
「よし、決まり」
玲央が満足げに微笑む。
「チケットはVIP席で用意しとくから」
「いや、俺は関係者席でいいし」
「VIPにいろ」
「なんでだよ」
「俺の彼氏が来るんだから、俺が一番よく見える席にいろ」
「意味わかんねぇ」
「いいから、そうしろ」
玲央は当然のように言い切ると、スマホを取り出し、何やら関係者に連絡を入れ始めた。
真尋はため息をつきながら、テーブルに肘をつく。
「なんでお前がそんなに張り切ってんだよ」
玲央はスマホを操作しながら、ちらりと真尋を見た。
「……俺の彼氏が来るんだから、気合入るに決まってんだろ」
「……」
玲央の言葉に、なんとなく胸がくすぐったくなる。
「楽しみにしてろよ」
自信満々の笑みを浮かべる玲央を見て、真尋はまた深くため息をついた。
「……めんどくせぇ」
けれど、その言葉の裏に、自分でも気づかない期待が混じっていたのだった。
玲央がそう言ったのは、夜のリビングだった。
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「へぇ、よかったじゃん」
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これまでライブハウス中心だった活動が、全国ツアーにまで発展したのは大きな進歩だった。
「まあ、応援してるけど、すげぇな。ツアーってことは、しばらく帰ってこねぇのか?」
「まあな。でも、それより――」
玲央がこちらをじっと見つめる。
「真尋、もちろん来るよな?」
「……は?」
思わず眉をひそめると、玲央は当然だろという顔をした。
「ツアーだぞ? 俺の晴れ舞台だぞ? 彼氏なら、全国ついてくるのが普通じゃね?」
「いやいやいや、俺、仕事あるんだけど」
「は?」
一瞬で玲央の眉間にシワが寄る。
「俺のライブより仕事優先すんの?」
「当たり前だろ! 仕事しねぇと生活できねぇんだよ!」
「でもさ、真尋の恋人は、今めちゃくちゃ勢いに乗ってるバンドマンなんだけど?」
「それがなんだよ!」
「俺のこと、もっと自覚しろよ」
「それはお前だろ!!」
思わず声が大きくなる。
玲央は不満そうに腕を組み、足を組み替えた。
「……じゃあ、全国回るのは無理としても、せめてファイナルくらいは絶対来いよ」
「……ファイナル?」
「ツアーの最後の公演。東京のアリーナ」
「……その日なら、なんとかなるかも」
「よし、決まり」
玲央が満足げに微笑む。
「チケットはVIP席で用意しとくから」
「いや、俺は関係者席でいいし」
「VIPにいろ」
「なんでだよ」
「俺の彼氏が来るんだから、俺が一番よく見える席にいろ」
「意味わかんねぇ」
「いいから、そうしろ」
玲央は当然のように言い切ると、スマホを取り出し、何やら関係者に連絡を入れ始めた。
真尋はため息をつきながら、テーブルに肘をつく。
「なんでお前がそんなに張り切ってんだよ」
玲央はスマホを操作しながら、ちらりと真尋を見た。
「……俺の彼氏が来るんだから、気合入るに決まってんだろ」
「……」
玲央の言葉に、なんとなく胸がくすぐったくなる。
「楽しみにしてろよ」
自信満々の笑みを浮かべる玲央を見て、真尋はまた深くため息をついた。
「……めんどくせぇ」
けれど、その言葉の裏に、自分でも気づかない期待が混じっていたのだった。
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