冴えない経理オッサン、異世界で帳簿を握れば最強だった~俺はただの経理なんだけどな~

中岡 始

文字の大きさ
15 / 35

税制改革/財政の見直し

しおりを挟む
王国の財務顧問としての初仕事は、国の財務状況を把握することだった。  

王宮の一室で、葛城は王国の収支に関する記録を確認しようとした。  

「まずは、国の財務状況を見せてくれ」  

役人たちは顔を見合わせ、困惑した様子を見せた。  

「その…実は、まとまった帳簿は存在しません」  

「は?」  

思わず、葛城は聞き返した。  

「では、国の収支はどのように管理しているんだ?」  

「それぞれの部門が独自に記録をつけておりますが…詳細な統一基準はなく、すべてが個別の帳簿として管理されています」  

「つまり、国としての正確な収支は把握できていない?」  

「……はい」  

葛城は額を押さえ、深くため息をついた。  

「まずは、国の帳簿をつけるところから始めようか」  

役人たちは動揺していたが、葛城の指示のもと、各部門の財務記録を集める作業が始まった。  

  

◇◇◇  

  

数日かけて、国の財務状況を整理した結果、驚くべき事実が次々と判明した。  

「無駄な支出」「不正な会計」「不透明な取引」  

どれも想像以上にひどかった。  

まず、貴族たちが享受している特権によって、国の財政が圧迫されていた。  

「この領地、毎年『修繕費』として莫大な金が出ているが、実際に工事は行われていないな?」  

「軍の物資購入費が二重計上されている。どこへ消えた?」  

葛城の指摘に、貴族たちは動揺し始めた。  

「そ、それは…その…」  

「これはつまり、横領だな?」  

貴族たちは即座に反論しようとしたが、国王の前で下手な言い訳をすることはできない。  

「これは長年の慣習で…」  

「慣習? それで財政が破綻寸前になっているのか?」  

葛城は淡々とした口調で続けた。  

「貴族たちは財を築くことにのみ熱心で、国の存続を考えていない。ならば、存続できる体制を作るまでだ」  

国王の命により、不正の証拠が明るみに出た貴族たちは粛清されることとなった。  

  

◇◇◇  

  

「さて、次は税制改革だな」  

葛城は整理した財務データをもとに、税制改革の方針を定めた。  

「無駄な支出を削減し、公平な税制を導入する」  

「これまでの税制度は、庶民に過剰な負担を強いている一方で、貴族たちは税をほとんど支払っていなかった」  

「よって、貴族たちの税負担を増やし、庶民の負担を軽減する」  

新たな税制の導入により、貴族たちの不満は当然ながら高まった。  

「なぜ我々が、これまで通りの特権を享受できないのだ!」  

「これは王国の伝統を破壊する行為だ!」  

しかし、すでに国王の承認は得ており、財務改革を止めることはできなかった。  

「伝統? ならば問うが、その伝統が国を衰退させるとしたら、それでも守る価値があるのか?」  

「貴族の責務は、国を支えることのはずだ。それが果たせないのなら、特権だけを享受する資格はない」  

葛城の冷静な言葉に、貴族たちは何も言い返せなかった。  

  

◇◇◇  

  

改革の結果、国の財政は少しずつ健全化し始めた。  

「これでようやく、まともな国の形になってきたな」  

葛城が一息ついたとき、モルディが机の上に飛び乗った。  

「オッサン、もう王様の仕事してねえか?」  

「俺はただの経理なんだけどな」  

葛城は軽く肩をすくめ、次の課題へと向き合うのだった。  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

処理中です...