隼人と翔の休日

中岡 始

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田中翔は、隼人が事件の後、心に深い傷を負っていることに気づいていた。普段と変わらない穏やかな態度を保ち、周囲の誰に対しても丁寧に接する隼人。しかし、長く一緒に働いてきた翔には、彼の笑顔にどこか無理が生じているのがわかっていた。特に、誰かと親しく会話している最中にも、ふとした瞬間に彼が見せる無意識のためらいや、少しの沈黙がその証だった。

そんな隼人の様子に気づいてから、翔は彼にできるだけ負担をかけないよう、何かと気遣うようになっていた。休憩室では無理に話しかけず、ただ静かに隣に座るだけ。隼人が周囲に気づかれないように溜息をついたり、ぼんやりと窓の外を見つめたりしている時は、何も言わずにそっと見守ることを心がけていた。隼人の重い表情を見るたびに翔は、「どうにかして彼の助けになりたい」という気持ちが募っていくのを感じていた。

ある日、特に静かに思いに沈んでいる隼人を見て、翔は自然と隣に腰を下ろした。互いに言葉を交わすことなく少しの間が過ぎたが、翔はふと、自分でも驚くほど柔らかい声で

「隼人、いつでも話してくれていいからな」

とぽつりとつぶやいた。ほんの少し照れながらの言葉だったが、それが自分にとっても隼人にとっても大きな意味を持つことを、翔は感じ取っていた。

隼人が驚いたように自分を見つめ返した時、翔は少しだけどきりとしたが、隼人の表情がすぐに柔らかく和らぐのを見て、安堵とともに少し誇らしい気持ちになった。隼人は静かに微笑んで小さくうなずき、心からの「ありがとう」と言うように見えた。翔にとってそれは、隼人が自分を信頼し、心の支えにしてくれているという確かな証だった。

それ以来、翔は隼人のそばで、あえて多くを聞くことなく、さりげなく彼を支えることを自分の役割と感じるようになった。隼人がどれほど自分を必要としているか、それがどれほど彼にとっての安らぎであるかを実感しながら、翔もまた、「誰よりも隼人の味方でいられる自分」に少し誇りを感じるようになっていった。
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