隼人と翔の休日

中岡 始

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チェックアウトの朝、隼人と翔は深緑の宿の玄関先に立ち、女将の山崎美沙子と話をしていた。女将はいつもの柔らかな笑顔で、

「このたびはご滞在いただき、ありがとうございました。またいつでもお越しくださいね」

と声をかけた。その温かい言葉に、二人は自然と「お世話になりました」と頭を下げる。

フロントでの支払い手続きはスムーズに進み、最後の確認を終えると、女将がふと一歩近づいてきて、隼人と翔を交互に見つめた。

「お二人がご一緒されている姿、とても素敵でした。お互いを大切にされていることが伝わってきましたよ」

と優しい声で言う。その言葉に、翔は少し照れくさそうに笑みを浮かべたが、隼人はほんの一瞬驚いたような表情を見せた。

「ありがとうございます」と、隼人が静かに返した。

「また機会があれば、ぜひお邪魔させていただきます。」

女将は「お待ちしております」と頷き、見送りの準備に立ち戻る。玄関の扉を開けると、紅葉が美しい山々の景色が広がり、二人はその風景にしばし見入った。

隼人は車に向かいながら、ふと振り返って深緑の宿を見つめた。ここでのひとときは、確かに彼の心を少しずつ解きほぐし、新たな気持ちを芽生えさせたように感じられた。翔の隣を歩くことで心の重荷が軽くなったことを、改めて実感する。

翔もまた、その視線を感じ取り、静かに隼人の横顔を見つめた。「また来ような」と声をかけると、隼人は柔らかく笑みを浮かべて頷いた。

タクシーに乗り込むと、二人はもう一度、深緑の宿を振り返りった。女将がゆっくりと手を振る姿が見えなくなるまで、二人はその場を離れずに見つめ続けていた。再び日常に戻る前のこのひとときが、隼人と翔の心に深く刻まれた瞬間だった。
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