オッサン転生～イケメン勇者だが腰は痛い～

中岡　始

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これからの世界は、どうなるか分からない– 未来へ

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　龍司は、王城のバルコニーに立っていた。

　眼下に広がる王都の景色は、以前とはまるで違っていた。

　戦争が終わったばかりの街には、まだ修復の跡が残っている。

　だが、人々の表情は暗くはなかった。

　貴族も商人も、平民たちも、それぞれが新しい時代を迎える準備をしている。

　王都の広場では、商人たちが市場を開き、新たな交易の流れを作ろうとしていた。

　兵士たちは城壁の修復を進め、街の防衛体制を整えている。

　子どもたちは、そんな大人たちの姿を見ながら、走り回って遊んでいた。

　確かに、世界は変わり始めている。

　だが、その変化は決して容易なものではない。

　龍司はバルコニーの手すりに腕を乗せ、ゆっくりと息を吐いた。

　「経済の安定、治安の維持、新しいルールの整備……まだまだやることは山積みだな」

　戦争が終わったとはいえ、国の運営はここからが本番だ。

　貴族派の一部は、まだ評議会の決定に不満を抱いている。

　商人たちも、新しい体制の中で自分たちの立場をどう確立するかを模索している。

　そして、一般市民の中にも、今後の生活に不安を感じている者は多い。

　「まあ、そう簡単にはいかねえよな」

　龍司は苦笑しながら、空を見上げた。

　異世界に転生した時、まさかここまでの大役を担うことになるとは思ってもいなかった。

　最初はただ、生き延びることだけを考えていた。

　それが、いつの間にか魔王を倒し、世界のループを断ち切り、異世界の未来を作る立場になっていた。

　「本当に、人生ってのは分からねえもんだな」

　龍司はポケットから取り出した金貨を指で弾いた。

　キン、と小さな音が鳴る。

　これは、かつて商人ギルドのダリウスから「異世界で生きていくなら、金を回すことを考えろ」と言われた時にもらったものだ。

　今なら、その意味がよく分かる。

　この世界は、何もかもが変わっていく。

　だが、それでいい。

　未来は決まっていないからこそ、挑戦しがいがある。

　ふと、背後で足音が聞こえた。

　振り向くと、リリィ、クロード、マルコが立っていた。

　「何してるの？」

　リリィが不思議そうに聞いてくる。

　「いや、ちょっと未来のことを考えてた」

　「未来？」

　クロードが腕を組む。

　「珍しいな。お前が悩んでいるとは」

　「悩むさ。これからの時代を作るんだからな」

　マルコがクスクスと笑った。

　「おっさんらしくないね。悩んだってどうせ答えは出ないんだから、楽しくやればいいじゃん」

　龍司は思わず吹き出した。

　「確かにな」

　そして、バルコニーからもう一度、王都を見渡す。

　この世界は、これからどうなるか分からない。

　でも――

　「だからこそ、面白い」

　龍司は静かに、そう呟いた。

　仲間たちは驚いたような顔をした後、やがて笑った。

　リリィが腕を組みながら、呆れたように言う。

　「あんたって、本当に異世界に馴染んじゃったのね」

　クロードが短く頷く。

　「だが、それでいいのかもしれないな」

　マルコは肩をすくめながら、楽しそうに笑った。

　「おっさんの新たな物語は、ここから始まるってことか」

　龍司はそれに答えるように、小さく頷いた。

　新しい時代が、今まさに幕を開けようとしている。

　これから何が起こるのかは分からない。

　でも、それは決して不安ではなく――楽しみなことだ。

　龍司は手すりに背を預け、改めて空を見上げた。

　異世界の未来は、まだ白紙のまま。

　だからこそ、これからどう描いていくかは、自分たち次第なのだ。

　そして、おっさんの新たな物語が、ここから始まる。

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