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四・知恵の宝庫を探検する
知恵の宝庫を探検する(1)
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図書館の入り口に立つと簡単にドアは開いた。
でも長いことうち捨てられていたようで、かなりほこりっぽい。
仮想空間でも、人が手入れしていない部屋は汚れるものなんだな。
けほけほ、とだれかが咳をする。マスクが欲しい感じだ。
棚を見ると実在する小説も、たくさん並んでいる。
わたしは、そびえ立つ本棚の間を渡り歩きながら、しばらくタイトルを斜め読みして楽しんだ。
「これって、引っ張り出したら読めるのかな?」と、高山郁生が本に手をかけた。
「どうです?」
「……うん。中身はちゃんと読めるぞ。白紙じゃない」
じゃあ、ここに並んでいるたくさんの本をずっと読んでてもそれなりに時間つぶしできるのかな?
わたしは、気晴らしがしたくなった。張り詰めた空気に飽きていたからだ。
別に、ゲームに勝つためのヒントが見つからなくてもいい。そもそも、望んで参加してるわけじゃないんだから。わたしも、この人たちもみんな。
「え、遠野さん?何?どうしたの?」
「ちょっと本を探してくる!」
わたしは、小走りに窓側の棚へと向かった。好きな本が、一冊でも見つかることを願った。
そしたら、少しは自分の励ましになるかもって思ったから。
制限時間は四日もある。その間に、少しくらい読書したっていいじゃない?
遠くで他の人たちも、それぞれの本を探しにばらけたらしい。
いいよね。この世界でやれることは、あのおぞましいゲームしかない。
果たしていつまでこうしていられるかさえ、わからないんだから。
そうして、思い切り本にのめり込み。三冊くらい分厚い小説を読み切ったころだろうか。
やっぱり物語っていいわあ。
心が洗われる。今のこの恐ろしい場にいる自分を、すっぱり忘れきることができる。
ああ、いっそ本の中の住人になってしまいたい!
……と、現実逃避してもここからは出られないんだった。
「はっ!今何時?」
まだ夕方にはなってない、気がするけど。
きょろきょろと見回しながら、時計を探していると。
ソファに本を埋もれるほどためて、むさぼるように読んでいる中村えり(なかむら・えり)に出くわした。
土砂崩れで遭難した人みたいに、本にまみれている。
きっとこの人も、本を愛している。同じ匂いがする。
「大丈夫?本につぶされて窒息しそうだよ?」とわたし。
「いいの。いっそ窒息して、ここから出たい!」
「たしかに」
本好きに悪い人はいない、そう思う。
さっき恩田桜が「ひとつの分かれ道」と言っていた。それがいい意味での道ならいい。
でも長いことうち捨てられていたようで、かなりほこりっぽい。
仮想空間でも、人が手入れしていない部屋は汚れるものなんだな。
けほけほ、とだれかが咳をする。マスクが欲しい感じだ。
棚を見ると実在する小説も、たくさん並んでいる。
わたしは、そびえ立つ本棚の間を渡り歩きながら、しばらくタイトルを斜め読みして楽しんだ。
「これって、引っ張り出したら読めるのかな?」と、高山郁生が本に手をかけた。
「どうです?」
「……うん。中身はちゃんと読めるぞ。白紙じゃない」
じゃあ、ここに並んでいるたくさんの本をずっと読んでてもそれなりに時間つぶしできるのかな?
わたしは、気晴らしがしたくなった。張り詰めた空気に飽きていたからだ。
別に、ゲームに勝つためのヒントが見つからなくてもいい。そもそも、望んで参加してるわけじゃないんだから。わたしも、この人たちもみんな。
「え、遠野さん?何?どうしたの?」
「ちょっと本を探してくる!」
わたしは、小走りに窓側の棚へと向かった。好きな本が、一冊でも見つかることを願った。
そしたら、少しは自分の励ましになるかもって思ったから。
制限時間は四日もある。その間に、少しくらい読書したっていいじゃない?
遠くで他の人たちも、それぞれの本を探しにばらけたらしい。
いいよね。この世界でやれることは、あのおぞましいゲームしかない。
果たしていつまでこうしていられるかさえ、わからないんだから。
そうして、思い切り本にのめり込み。三冊くらい分厚い小説を読み切ったころだろうか。
やっぱり物語っていいわあ。
心が洗われる。今のこの恐ろしい場にいる自分を、すっぱり忘れきることができる。
ああ、いっそ本の中の住人になってしまいたい!
……と、現実逃避してもここからは出られないんだった。
「はっ!今何時?」
まだ夕方にはなってない、気がするけど。
きょろきょろと見回しながら、時計を探していると。
ソファに本を埋もれるほどためて、むさぼるように読んでいる中村えり(なかむら・えり)に出くわした。
土砂崩れで遭難した人みたいに、本にまみれている。
きっとこの人も、本を愛している。同じ匂いがする。
「大丈夫?本につぶされて窒息しそうだよ?」とわたし。
「いいの。いっそ窒息して、ここから出たい!」
「たしかに」
本好きに悪い人はいない、そう思う。
さっき恩田桜が「ひとつの分かれ道」と言っていた。それがいい意味での道ならいい。
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