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十二・誓いの後に
誓いの後に(2)
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ライアンに向かって”恋愛なんてしてる場合か?”と思ったくせに。
ううん。あれは恋愛、ではなかったのかも。木野まなみを油断させるために、そんなフリをしたのでは。
人と人とが、答えを当てるために行動する。多くは自分だけ助かりたい、悪い方へ。
だったら、だれかを頼りたくなるのは当然かもしれない。
だけど、紗英(さえ)が準(じゅん)に近づくのはざわざわして気分が悪い。
何なんだろう、この気持ちは。
☆
昼食時刻になり、また食堂へと集まる。
気のせいかな?何だか人が減ったみたい、な。
でも、気のせいではなかった。みんなが席についたころに、また放送が流れる。
ピンポンパンポーン。
「やあお昼だね。みんな、はかどっているかな?さて、ここまでの新しい報告をするよ。今日は加川準(かがわ・じゅん)が狙われたようだ。渡部ライアンが加川準にバトルして負けた。続いてこれも一勝得ていた庄司佳奈(しょうじ・かな)が、やはり加川準にバトルを挑んだが、結果は負け。加川準が当てた。つまり、今日午前中は加川準の一人勝ちだったわけだ」
わたしはあ然とした。庄司佳奈は、この教室に来て一番初めに話した子だ。
準と仲間になりたいと、わたしを引っ張って行って……でもわたしは、そんなことをする佳奈について行けなくて。それで離れたんだった。準を味方にしたかったはずなのに、バトルを仕掛けたなんて。
やっぱりわたしには佳奈のこと、理解できなかった気がする。
それと別に、もうひとつおどろくことがある。
さっき準に会ったときには、全くそんな素振りがなかった。
知らない間に、準は二つもバトルを実行していたんだ。
なぜ、言ってくれなかったの?
もし、紗英の方が先に知っていたとしたら?わたしよりも先に、紗英に教えた?
やだやだ。わたしは、何をぐちゃぐちゃ考えてるんだ?
準本人に、聞いてみればいいのに。変にかんぐってるより、素直に聞いた方がいい。
テーブルに並んでいる顔をざっと見渡し、準を探す。
でも、向こうの席にいるみたいで見つからない。むしろほっとした。
今のわたしは、きっといやな顔をしていると思う。
ふう。
と……ふいにドアが荒々しく開いて、だれかが入ってきた。
あれ?遅刻は円にお仕置きされるんじゃ。……て、わたしもだいぶ円に悪い意味でなじんでしまった。
でも。さっき変だなと思った。席があちこち空いている……ような。
入ってきた女の子は、わたしをすごい形相で呼んだ。
「り、莉々亜(りりあ)!」中村えりだった。
「えっ?どうしたの?何があったの?」
ただごとじゃない。わたしは立ち上がり、えりの側へと歩みよる。
ひどく取り乱している。しかも髪もほつれ、転んだのか服も破れていた。
「図書館に戻って!大変なの、みんなが!」
「えっ?」意味がわからなかった。
でも何か重大事件が起きた、らしいことだけはわかった。
「ちょっ!食事中に立つなんて行儀悪いよ!遠野莉々亜(とおの・りりあ)!」
円が騒いでいるのも無視して、わたしは飛び出した。
ううん。あれは恋愛、ではなかったのかも。木野まなみを油断させるために、そんなフリをしたのでは。
人と人とが、答えを当てるために行動する。多くは自分だけ助かりたい、悪い方へ。
だったら、だれかを頼りたくなるのは当然かもしれない。
だけど、紗英(さえ)が準(じゅん)に近づくのはざわざわして気分が悪い。
何なんだろう、この気持ちは。
☆
昼食時刻になり、また食堂へと集まる。
気のせいかな?何だか人が減ったみたい、な。
でも、気のせいではなかった。みんなが席についたころに、また放送が流れる。
ピンポンパンポーン。
「やあお昼だね。みんな、はかどっているかな?さて、ここまでの新しい報告をするよ。今日は加川準(かがわ・じゅん)が狙われたようだ。渡部ライアンが加川準にバトルして負けた。続いてこれも一勝得ていた庄司佳奈(しょうじ・かな)が、やはり加川準にバトルを挑んだが、結果は負け。加川準が当てた。つまり、今日午前中は加川準の一人勝ちだったわけだ」
わたしはあ然とした。庄司佳奈は、この教室に来て一番初めに話した子だ。
準と仲間になりたいと、わたしを引っ張って行って……でもわたしは、そんなことをする佳奈について行けなくて。それで離れたんだった。準を味方にしたかったはずなのに、バトルを仕掛けたなんて。
やっぱりわたしには佳奈のこと、理解できなかった気がする。
それと別に、もうひとつおどろくことがある。
さっき準に会ったときには、全くそんな素振りがなかった。
知らない間に、準は二つもバトルを実行していたんだ。
なぜ、言ってくれなかったの?
もし、紗英の方が先に知っていたとしたら?わたしよりも先に、紗英に教えた?
やだやだ。わたしは、何をぐちゃぐちゃ考えてるんだ?
準本人に、聞いてみればいいのに。変にかんぐってるより、素直に聞いた方がいい。
テーブルに並んでいる顔をざっと見渡し、準を探す。
でも、向こうの席にいるみたいで見つからない。むしろほっとした。
今のわたしは、きっといやな顔をしていると思う。
ふう。
と……ふいにドアが荒々しく開いて、だれかが入ってきた。
あれ?遅刻は円にお仕置きされるんじゃ。……て、わたしもだいぶ円に悪い意味でなじんでしまった。
でも。さっき変だなと思った。席があちこち空いている……ような。
入ってきた女の子は、わたしをすごい形相で呼んだ。
「り、莉々亜(りりあ)!」中村えりだった。
「えっ?どうしたの?何があったの?」
ただごとじゃない。わたしは立ち上がり、えりの側へと歩みよる。
ひどく取り乱している。しかも髪もほつれ、転んだのか服も破れていた。
「図書館に戻って!大変なの、みんなが!」
「えっ?」意味がわからなかった。
でも何か重大事件が起きた、らしいことだけはわかった。
「ちょっ!食事中に立つなんて行儀悪いよ!遠野莉々亜(とおの・りりあ)!」
円が騒いでいるのも無視して、わたしは飛び出した。
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