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第7話 ラノベほど異世界転生は甘くない
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アネストの言葉には力があり、その内容は利夫の運命を決める重い物だった。
「1つの掟。それは3つのルールとは違い、貴方にしか適用されない禁止事項になります。その内容は、リブラスが考慮した上で与えます」
まとめるとこうなる。
・ルールは、全ての転生者【全員】に適用される禁止事項。
・掟は、転生者【個人】にしか適用されない禁止事項。
・掟の内容はバラバラであり、リブラスから与えられる。
・ルールは『転生者の殺害』と『転生者の口外』の2つを違反すると即消滅
・掟は違反した時点で即消滅
「掟を与える基準はなんなのかしら?」
「転生者の生前の願望や、欲望。それを抑える様な掟を与えます。例えばですが・・・。彼女が出来ずに死んだのが心残りな転生者には、【彼女を作ってはいけない】という掟を与えたりします」
「なんでそんな酷い事すんのよ」
「掟とは、即ち罰。死後の目的を果たすべく、制約が必要になるのですよ。貴方は死後、どこに行くのかを決める為に異世界に転生します。ある者は底辺まで落ちぶれた人生をやり直すために転生し、またある者は転生した仲間・家族と再会する為に転生します。理由など、多すぎるぐらいです」
「なるほどね。だから転生する理由は人それぞれってわけ。ところで、さっき言った【転生者が転生者を殺してはならない】っていうのはどういう意味?。殺しちゃうと何か問題があるの?」
「はい。転生者を殺す。それは即ち、他者の転生を剥奪したのと同義。その場合、転生者はもちろん殺した転生者も例外なく消滅します。つまり転生者を殺せば、その瞬間あなた自身も消滅してしまうのです」
神からの掟は神聖な物であり、つまる所の修行である。修行中の僧侶や信者を邪魔すれば天罰が与えられるのと等しく、神の冒涜とも取れる行為。現在、殺人を犯すメリットは無いらしい。
「転生先の世界で死ぬと、二度とここには戻れません。加えて転生者を殺した者の魂は、永遠の無へと解き放たれます」
利夫はアネストの説明を聞きながら考えていた。どちらにせよ、利夫は必要最低限与えられたルールと掟を守らなければならない。両方とも破ってしまうと転生者としての資格を失い、消滅して本当のゲームオーバーを迎えることになる。
おおまかな説明は頭に入ったが、掟の内容が鍵になってくるだろう。
「さて。一番肝心の、どんな掟が与えられるのか知りたいわね」
「それじゃあ、私から早速伝えるわよ。とびっきりキツいから覚悟しときなさい」
「カモンリブロースちゃん。お願いするわ」
「あんたに与えられる掟は・・・」
「・・・・・・」
利夫は固唾を呑んで天使の言葉を待つ。そして、リブラスは自信ありげに口を開いた。
「『イケメンと深い仲になる事』yいだだだだだだだだだだだだ!?」
言い終わったのと同時に気が付けば利夫の右手がリブラスの顔面を掴んで思い切り潰しにかかっていた。
「ちょ、ちょお!ちょっと待って! 落ち着いてちょうだい!!」
「・・・焦ってる様に見える?」
「いづづづづづづちょ、え、待ってなんでこんなちからつyあだだだだだだだだ!?」
「黙りなさい」
「ごごごごごごめんなさいぃいい!! 悪かったですぅうううううう」
本気で顔の骨が陥没すると思った時、リブラスはなんとか解放された。痛がりながら利夫の顔をチラ見したリブラスは戦慄した。笑っていたのだ。それも満面の笑顔で。しかし生気を放つなずの目は漆黒に塗りつぶされ、全然笑ってはいなかった。
むしろ目が合った瞬間身体中に寒気が走り、冷や汗が流れ出したリブラスが引きつった笑みを浮かべる。
「どうせ死ぬならあんたを殺してアタシも死ぬわ」
「助けてアネスト様!。このオカマ狂ってますうううううう!!!」
遥かに人間より強い存在なのに完全に圧に屈したリブラスは愉快そうに見守るアネストに助力を求めた。
「落ち着いてください京極利夫。その掟はあまりに非道なので、私から提案させてください」
「やっと話が通じる人が出て来たわ」
「最初からここに居ましたよ。異世界では、貴方が没頭していた創作世界と同じくあなた好みの人間がたくさん居ます。故にその状況に準じた掟が必要になってくるのでリブラスはそう決めたのですが、もう少し基準を明確にしましょう。京極利夫。貴方はオドルガルトで『人間と家族・恋人関係になる事』を禁じます」
アネストの口から放たれた言葉を聞いた利夫は、驚きの表情を浮かべた。利夫が困惑するのも無理はない。家族は普通に居たが、とっくの昔に死別している。いつからからBLに目覚めて恋愛を放棄した利夫は今まで一度も他人と深い関わりを持ったことが無かったのだ。
「貴方は家族・恋人という概念が希薄であり、異世界転生すれば間違いなくそれらの感情が強くなってきます。貴方がどんな趣味、趣向を持っていようとも。人間とは他人との縁を完全に切る事が出来ず、また他人を欲する生き物。貴方にぴったりの掟です」
そう言われた利夫は何も言い返せなかった。確かにそうかも知れない。死にかけ、裏の街へ逃げた時はどうなっても良いと思っていた。
けれどコロッセオのみんなと出会って、推し事や生きる事に希望を見出して生きていた。誰も知らない未開の土地で生きていくのなら、他人との関りは絶対に必要になるだろう。
「・・・わかったわ。それなら文句なし」
強く否定する理由もないので、自分なりにその条件を飲み込む。アネストは満足げな顔で、指を鳴らした。すると、何もなかった空間に白く輝く扉が出現する。
「いかにも天国への扉って感じだけど、この先には不思議な国が広がってるのね?」
「はい。良き旅路となりますように」
「ありがとアネちゃん。アタシが死んだら、また会いましょ!」
アネストと別れの挨拶をを交わし、白い扉を開いた利夫は光に包まれ扉ごと消滅した。星の揺り籠に残されたアネストは最後まで無表情だったが、リブラスは顔をしかめて背を向けていた。
「リブラス。貴方、彼に悪戯をしましたね?」
「・・・なんの話でしょうか?」
「オドルガルトであの悪戯がどんな意味を持つのか、知っているでしょう?」
「・・・仕返しです。悪戯じゃありません」
リブラスが残した悪戯が、利夫の生活にとんでもない影響を及ぼすことになる。
「1つの掟。それは3つのルールとは違い、貴方にしか適用されない禁止事項になります。その内容は、リブラスが考慮した上で与えます」
まとめるとこうなる。
・ルールは、全ての転生者【全員】に適用される禁止事項。
・掟は、転生者【個人】にしか適用されない禁止事項。
・掟の内容はバラバラであり、リブラスから与えられる。
・ルールは『転生者の殺害』と『転生者の口外』の2つを違反すると即消滅
・掟は違反した時点で即消滅
「掟を与える基準はなんなのかしら?」
「転生者の生前の願望や、欲望。それを抑える様な掟を与えます。例えばですが・・・。彼女が出来ずに死んだのが心残りな転生者には、【彼女を作ってはいけない】という掟を与えたりします」
「なんでそんな酷い事すんのよ」
「掟とは、即ち罰。死後の目的を果たすべく、制約が必要になるのですよ。貴方は死後、どこに行くのかを決める為に異世界に転生します。ある者は底辺まで落ちぶれた人生をやり直すために転生し、またある者は転生した仲間・家族と再会する為に転生します。理由など、多すぎるぐらいです」
「なるほどね。だから転生する理由は人それぞれってわけ。ところで、さっき言った【転生者が転生者を殺してはならない】っていうのはどういう意味?。殺しちゃうと何か問題があるの?」
「はい。転生者を殺す。それは即ち、他者の転生を剥奪したのと同義。その場合、転生者はもちろん殺した転生者も例外なく消滅します。つまり転生者を殺せば、その瞬間あなた自身も消滅してしまうのです」
神からの掟は神聖な物であり、つまる所の修行である。修行中の僧侶や信者を邪魔すれば天罰が与えられるのと等しく、神の冒涜とも取れる行為。現在、殺人を犯すメリットは無いらしい。
「転生先の世界で死ぬと、二度とここには戻れません。加えて転生者を殺した者の魂は、永遠の無へと解き放たれます」
利夫はアネストの説明を聞きながら考えていた。どちらにせよ、利夫は必要最低限与えられたルールと掟を守らなければならない。両方とも破ってしまうと転生者としての資格を失い、消滅して本当のゲームオーバーを迎えることになる。
おおまかな説明は頭に入ったが、掟の内容が鍵になってくるだろう。
「さて。一番肝心の、どんな掟が与えられるのか知りたいわね」
「それじゃあ、私から早速伝えるわよ。とびっきりキツいから覚悟しときなさい」
「カモンリブロースちゃん。お願いするわ」
「あんたに与えられる掟は・・・」
「・・・・・・」
利夫は固唾を呑んで天使の言葉を待つ。そして、リブラスは自信ありげに口を開いた。
「『イケメンと深い仲になる事』yいだだだだだだだだだだだだ!?」
言い終わったのと同時に気が付けば利夫の右手がリブラスの顔面を掴んで思い切り潰しにかかっていた。
「ちょ、ちょお!ちょっと待って! 落ち着いてちょうだい!!」
「・・・焦ってる様に見える?」
「いづづづづづづちょ、え、待ってなんでこんなちからつyあだだだだだだだだ!?」
「黙りなさい」
「ごごごごごごめんなさいぃいい!! 悪かったですぅうううううう」
本気で顔の骨が陥没すると思った時、リブラスはなんとか解放された。痛がりながら利夫の顔をチラ見したリブラスは戦慄した。笑っていたのだ。それも満面の笑顔で。しかし生気を放つなずの目は漆黒に塗りつぶされ、全然笑ってはいなかった。
むしろ目が合った瞬間身体中に寒気が走り、冷や汗が流れ出したリブラスが引きつった笑みを浮かべる。
「どうせ死ぬならあんたを殺してアタシも死ぬわ」
「助けてアネスト様!。このオカマ狂ってますうううううう!!!」
遥かに人間より強い存在なのに完全に圧に屈したリブラスは愉快そうに見守るアネストに助力を求めた。
「落ち着いてください京極利夫。その掟はあまりに非道なので、私から提案させてください」
「やっと話が通じる人が出て来たわ」
「最初からここに居ましたよ。異世界では、貴方が没頭していた創作世界と同じくあなた好みの人間がたくさん居ます。故にその状況に準じた掟が必要になってくるのでリブラスはそう決めたのですが、もう少し基準を明確にしましょう。京極利夫。貴方はオドルガルトで『人間と家族・恋人関係になる事』を禁じます」
アネストの口から放たれた言葉を聞いた利夫は、驚きの表情を浮かべた。利夫が困惑するのも無理はない。家族は普通に居たが、とっくの昔に死別している。いつからからBLに目覚めて恋愛を放棄した利夫は今まで一度も他人と深い関わりを持ったことが無かったのだ。
「貴方は家族・恋人という概念が希薄であり、異世界転生すれば間違いなくそれらの感情が強くなってきます。貴方がどんな趣味、趣向を持っていようとも。人間とは他人との縁を完全に切る事が出来ず、また他人を欲する生き物。貴方にぴったりの掟です」
そう言われた利夫は何も言い返せなかった。確かにそうかも知れない。死にかけ、裏の街へ逃げた時はどうなっても良いと思っていた。
けれどコロッセオのみんなと出会って、推し事や生きる事に希望を見出して生きていた。誰も知らない未開の土地で生きていくのなら、他人との関りは絶対に必要になるだろう。
「・・・わかったわ。それなら文句なし」
強く否定する理由もないので、自分なりにその条件を飲み込む。アネストは満足げな顔で、指を鳴らした。すると、何もなかった空間に白く輝く扉が出現する。
「いかにも天国への扉って感じだけど、この先には不思議な国が広がってるのね?」
「はい。良き旅路となりますように」
「ありがとアネちゃん。アタシが死んだら、また会いましょ!」
アネストと別れの挨拶をを交わし、白い扉を開いた利夫は光に包まれ扉ごと消滅した。星の揺り籠に残されたアネストは最後まで無表情だったが、リブラスは顔をしかめて背を向けていた。
「リブラス。貴方、彼に悪戯をしましたね?」
「・・・なんの話でしょうか?」
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