鏡の中から覗くのは

鏡上 怜

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2.もうじき四半世紀の人生だが

Grotesque

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 グロテスク――この言葉を使うとき、あなたはどのようなものを念頭に置くだろうか。
 そもそも使わない、という指摘はさておき、多くの場合【残虐表現・またはそれを含む作品】についてそれを使うのではないかと思う。私だってそうである。

「うえ~、まさかのグロ画像ですわ」
「グロい、でもそれがいい!」
「純愛と思っていたらガッツリとグロゲー……、釣られたお」

 等々、具体的に使う言葉がこうであるかは別として、大体このような使い方をするのではないだろうか。グロテスク=猟奇的・残虐というようなイメージがつきまとう言葉のように思う。
 ただ、グロテスクという言葉そのものの意味としては

 グロテスク【grotesque(フランス・イギリス)】
 ① 怪奇的。奇怪。異様。不気味。グロ。「-な恰好」
 ② 〔美〕装飾様式の一つ。動植物・人間などのモチーフを曲線模様で組み合わせるもの。

 と記載されている(『広辞苑 第六版』より)

 このうち普段使われるのは「不気味」の意味だろう(グロはグロテスクの略語と記載されている)。グロい、グロ画像、グロ描写など、「不気味」から派生した形での意味付けがなされることで現在に至るこの「グロテスク」という言葉であるが、果たして「この言葉には他の意味だってあるんだから、ただグロいグロいと言っていたってどの意味かわからないぞ」と警告じみたことを言ってみせたとして、それが何か意味を成すだろうか。
 私が思うに、それは恐らくないだろうと思う。
 言葉に限らず、多くの物事の正否はに左右される要素も小さくないと思っている。それに、その時々の状況も大きいだろう。
 魔女狩りを例にとると、現代から思えば悪しき風習であり、偏った価値観を持つ狂信者たちによる凶行であると思われていることが多いと思われるが、少し調べてみるとその背景には権力闘争や権威の浸透を図った為政者たちの意図などが見えてくる。更に踏み込んでみると、同調圧力や集団の規範意識、一貫性の心理など、現代にも通じる心理的要素(もちろん信仰の在り方も大きな割合を占めているが)によって民衆の側から魔女狩りが推し進められていったことが窺える。
 しかし、もちろんその時代にあっても現代と同じくその在り方に疑問を呈する者はいた。
 そういった者たちを押し込め、弾圧し、殺めてきたのは他ならぬ世情であり、その根幹を成していたのはそこに生きる人々の認知であった…………と私は思っている。

 当世に生きた彼らにとって正統だったのは、【という図式であり、それに異を唱える者が異端であった。これは抗えない世情の流れであったと思われている――という卒業研究をしたのが遠い昔のように思える。

 閑話休題。

 厳密なものはともかく、物事の正否を決めるのは大方においてどれほど認知されているか、であると思われる。現在ではグロテスクという言葉は残酷・猟奇的なニュアンスを持っていることが多い。喘ぐという言葉が性的ニュアンスをもって受け止められるのもこうした認知の度合いによるものだろう。

 正しいと私たちが信じているものが永続的に正しいとは限らない。
 正しいと私たちが信じているものが普遍的に正しいとは限らない。
 正しいと私たちが信じているものが一方的に正しいとは限らない。

 私たちは、自分で思っているよりも曖昧な世界の中を生きているのかも知れない。
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