鏡の中から覗くのは

鏡上 怜

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3.裏話

鏡の世界に囚われて・2

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 4章「硝子の世界」は、この章をご閲覧くださった某先生に「見てはいけないものを見た気がする」と言わしめた章である。何でも、私自身の心の内を覗いたような錯覚に陥ったのだという。

 この指摘は実に的を射たものであり、この章では色々と心の内に溜めておくのが苦しくなったことを1話完結の物語として吐き出した形をとっている。ちなみにほとんどの物語が「私」から誰かへの呼びかけの形をとっているのも、この章の特徴といえば特徴かもしれない。
 これが誰に対する呼びかけなのかについては、この話をご覧になった諸兄の解釈にお任せしたい。
 ただ、1つ言うとしたら……。

 この章、自分で後から見返してもような気持ちにさせられる。自身の心のままに書くということがあまりなかった(どの物語にせよ、しっかり物語としての形を作ってから書き始める)ので、なかなか見苦しい形になっているかも知れないが、これこそ、鏡上が心のままに曝け出すように書いた物語、と言えるかもしれない。
「曇天を映す泥濘、或いは空虚な器を満たした恋の話」
「少女露傷癖、或いは湧き起こる闇への最後の抵抗」
の2話に顕著に表れていると思われるので、お時間があれば是非覗いてみていただきたい。


 5章「偽らざる黒と、純白の嘘を」は、英語のサブタイトルにこだわっていた節があるが、ストーリーとしては既に殺してしまった想い人への想いを綴る物語である。4章「硝子の世界」の後と思うと、存外シンプルな構成になっているかも知れない。
 強いて言うなら、ルビ機能の新しい使い方を試したかった、という回かもしれない。


 6章「period」は、その名の通り『鏡の世界に囚われて』の終章として位置付けられている。
 1話目「瑠璃色の箱庭から」は、夜明け前の空を見上げながら夢を通して「あなた」を思う「わたし」の物語。届きそうにない片想いの物語が多い気がするのは、恐らく気のせいではないように思う。

 2話目「白いネコのお話」は、大学時代から少し考えていたシチュエーションオンリー話である。神秘的(魔的?)な雰囲気を秘めた猫の話を書きたかったのである。ラストは、鏡上作品のお約束と思ってほしい。

 最終回「鏡の世界に囚われて」。個人的に、最終回のサブタイトルが作品タイトルというシチュエーションに熱く燃える性質たちであるので、そこから決定した物語だ。一応、話としての『鏡の世界に囚われて』は終わっても鏡の世界そのものはあなたの背後に広がっているわたしはあなたのうしろにいるという意味合いで書かせていただいた。

 以上を以て、これがアルファポリス上での処女作『鏡の世界に囚われて』の解説を終わろうと思う。
 次回の更新は、なるべく早めにさせていただきますので、お待ちくださいませ。
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