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月恋唄
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見上げた夜空では、春の曖昧な夜空の中で月が輝いている。月の光はよく蒼白いと言われているし、晴れた夜空を見たときなどは確かにそう見える。
ただ、いま私の目に見えている月はどちらかというと黄色い。よく図画工作で習う色の一覧に載っている『クリーム色』のような色だ。ただ、そんな光であっても月はむしろ普段の蒼白より優しく暖かみのある光を地上に注いでいる。
いま、ここまで読んだ方のうち何人が月を見に行ったか、また昨夜の月を思い出すかしたか気になるところではある。しかし、それは敢えてここで書くことであるまい。
私が言いたいのは、私自身が恋するような気持ちでこの月を見上げているということである。
もちろん、現実の人間に恋をしないわけではない。というより、恥ずかしながら、たぶん恋をしていない時間の方が少ないだろう――と書くと恐ろしく気が多い色情狂のように見えてしまうのは甚だ疑問であるが、仕方あるまいと思うことにしよう。とにかく、私は別に現実の人間に対して恋をしないわけではないが、月に対する想いを敢えて表現しようとするなら、それもまた恋と呼ぶほかないのではないだろうか――と感じている。
届かないことがわかっていても、見ずにはいられない。
見上げて、その光を浴びながら夜の野外を歩く自分を夢想して悦に浸る微睡みが幸せで。
星ひとつ見えない漆黒の夜空に輝く孤月に、思わず胸を焦がされる。
月に関する物語に自分を重ね、その舞台から見上げる月を夢想する。
絵画を描こうとすると(高校の美術課程などで)、必ず月の出てくる無生物画になってしまったり。
月に照らされる大地がまるでステージのように自分を呼んでいるような錯覚に陥ったり。
月明かりに照らされていることに気付いて高揚したり。
その明かりに照らされる静謐の夜道を夢想して、その中を歩いたり。
月の存在が、私の心の中にはほとんど常にある。月の見られない新月の夜、雨夜、厚い雲に覆われた空、思わずそこにないはずの月を想像してしまう。見えないだけで、確かに夜空には浮かんでいるはずの月を。
月は古来より様々な物語に登場している。
日本では竹取物語(かぐや姫)が代表格だろうか、その他に、月の表面に見えるクレーターに様々なものが見出されてきた。人の目に遥か昔から見えている、しかし決して手の届かない、明確なある種の異界。その魔的な神秘性に、人は魅せられてきたのだろうか。
そして、今ではいずれ月に誰もが行くことが出来る時代が来るだろうと囁かれている。
少しずつ、距離を詰めているのだろうか。
あの頃――ただ焦がれる想いを携えて見上げていることしかできなかった時代から、遥かに時が経ち、少しずつ。
ゆっくりと、着実に。
確かに、時間をかけて。
人類は、月に恋をして行くのだろう。
知らないことが、残されている限り。
未知への探求心という恋情に導かれるままに。
ただ、いま私の目に見えている月はどちらかというと黄色い。よく図画工作で習う色の一覧に載っている『クリーム色』のような色だ。ただ、そんな光であっても月はむしろ普段の蒼白より優しく暖かみのある光を地上に注いでいる。
いま、ここまで読んだ方のうち何人が月を見に行ったか、また昨夜の月を思い出すかしたか気になるところではある。しかし、それは敢えてここで書くことであるまい。
私が言いたいのは、私自身が恋するような気持ちでこの月を見上げているということである。
もちろん、現実の人間に恋をしないわけではない。というより、恥ずかしながら、たぶん恋をしていない時間の方が少ないだろう――と書くと恐ろしく気が多い色情狂のように見えてしまうのは甚だ疑問であるが、仕方あるまいと思うことにしよう。とにかく、私は別に現実の人間に対して恋をしないわけではないが、月に対する想いを敢えて表現しようとするなら、それもまた恋と呼ぶほかないのではないだろうか――と感じている。
届かないことがわかっていても、見ずにはいられない。
見上げて、その光を浴びながら夜の野外を歩く自分を夢想して悦に浸る微睡みが幸せで。
星ひとつ見えない漆黒の夜空に輝く孤月に、思わず胸を焦がされる。
月に関する物語に自分を重ね、その舞台から見上げる月を夢想する。
絵画を描こうとすると(高校の美術課程などで)、必ず月の出てくる無生物画になってしまったり。
月に照らされる大地がまるでステージのように自分を呼んでいるような錯覚に陥ったり。
月明かりに照らされていることに気付いて高揚したり。
その明かりに照らされる静謐の夜道を夢想して、その中を歩いたり。
月の存在が、私の心の中にはほとんど常にある。月の見られない新月の夜、雨夜、厚い雲に覆われた空、思わずそこにないはずの月を想像してしまう。見えないだけで、確かに夜空には浮かんでいるはずの月を。
月は古来より様々な物語に登場している。
日本では竹取物語(かぐや姫)が代表格だろうか、その他に、月の表面に見えるクレーターに様々なものが見出されてきた。人の目に遥か昔から見えている、しかし決して手の届かない、明確なある種の異界。その魔的な神秘性に、人は魅せられてきたのだろうか。
そして、今ではいずれ月に誰もが行くことが出来る時代が来るだろうと囁かれている。
少しずつ、距離を詰めているのだろうか。
あの頃――ただ焦がれる想いを携えて見上げていることしかできなかった時代から、遥かに時が経ち、少しずつ。
ゆっくりと、着実に。
確かに、時間をかけて。
人類は、月に恋をして行くのだろう。
知らないことが、残されている限り。
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