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第5章 夢から覚めない
4・ブラックシープ
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「――――っ!?」
きっと急に触ったからびっくりしたのだろう、ただそのちょっとゴツゴツした手に指を当てただけで、江崎くんはまるで違うとこを触られたみたいにビクッ、と震えて、周りに漏れないようにはしてたみたいだけど、普段じゃ絶対聞けないような声を上げてくれた。
でもさ、駄目だよ江崎くん。
そんな声出されたら、もっとしたくなっちゃうよ?
たぶん、まだああいうことには全然免疫とかないんだろうなぁ。
中学校のときにわたしが初めてセックスをした吉井先生とか、その後出会ったいろんな人の、わたしが感じて声を漏らしていたり、したことのない体位でのセックスに戸惑ったりしているときに見せていたにやけた――とても楽しそうな顔が脳裏に蘇ってくる。
うん、あの人たちはわたしを見て、きっとこういう気持ちになってたんだね。
確かに、楽しいかも知れない。
「な、いきなり何すんだよ、三好!?」
周りに聞こえないようにととにかく気を遣っているみたいで、わたしを怒るようなその声もひそひそと静かだ。どことなくそんな様子が可愛らしくて、思わずクスクス笑ってしまった。
その様子を怪訝そうに見ながら、「も、もう休み時間終わるから」と少し強めに囁いて、江崎くんは席に戻って行った。その頬が少し赤くなっているのが、眩しい陽光の中でもよくわかって。
わたしはまた少し、小さく笑ってしまっていた。
そんな、ちょっとした幸福感を抱いたまま、明るく白い昼間は終わりを告げて、空に引きずられるように世界があかね色に染まっていく頃。
もう、何回目になるだろう?
思わず自問しながら、わたしはいつものように松永先輩と肌を重ねていた。冬や春を通り過ぎて、初夏の夕暮れ。ぬらぬらとして、だけどお父さんや他の人たちみたいに粘ついて脂臭かったりしない汗が体を伝うのを感じる。きっと、若いからかも知れない。
入ってくる舌からも、流れ込んでくる涎からも、据えたような臭いはしない。
だけど、やっぱり松永先輩からはただの欲望しか伝わってこなくて。たぶんわたしにしたってそれは同じことでしかなくて。
そんなのはわかっているし、だからこそ最近は淡白なセックスになっていたけれど。
「――っ! はぁ、はぁ……ぁ、何かさ、三好ちゃんいつもよりエロくない?」
「……そうですか? せ、先輩にそう見えてるだけじゃない?」
そう言いながらも、先輩の言葉に同意してしまう。
いつもなら、こんなに息が切れるまで続けたりしない。それがここまで続けられるのは、たぶん。
「もしかして何か別の人を重ねちゃってたり?」
「まさかぁ~」
冗談めかして言われたことが図星過ぎて、とぼけ方が白々しくなってしまう。
あぁ、もうわかってるんだ。
たぶんわたしが捨てたと思ってた気持ちはまだ燻っていて、とっくに濁ったものに変わってるんだって。
「単なる気分ですよ? だから、」
はぁ、はぁと余裕なく呼吸をしている先輩の唇を塞いで、舌を絡める。
粘っこい水音が、静かな放課後の空き教室に響く。
「だから先輩。もっと――」
その醜さから逃げたりなんてできないけれど、少なくとも頭を働かせていない間は、少しだけ自由だった。
きっと急に触ったからびっくりしたのだろう、ただそのちょっとゴツゴツした手に指を当てただけで、江崎くんはまるで違うとこを触られたみたいにビクッ、と震えて、周りに漏れないようにはしてたみたいだけど、普段じゃ絶対聞けないような声を上げてくれた。
でもさ、駄目だよ江崎くん。
そんな声出されたら、もっとしたくなっちゃうよ?
たぶん、まだああいうことには全然免疫とかないんだろうなぁ。
中学校のときにわたしが初めてセックスをした吉井先生とか、その後出会ったいろんな人の、わたしが感じて声を漏らしていたり、したことのない体位でのセックスに戸惑ったりしているときに見せていたにやけた――とても楽しそうな顔が脳裏に蘇ってくる。
うん、あの人たちはわたしを見て、きっとこういう気持ちになってたんだね。
確かに、楽しいかも知れない。
「な、いきなり何すんだよ、三好!?」
周りに聞こえないようにととにかく気を遣っているみたいで、わたしを怒るようなその声もひそひそと静かだ。どことなくそんな様子が可愛らしくて、思わずクスクス笑ってしまった。
その様子を怪訝そうに見ながら、「も、もう休み時間終わるから」と少し強めに囁いて、江崎くんは席に戻って行った。その頬が少し赤くなっているのが、眩しい陽光の中でもよくわかって。
わたしはまた少し、小さく笑ってしまっていた。
そんな、ちょっとした幸福感を抱いたまま、明るく白い昼間は終わりを告げて、空に引きずられるように世界があかね色に染まっていく頃。
もう、何回目になるだろう?
思わず自問しながら、わたしはいつものように松永先輩と肌を重ねていた。冬や春を通り過ぎて、初夏の夕暮れ。ぬらぬらとして、だけどお父さんや他の人たちみたいに粘ついて脂臭かったりしない汗が体を伝うのを感じる。きっと、若いからかも知れない。
入ってくる舌からも、流れ込んでくる涎からも、据えたような臭いはしない。
だけど、やっぱり松永先輩からはただの欲望しか伝わってこなくて。たぶんわたしにしたってそれは同じことでしかなくて。
そんなのはわかっているし、だからこそ最近は淡白なセックスになっていたけれど。
「――っ! はぁ、はぁ……ぁ、何かさ、三好ちゃんいつもよりエロくない?」
「……そうですか? せ、先輩にそう見えてるだけじゃない?」
そう言いながらも、先輩の言葉に同意してしまう。
いつもなら、こんなに息が切れるまで続けたりしない。それがここまで続けられるのは、たぶん。
「もしかして何か別の人を重ねちゃってたり?」
「まさかぁ~」
冗談めかして言われたことが図星過ぎて、とぼけ方が白々しくなってしまう。
あぁ、もうわかってるんだ。
たぶんわたしが捨てたと思ってた気持ちはまだ燻っていて、とっくに濁ったものに変わってるんだって。
「単なる気分ですよ? だから、」
はぁ、はぁと余裕なく呼吸をしている先輩の唇を塞いで、舌を絡める。
粘っこい水音が、静かな放課後の空き教室に響く。
「だから先輩。もっと――」
その醜さから逃げたりなんてできないけれど、少なくとも頭を働かせていない間は、少しだけ自由だった。
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