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第六章 創生
タカトは俺のものだ。*
「リディアン様」
名前を呼ばれて、俺は驚いて顔を向けた。
馬車の外にはフェンテスがいて、俺が降りるのを待っている。
「あ、ああ。すまない」
いつの間にアデラ城に着いていたのか。まったく気付かなかった。
ステップに足を乗せて馬車から降りて、俺は城の中へと入る。
そしてそのまま、城の奥にあるタカトの部屋へ向かった。
過去を思い出したせいで、心だ乱されていた。
不安と焦燥感を抱いてしまっている。
今は、タカトの顔を見て、気を落ち着けたい。
俺に向けるあの笑みを、今すぐにでも目にしたい。
急いでタカトの部屋の前まで行ってみたが、そこに歩哨に立つはずのグンターの姿はなかった。
彼はどんな時でもタカトを守るために傍にいるはずで。
ということは、まだオングストレーム商会から帰っていないということか。
懐中時計で確認すると、出かけてから5時間以上経過している。
さすがに、会合にそれほど時間はかからない。
また会長が食事会にでも誘ったのか。
それとも、ドワーフたちが宴席でも始めたか。
人の好すぎるタカトは、断ると言うことを知らない。
こうなったら、頃合いを見て、迎えに行くことも視野に入れなくては。
俺は、タカトの部屋に入って、椅子に座った。
ちらりとベッドを見て、そこでいつも眠っていたタカトを思い出す。
夜会に出た後、遅くに帰ってきた俺は、いつもタカトに会いに来ていた。
起こさないようにその寝顔だけ見て、触れることもせずに部屋を出た。
立場上、夜会に誘われて、言下に断ることはできない。
俺が娶るのはタカトだけと既に決めてはいたが、こればかりは俺だけでは決められない。
何より、タカトに求婚を断られたら、どうしたらいいのか。
俺にとっての問題は、いつだってそこにあった。
無駄な諍いを避けるために、周辺には根回しをして、タカトの了承一つで次に進めるようにしていた。
だが、タカトに望まれず、拒まれたらそこで終わりだ。
タカトの想いは、俺にはわからなかった。
好きだとは言ってもらえて、身体を重ねもした。
だが、俺に夜会に一人で行くことを勧め、妃を選ぶように仕向けてくる。
なぜ、俺と添い遂げようとは思ってくれないのか。
どうして、欲しがってもらえないのか。
俺のことを、本当のところは、どう思っているのか。
タカトに望まれなくて足掻き苦しんでいた俺は、さぞ滑稽だったことだろう。
俺が欲しいのはただ一つ、タカトだけだった。
だが、タカトが俺に望むのは、国のために妃を選ぶことだった。
すれ違っていく想いを、俺には留める手立てがなかった。
決定打となったのは、無理矢理夜会について来るよう言った夜だ。
ふとバルコニーの方を見て、心臓が止まるかと思った。
タカトが、転移門を開こうとしている。
ついに、俺を見限って、元の世界に帰ることにしたのか。
俺はタカトに駆け寄って縋り、必死に訴えた。
あの時に、心を決めた。
100日祭の日、立太子の礼の後に求婚しようと。
そのために、できることすべてをして、その日を迎えようと。
だが、まさかタカトが揺らぎについて、まだ知らないことがあったとは。
異性同士ではなくとも卵が生じることを言わなかった俺も悪いだろうが。
まさか異世界では同性だと子供が生まれないなんて、俺は考えたこともなかった。
それなら、タカトの悩みが深かったのも頷ける。
俺は、たとえ子供が生まれなくとも他の王族に王位継承権を譲ればいいと気楽に考えていたが。
タカトにしてみれば、絶対子供ができないとわかっているのに妃になるなんて言えなかったんだろう。
こんな基本的なことですれ違い、躓いていたとは。
俺が、まだタカトを理解せず、愛を伝えきれていない証拠だ。
早く成熟して、不甲斐ない自分を変えなくては──。
俺がそう決意していると、不意に扉がノックされた。
そして、タカトが扉の隙間から、ひょっこりと顔を覗かせる。
俺を見ると、目元を綻ばせ、嬉しそうに微笑んだ。
その笑みを見た途端に、胸の鼓動が早くなる。
タカトの髪は濡れていて、頬も赤らんでいる。
潤んだ眼差しやいつもより血色のいい唇が、やけに艶っぽい。
どうやら湯殿に行っていたらしい。
「随分と早い風呂だな」
俺の言葉に、タカトは頷いてから答える。
「回復の訓練中に泥をかぶってしまって」
「……そうか」
訓練と言うことは、またバルツァールのところに行っていたんだろう。
俺はタカトに会うまで、自分が狭量な人間だと思ったことはなかった。
だが、今ははっきりと自覚している。俺は、ことタカトのこととなると心が狭くなる。
特に、バルツァールに関しては、猶更だ。
あいつは、あまりにもタカトに近付き過ぎている。
そのせいで、タカトは俺には言えないことも、バルツァールには話すこともある。
「気に食わないな」
「……え?」
聞き返されて、俺は自分が言葉にしていたことに気が付いた。
扉を閉めて近付いてきたタカトの腕を掴んで引き寄せ、その肌の匂いを嗅ぐ。
風呂上がりのタカトからは、レンリーフの香油の香りがする。
「一人で風呂に入るなんて。俺を誘ってくれれば良かったのに」
話の矛先を変えて誤魔化すと、タカトはくすりと笑う。
「泥まみれのまま、リディの帰りを待つことはできません。それに──」
そして、俺の隣の席に座って顔を寄せた。
薄い紫色の虹彩の瞳に見つめられて、心臓が早鐘を打つ。
「リディとは、お風呂より一緒にしたいことがあります」
含み笑いをするタカトは、あまりにも可愛い。
たぶん、自分の言葉の危うさを、まったく理解していない。
聞く人次第では、ベッドに誘われていると思うに違いない。
だが、俺は知っている。タカトには、そういうつもりはさらさらないことを。
「俺としたいこと? それは。期待してもいいのか?」
「シラスイさんが、今夜はシチューだと言っていました」
「──なるほど」
シラスイとは、うちの料理長の名前だ。
要するに、お風呂に入るよりも一緒に食事をしたいという意味なんだろう。
俺は、タカトの顎を指先で捉え、じっと瞳を覗き込む。
途端にタカトは顔を赤くして、目を泳がせる。
俺の顔は、こういう時に少しは役に立つようだ。
まじまじと、その紅潮した顔を見ていると、タカトは眉根を寄せる。
「怒っているんですか?」
「怒る?」
思いも寄らない言葉をかけられて、俺は目を瞬かせた。
すると、タカトは言いにくそうに口にした。
「僕が、会合の後、勝手に行動したことです」
要するに、バルツァールのところに行ったことなんだろうが。
「別に怒ってはいない。できれば、伝えておいてほしくはあるが、俺もまだ帰っていなかったことだしな」
問題は、勝手に行ったことよりも、相手がバルツァールだったことなんだが。
かと言って、思ったことをそのまま口に出す気はない。
あの男の飄々とした態度と余裕の笑みが脳裏に浮かぶ。
俺は、タカトの眼を覗き込み、その鼻先に鼻先を押し付ける。
「お前が泥をかぶった件に関しては、文句の一つも言いたいところだ」
「リディ」
タカトは俺の名前を呼び、首筋に両腕を回した。
「心配要りません。洗えば済むことですから」
そういうことを言っているのではない。
だが、説明をしたところで、タカトに伝わるとは思えない。
「きれいに洗えたかどうか、確認しても?」
俺が揶揄い交じりに聞いてやると、タカトは目を瞠ってから頷いた。
「もちろんです」
俺は、口元に笑みを刷き、タカトの唇に唇を重ねた。
軽く啄んでから舌で唇の狭間をくすぐり、薄く開いたところで口の中を味わう。
「ん……っふ……」
くちゅりと唾液が濡れた音を立て、タカトが身体をビクつかせる。
俺は背中を抱いて引き寄せ、キスを深くした。
舌で歯列を割り、口腔内をぐるりと刺激して、舌を絡めとる。タカトも俺の舌に応え、身を震わせている。感じているのが伝わってきて、もっと触ろうと背中を撫で下ろしところで、ぐいと胸元を押された。これ以上は止めてと言いたいんだろうが、俺は舌を吸い上げ、尻を揉みしだく。
「んん……っん……」
抗議の声を唇で塞いで、指を座面に潜らせて尻の狭間を指で擦る。押し返していた手が縋る動きに変わり、身を委ねてくるようになる。俺はそこでようやくキスを解いて、荒い呼吸を繰り返すタカトに囁いた。
「今すぐ、お前を抱きたい」
「……っ」
タカトは、顔を俯けて返事をしようとしない。声を掛けずに待っていると、顔を上げて俺を見た。困ったように眉を下げ、薄く唇を開いて戦慄かせている。理性で欲望を押さえ込もうとする顔は、清楚でありながら淫らでもある。そのアンバランスな様子がが余計に俺の劣情を掻き立てる。あと少し押せば、タカトは陥落する。だから俺は、敢えてこちらからは何もせずに無言のまま見つめ返した。
瞳が揺れ、眉が寄せられる。口を噤んで黙り込んでいたが、やがて両腕を俺に伸ばして、抱き着いてきた。
「僕も……リディが、欲しい」
欲望に声が掠れ、語尾が震えている。
俺は、抱き寄せて立ち上がり、タカトを支えながらベッドに行った。
仰向けになったタカトに覆いかぶさり、首筋に顔を埋める。
「いい匂いだ」
香油とタカトの肌の香りがして、俺は音を立ててキスを繰り返す。
風呂上がりのせいか、タカトの身体はしっとりとして、いつもより体温が高い。
俺が服を脱がせようとすると、手に手を重ねて止めてくる。
「自分で脱ぐから、リディも脱いでください」
そういえば、俺はまだ王城に行った時のままの服装だ。
「わかった。脱いでいるところを見せ合おう」
「……っ変なこと、言わないで。脱ぎづらくなります」
もちろん、そのための台詞だ。
俺の言葉に戸惑い、躊躇いがちに脱ぐタカトは、やっぱり可愛い。
もう何度も抱いているというのに、未だに初々しさがある。
俺は、さっさと服を脱ぎ、タカトがおずおずと脱ぐ様を見守った。
ボタンを外して肩から落とし、下穿きの紐を解く。
少しずつ露わになる肌は、羞恥のせいで薄っすらピンクがかっている。
肌の白さのせいで余計に目立つ。
ふと、胸元に俺がつけたキスの痕跡が目に入る。
俺は、指先でその痕にそっと触れてから、トントンとタカトに示す。
「ここのキスの痕、これからは消えないように重ね付けする」
「……っそんな、困ります」
「だから、するんだ」
着替えたり、風呂に入ったりする度に、タカトはキスの痕を見て俺を思い出すだろう。それは、なんと甘美な瞬間だろうか。想像するだけで滾ってくる。
「タカトの身体にいっぱい痕を残して、俺のものだって知らしめたい」
「リディ……っ」
名前を呼ばれて、俺は驚いて顔を向けた。
馬車の外にはフェンテスがいて、俺が降りるのを待っている。
「あ、ああ。すまない」
いつの間にアデラ城に着いていたのか。まったく気付かなかった。
ステップに足を乗せて馬車から降りて、俺は城の中へと入る。
そしてそのまま、城の奥にあるタカトの部屋へ向かった。
過去を思い出したせいで、心だ乱されていた。
不安と焦燥感を抱いてしまっている。
今は、タカトの顔を見て、気を落ち着けたい。
俺に向けるあの笑みを、今すぐにでも目にしたい。
急いでタカトの部屋の前まで行ってみたが、そこに歩哨に立つはずのグンターの姿はなかった。
彼はどんな時でもタカトを守るために傍にいるはずで。
ということは、まだオングストレーム商会から帰っていないということか。
懐中時計で確認すると、出かけてから5時間以上経過している。
さすがに、会合にそれほど時間はかからない。
また会長が食事会にでも誘ったのか。
それとも、ドワーフたちが宴席でも始めたか。
人の好すぎるタカトは、断ると言うことを知らない。
こうなったら、頃合いを見て、迎えに行くことも視野に入れなくては。
俺は、タカトの部屋に入って、椅子に座った。
ちらりとベッドを見て、そこでいつも眠っていたタカトを思い出す。
夜会に出た後、遅くに帰ってきた俺は、いつもタカトに会いに来ていた。
起こさないようにその寝顔だけ見て、触れることもせずに部屋を出た。
立場上、夜会に誘われて、言下に断ることはできない。
俺が娶るのはタカトだけと既に決めてはいたが、こればかりは俺だけでは決められない。
何より、タカトに求婚を断られたら、どうしたらいいのか。
俺にとっての問題は、いつだってそこにあった。
無駄な諍いを避けるために、周辺には根回しをして、タカトの了承一つで次に進めるようにしていた。
だが、タカトに望まれず、拒まれたらそこで終わりだ。
タカトの想いは、俺にはわからなかった。
好きだとは言ってもらえて、身体を重ねもした。
だが、俺に夜会に一人で行くことを勧め、妃を選ぶように仕向けてくる。
なぜ、俺と添い遂げようとは思ってくれないのか。
どうして、欲しがってもらえないのか。
俺のことを、本当のところは、どう思っているのか。
タカトに望まれなくて足掻き苦しんでいた俺は、さぞ滑稽だったことだろう。
俺が欲しいのはただ一つ、タカトだけだった。
だが、タカトが俺に望むのは、国のために妃を選ぶことだった。
すれ違っていく想いを、俺には留める手立てがなかった。
決定打となったのは、無理矢理夜会について来るよう言った夜だ。
ふとバルコニーの方を見て、心臓が止まるかと思った。
タカトが、転移門を開こうとしている。
ついに、俺を見限って、元の世界に帰ることにしたのか。
俺はタカトに駆け寄って縋り、必死に訴えた。
あの時に、心を決めた。
100日祭の日、立太子の礼の後に求婚しようと。
そのために、できることすべてをして、その日を迎えようと。
だが、まさかタカトが揺らぎについて、まだ知らないことがあったとは。
異性同士ではなくとも卵が生じることを言わなかった俺も悪いだろうが。
まさか異世界では同性だと子供が生まれないなんて、俺は考えたこともなかった。
それなら、タカトの悩みが深かったのも頷ける。
俺は、たとえ子供が生まれなくとも他の王族に王位継承権を譲ればいいと気楽に考えていたが。
タカトにしてみれば、絶対子供ができないとわかっているのに妃になるなんて言えなかったんだろう。
こんな基本的なことですれ違い、躓いていたとは。
俺が、まだタカトを理解せず、愛を伝えきれていない証拠だ。
早く成熟して、不甲斐ない自分を変えなくては──。
俺がそう決意していると、不意に扉がノックされた。
そして、タカトが扉の隙間から、ひょっこりと顔を覗かせる。
俺を見ると、目元を綻ばせ、嬉しそうに微笑んだ。
その笑みを見た途端に、胸の鼓動が早くなる。
タカトの髪は濡れていて、頬も赤らんでいる。
潤んだ眼差しやいつもより血色のいい唇が、やけに艶っぽい。
どうやら湯殿に行っていたらしい。
「随分と早い風呂だな」
俺の言葉に、タカトは頷いてから答える。
「回復の訓練中に泥をかぶってしまって」
「……そうか」
訓練と言うことは、またバルツァールのところに行っていたんだろう。
俺はタカトに会うまで、自分が狭量な人間だと思ったことはなかった。
だが、今ははっきりと自覚している。俺は、ことタカトのこととなると心が狭くなる。
特に、バルツァールに関しては、猶更だ。
あいつは、あまりにもタカトに近付き過ぎている。
そのせいで、タカトは俺には言えないことも、バルツァールには話すこともある。
「気に食わないな」
「……え?」
聞き返されて、俺は自分が言葉にしていたことに気が付いた。
扉を閉めて近付いてきたタカトの腕を掴んで引き寄せ、その肌の匂いを嗅ぐ。
風呂上がりのタカトからは、レンリーフの香油の香りがする。
「一人で風呂に入るなんて。俺を誘ってくれれば良かったのに」
話の矛先を変えて誤魔化すと、タカトはくすりと笑う。
「泥まみれのまま、リディの帰りを待つことはできません。それに──」
そして、俺の隣の席に座って顔を寄せた。
薄い紫色の虹彩の瞳に見つめられて、心臓が早鐘を打つ。
「リディとは、お風呂より一緒にしたいことがあります」
含み笑いをするタカトは、あまりにも可愛い。
たぶん、自分の言葉の危うさを、まったく理解していない。
聞く人次第では、ベッドに誘われていると思うに違いない。
だが、俺は知っている。タカトには、そういうつもりはさらさらないことを。
「俺としたいこと? それは。期待してもいいのか?」
「シラスイさんが、今夜はシチューだと言っていました」
「──なるほど」
シラスイとは、うちの料理長の名前だ。
要するに、お風呂に入るよりも一緒に食事をしたいという意味なんだろう。
俺は、タカトの顎を指先で捉え、じっと瞳を覗き込む。
途端にタカトは顔を赤くして、目を泳がせる。
俺の顔は、こういう時に少しは役に立つようだ。
まじまじと、その紅潮した顔を見ていると、タカトは眉根を寄せる。
「怒っているんですか?」
「怒る?」
思いも寄らない言葉をかけられて、俺は目を瞬かせた。
すると、タカトは言いにくそうに口にした。
「僕が、会合の後、勝手に行動したことです」
要するに、バルツァールのところに行ったことなんだろうが。
「別に怒ってはいない。できれば、伝えておいてほしくはあるが、俺もまだ帰っていなかったことだしな」
問題は、勝手に行ったことよりも、相手がバルツァールだったことなんだが。
かと言って、思ったことをそのまま口に出す気はない。
あの男の飄々とした態度と余裕の笑みが脳裏に浮かぶ。
俺は、タカトの眼を覗き込み、その鼻先に鼻先を押し付ける。
「お前が泥をかぶった件に関しては、文句の一つも言いたいところだ」
「リディ」
タカトは俺の名前を呼び、首筋に両腕を回した。
「心配要りません。洗えば済むことですから」
そういうことを言っているのではない。
だが、説明をしたところで、タカトに伝わるとは思えない。
「きれいに洗えたかどうか、確認しても?」
俺が揶揄い交じりに聞いてやると、タカトは目を瞠ってから頷いた。
「もちろんです」
俺は、口元に笑みを刷き、タカトの唇に唇を重ねた。
軽く啄んでから舌で唇の狭間をくすぐり、薄く開いたところで口の中を味わう。
「ん……っふ……」
くちゅりと唾液が濡れた音を立て、タカトが身体をビクつかせる。
俺は背中を抱いて引き寄せ、キスを深くした。
舌で歯列を割り、口腔内をぐるりと刺激して、舌を絡めとる。タカトも俺の舌に応え、身を震わせている。感じているのが伝わってきて、もっと触ろうと背中を撫で下ろしところで、ぐいと胸元を押された。これ以上は止めてと言いたいんだろうが、俺は舌を吸い上げ、尻を揉みしだく。
「んん……っん……」
抗議の声を唇で塞いで、指を座面に潜らせて尻の狭間を指で擦る。押し返していた手が縋る動きに変わり、身を委ねてくるようになる。俺はそこでようやくキスを解いて、荒い呼吸を繰り返すタカトに囁いた。
「今すぐ、お前を抱きたい」
「……っ」
タカトは、顔を俯けて返事をしようとしない。声を掛けずに待っていると、顔を上げて俺を見た。困ったように眉を下げ、薄く唇を開いて戦慄かせている。理性で欲望を押さえ込もうとする顔は、清楚でありながら淫らでもある。そのアンバランスな様子がが余計に俺の劣情を掻き立てる。あと少し押せば、タカトは陥落する。だから俺は、敢えてこちらからは何もせずに無言のまま見つめ返した。
瞳が揺れ、眉が寄せられる。口を噤んで黙り込んでいたが、やがて両腕を俺に伸ばして、抱き着いてきた。
「僕も……リディが、欲しい」
欲望に声が掠れ、語尾が震えている。
俺は、抱き寄せて立ち上がり、タカトを支えながらベッドに行った。
仰向けになったタカトに覆いかぶさり、首筋に顔を埋める。
「いい匂いだ」
香油とタカトの肌の香りがして、俺は音を立ててキスを繰り返す。
風呂上がりのせいか、タカトの身体はしっとりとして、いつもより体温が高い。
俺が服を脱がせようとすると、手に手を重ねて止めてくる。
「自分で脱ぐから、リディも脱いでください」
そういえば、俺はまだ王城に行った時のままの服装だ。
「わかった。脱いでいるところを見せ合おう」
「……っ変なこと、言わないで。脱ぎづらくなります」
もちろん、そのための台詞だ。
俺の言葉に戸惑い、躊躇いがちに脱ぐタカトは、やっぱり可愛い。
もう何度も抱いているというのに、未だに初々しさがある。
俺は、さっさと服を脱ぎ、タカトがおずおずと脱ぐ様を見守った。
ボタンを外して肩から落とし、下穿きの紐を解く。
少しずつ露わになる肌は、羞恥のせいで薄っすらピンクがかっている。
肌の白さのせいで余計に目立つ。
ふと、胸元に俺がつけたキスの痕跡が目に入る。
俺は、指先でその痕にそっと触れてから、トントンとタカトに示す。
「ここのキスの痕、これからは消えないように重ね付けする」
「……っそんな、困ります」
「だから、するんだ」
着替えたり、風呂に入ったりする度に、タカトはキスの痕を見て俺を思い出すだろう。それは、なんと甘美な瞬間だろうか。想像するだけで滾ってくる。
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