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俺が同期の不破と付き合うようになったわけ
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外では雷が鳴り、ゼミ室の蛍光灯がチカチカと点滅する。
これは、そのうち停電するんじゃないかと、俺は天井を見上げながら思っていた。
「では、次回の発表者は──」
「はい、俺です」
ゼミ生の顔を追っていた教授に向けて、俺は手を上げた。
「ええと、君は……桜井くんだったか」
惜しい!
と言いたいところだが、相手は教授だ。
ここで笑いを取るわけにはいかない。
「佐倉です」
きっと今、樹木の方の桜が思い浮かんでいるんだろうなと思ったが、俺はただニコニコと笑う。
「そうか。レジュメは2日前までにメールで送るように」
「はい、わかりました」
残り1週間もあれば、発表原稿は準備できるはずだ。
余裕でメールを送れるだろうと、俺は返事をした。
そして、次の講義に行こうと席を立ったところで、「ああ、そうだ」と教授は続ける。
「不破くん」
名前を呼んだ相手は、俺の同期だ。
どうやら、そっちの顔と名前はしっかり覚えているらしい。
それはそうだろう。向こうは、卒業後は研究室に残る人間だ。
学部卒で就職しようとしている俺とは扱いが違って当然だ。
不破は、二年の時に既に学会でポスター発表し、既に卒業論文を書き始めていると噂されている優秀な学生だ。
見た目はパッとしないが、将来有望だということで同期の間でも人気がある。
名前を呼ばれるとペンをしまう手を止めて、教授の方を見る。
だが、返事はしない。
こういうところが、不破が「不和」と影で揶揄される原因となっている。
だが、教授の方では気にならないのか、続けて言う。
「この後、時間はあるかね」
「ありません」
今度は即答だ。
いや、教授は時間の有る無しを純粋に聞いているわけじゃない。
用事があるから残れと言っているんだ。
俺は他人事ながら、ハラハラして成り行きを見守っていた。
「おい、佐倉、聞いていたか?」
「ん? 何?」
不和と教授のやり取りに気を取られて、俺は同期の話を聞いていなかった。
「この後、実習の準備をするから、ちょっと手伝ってもらえないか?」
実習というのは、教育実習のことだ。
母校に戻って教壇に立つわけだが、それは来年のことで、別に今からやる必要はない。
要するに、自主勉強みたいなものだ。
ここで不破みたいに、「時間がない」と言えればどんなにいいだろう。
「あー……」
何か用事は見つからないかと脳をフル稼働させ、俺は微笑んだ。
「ごめん! 不破と約束しているんだ」
「え、そうなんだ?」
半信半疑と言った感じで聞き返されて、俺は頷いて肯定した。
「じゃあ、また今度な」
そうして、何とかゼミ室を出ると、廊下に不破が立っていた。
「ん? 何?」
じっと見つめられて問うと、不破はゆっくりと口を開いた。
「僕との約束って」
そうだった。
今まさに目の前で、不破を出に使ったんだった。
「いや、別に……ちょっと話したいなって前から思っていて」
どうせ時間はないはずだ。
教授に素気無くしたんだから、俺のことも断るだろう。
すると、不破は首を傾げて「わかった」と言った。
「は?」
「佐倉と話す」
こうして俺は、不破と会話をすることになってしまう。
だが、今ここで続けるわけにはいかない。
もうすぐ、ゼミ室から同期が出てくるからだ。
不破との話がこんな場所で済むのなら、終わったら手伝えと言われそうだ。
「ええと、そうだな」
学内のカフェテリアだと遭遇しそうだ。
かといって、こいつと二人、どこに行っても気詰まりだろう。
その時だ。
「うちに、来る?」
「うちって?」
「僕のマンション、すぐそこだから」
不破の部屋に行く。
この3年間、数えるくらいしか言葉を交わしたことがないのに、突然部屋に押しかけていいものか。だが、本人が誘っているのだから、いいんだろう。この不破が、社交辞令を言うとも思えない。
それに、これ以上ここに留まるわけにもいかない。
「じゃあ、そうさせてもらおうかな」
引きつった笑顔で言うと、不破は頷いて先を歩き出した。
ついて来いってことなんだろう。
俺は、不破の背中を見ながら後ろを歩いた。
こうして見ると、バランスのいい身体をしている。
背は俺より少し低いが、175以上はあるだろう。
痩せている印象はあったが、肩幅はしっかりしている。
半袖シャツの袖から覗く腕も、華奢というほどではない。
ただ、筋肉はなさそうだ。
外で運動をしそうにないし、そのせいか色も白い。
じっと観察していると、突然足を止めた。
俺も同じように立ち止まったところで、くるりと俺を振り返る。
「ここ」
そうして、指差したのはアパートではなく、本当にマンションと呼ぶにふさわしい建物だった。
実家が太いのか。
まさか、金持ちなのかと直接は聞けない。
エレベーターで11階まで行き、不破は先に降りた。
俺も続いていくと、カードキーを翳してドアを開け、俺が入るのを待っている。
意外と気遣いのできるヤツなのかと思いながら、「お邪魔します」と言って部屋に入った。
ドアを開けた先には、ドアが3つ。
1Kの俺の部屋とは雲泥の差だ。
「もしかして、家族と同居?」
「いや、1人」
「あ、そう」
俺を追い抜き、真ん中のドアを開けたところで、広いリビングが見えた。
本当に、こんな広い部屋に一人で住んでいるのか。
そう思いながら通されるままにリビングに足を踏み入れる。
すると、壁の3方がすべて本棚になっていた。
しかも、ぎっしり本が並べられている。
「これ、全部読んだのか?」
聞いてすぐに、なんて頭の悪そうな質問だろうと思った。
「悪い、今のなし」
俺が腕でバツを描いて言うと、不破は頷いてキッチンの方へ歩いて行った。
そして、グラスを二つとペットボトルの麦茶を持って戻ってくる。
「これくらいしかない」
「いいよ。充分だ」
ちょうど喉が渇いていたから、麦茶は助かる。
俺がソファに座ると、不破はその傍の床に座った。
ラグが敷いてあるとはいえ、そんなところじゃなくて隣に座れば良くないか?
「不破、ここ座れよ」
不破は俺を振り仰ぎ、押し黙る。
奇妙な間が生まれて、俺は言葉を選んで言い直す。
「見下ろしていると話しづらいから、隣に座ってほしい」
「わかった」
そして、床から立ち上がると、ソファの一番端に座った。
そんなに近付きたくないのなら、なぜ部屋に誘ったんだろうか。
俺は不可解に思いながら、麦茶を一口飲んだ。
「それで、話って」
「あ、ああ、そっか」
そういえば、話があると言った結果がこれなんだっけ。
俺は、額を指先でトントンと叩き、話題を探した。
だが、何も浮かんでこない。
そこで、ふと女子たちの話を思い出した。
──「不破くんって、血液型何型だと思う?」
──「Aじゃない?」
──「あの我が道を行く感じは、B型だと思うけどな」
俺は、頭に浮かんだその質問を、そのまま不破にぶつけた。
「不破ってさ、血液型何型?」
「どうして」
「……え?」
もしかして、血液型の話は地雷だったか?
最近、「ブラハラ」という言葉もあると聞く。
ブラッドタイプハラスメントの略で、血液型で差別をすることだ。
そんなつもりはなかったが、これは指摘されても仕方がない。
「いやあ、不破のことをもっと知りたくなったから、かな」
嘘ではない。
女子の言葉もそうだが、あまり自分のことを語らない不破に興味はある。
普段何を食っていれば、そんなに頭が良くなるのかとか。
何が楽しくて生きているのかとか。
聞きたいことは、山のようにある。
なら、それを1つ1つ聞いていくのも悪くない。
これは、最初の話題が悪かっただけで、話の方向性としてはまだ挽回できる。
そうやって一人で次の質問を考えている間、不破はただじっと俺を見ていた。
前髪で隠れて見えていなかったが、色素の薄い虹彩をしている。
陽が射し込むと、ますます茶色がかって見える。
肌の白さも相俟って、日本人離れしているように見えなくもない。
ソファに座り、向かい合って見つめるというのは、同期同士であってもなかなかないことだ。
これで相手が女子なら、恋のきっかけにならなくもない。
だが、相手は不破だ。
きっと、話と言いながらどうでもいいことを聞いた俺を、正直胡散臭く思っているに違いない。
「僕もだ」
突然、不破はそう言った。
前後の文脈がわからず、俺は自分のさっき言った台詞を反芻しようとした。
だが、その前に、不破は身を乗り出してきた。
「佐倉のこと、もっと知りたいと思っていた」
淡々とした喋り方だが、妙に胸に響く。
さっき俺が口にしたのと変わらないセリフのはずだ。
それなのに、どくりと心臓が跳ねた。
「付き合って、くれますか」
いきなり敬語で聞かれて、微妙に引っ掛かりを覚えた。
だが、特段断る理由もない。
「ああ、付き合うよ。今日は──」
俺は、そこで言葉を失った。
今日は無理でも、明日なら付き合える。
そう続けようと思っていた。
だが、不破は俺の手に手を重ねてきた。
微かに震える、冷たい指先。
俺の双眸を覗き込む瞳も揺れている。
顔色は変わっていないが、俺に向けられた直向きな眼差しが、すべてを物語っていた。
「……俺、男だけど」
「知ってる」
返ってきた声には温度がなく、やっぱりいつもの不破のものだ。
それなのに、俺の頬は火照り出し、何か言おうと開いた唇がわなないた。
不破の視線がわずかに下がり、俺の口元を見た。
「キスしていい?」
今度ははっきりと、何を望まれているのかがわかる。
不破が、俺とキスをしたがっている。
頭が良くて、人付き合いが下手くそで、何考えているか分からなくて。
キスをする理由なんて、何一つない。
それなのに俺は、瞬きを繰り返す不破の目を見つめたまま頷いた。
不破は、俺の方へと身を寄せて顔を傾けると、唇に唇を押し当てて来た。
触れ合わせるだけのキスは、瞬き一つくらいの長さだった。
顔を離し、元の位置に座りかけた不破に、俺は呼びかけた。
「お前さ」
不破はさっきと同じ、何を考えているかわからない目をして、俺の言葉を待っている。
「キスの仕方くらい、調べてから誘えよ」
どうして、そんな気が起きたかわからない。
俺は、ソファから腰を浮かせて、不破の上に覆いかぶさった。
真上から顔を覗き込み、反応の薄い不破が目を瞠っているのに気が付いた。
もっと不破の違う顔が見たい。
顔色を変えて、慌てたり怒ったり。
そういう、感情的になっている不破を見てみたい。
俺は、右手で不破の頬に触れ、輪郭に沿って撫でた。
二度目のキスは、俺からした。
唇を重ね、軽くした唇を啄むと、さすがに不破は驚いたらしい。
微かに唇を開いたところで、その狭間をちろりと舌先で舐める。
身体を硬直させ、身動ぎすらできないでいる不破に、俺はキスを仕掛けた。
口の中に舌を入れ、不破の舌と触れ合わせる。
びくりと身体が跳ね、舌が逃げる。
俺はそれを絡め取って、吸い上げた。
「ん……う……」
声が鼻に抜け、甘えたような響きとなった。
不破には似合わない、温度のある声。
「……さ、くら」
キスの合間に名前を呼ばれて、余計に俺は興奮した。
頬に触れていた手を滑らせて、その首筋にも触れる。
滑らかな肌の感触に、そこにもキスをしたくなる。
男の不破相手に、俺は欲情していた。
ここで止めなくては、取り返しのつかないことになる。
今ならまだ、冗談だと言って笑って誤魔化せるだろう。
だが、その次の瞬間、不破は俺の首筋に腕を伸ばして引き寄せた。
キスが深くなり、唾液の音がするほどに激しくなった。
息を乱して、不破は俺にキスをしてくる。
ここまでされて、止められるわけがない。
俺は、シャツの上から不破の身体を弄り、それでも飽き足らず前ボタンを開けた。
はだけたシャツの中に手を入れて、胸元を撫で、キスを解いて首筋に顔を埋める。
「ん……は……っ」
堪らずといった風な、不破の声がした。
もっと聞きたくて、胸元にもキスをし、肌を舐めた。
顔を上げて不破を見ると、ぎゅっと目を瞑って耐えていた。
キスすらしたことがなかった不破だ。
男に抱かれたことなんてないはずだ。
それは、俺も同じだ。
第一、男に興奮したのだって、これが初めてだ。
「不破、触りっこしないか?」
「さわり、っこ」
目を開けて俺を見上げ、不破は繰り返した。
わからない時の不破の癖なのだとわかって、俺はくすりと笑う。
「俺が不破に触るから、同じように俺に触って」
「わかった」
そして、俺は順番に不破に触った。
肩から腕、無唸元から腹、下腹から股間。
ズボンの上から触れると、不破のモノの存在が感じられた。
不破も、躊躇いがちに俺の股間に触った。
それまで俺を見ていた目が、股間を見下ろした後、驚きに見開かれる。
「勃起、してる」
感嘆したように言われて、俺は不破の股間を掴んだ。
「不破だって、してるじゃないか」
「……僕は、いいんだ」
「いいって?」
どういう意味かと聞き返すと、目を伏せて答えた。
「君が、好きだから……勃起は自然だ」
その理屈だと、好きでもない自分に勃起している俺は、不自然ということになる。
それは、否定しない。
俺だって、自分の身体に起きた変化が信じられない。
「キス、していい?」
「さっきもしたんだから、今更許可なんて」
「違う。──ここに」
そう言って、不破は俺の股間をぐっと押した。
「お前さ、俺のモノなんて咥えられるのか?」
「できる」
わざと卑猥な言葉を選んだのに、不破は即答した。
「じゃあ、いいよ。しても。ただし、俺もする」
「……ちょっと、待って」
不破は腰を引き、俺の手から逃れようとする。
慌てているのだとわかって、俺はなぜか嬉しくなった。
「待たない。お前のもの、咥えて舐めてしゃぶってやるよ」
「──っ」
ひゅっと喉が鳴り、声さえも出なかった。
俺に反応する不破に興奮を覚えて、忙しなく手を動かしてズボンとパンツをずり下げる。
完全に勃ち上がったモノが、不破が男だと主張してくる。
それなのに、何を俺はこんなに興奮しているのだろう。
「佐倉、駄目だ」
「駄目じゃない」
「するのは、僕だ。君に、そんなこと……させられない」
「俺がしたいんだよ」
俺は不破のモノを握り、軽く扱いた。
「あ……っ佐倉……」
ビクビクと身体が震えて、今にも達しそうになっているのが伝わってくる。
俺は床に座り、不破の先端にキスをした。
ちゅっちゅっとわざと音を立てて口付けると、不破は自分の口元を手で塞ぐ。
俺はその様子を、上目遣いで見ながら、モノに舌を這わせた。
「駄目……佐倉……まずい」
不破は、ぐっと息を呑み、ふるりと全身を震わせる。
その様子を見て、初めて不破を可愛いと思った。
もっと追い詰めて、不破を興奮させて、イかせてみたい。
不破はどんな顔でイくんだろう。
俺の興奮をよそに、不破は止めようとしてか俺の胸を押し返した。
俺はその手を逆に捕えて、押さえ込む。
やったことはないが、要は自分がしてもらいたいように感じる場所を刺激すればいい。
モノの先端を舐め、裏筋を舌で辿り、口の中まで呑み込む。
「はう……っんん……んっ……」
漏れ聞こえる声が、あまりにも可愛すぎる。
このまま、イかせたい。
出てきた唾液を啜って飲んだ瞬間、生温かいものがどっと口に溢れた。
不破がイったのだとわかり、俺はモノを口から出して、伸び上がった。
不破は、顔を真っ赤にして、荒い呼吸を繰り返している。
俺の視線に気付き、目を硬く閉じたところで、こめかみを涙が伝った。
俺は、呆気に取られて、口の中に放たれた精液を飲み下した。
ごくりと喉が鳴り、その音を聞きつけたのか、不破が再び目を開ける。
「飲んだ、のか」
「うん、飲んじゃった」
不破は固まり、唖然としている。
その様子がまたおかしくて、俺は喉の奥で低く笑った。
俺の声につられるように、不破も吐息で笑う。
「お前、可愛いな」
思ったことを口にした俺に、不破は顔を赤くしている。
舐めしゃぶられ、イってしまったことよりも、可愛いと言われたことの方が恥ずかしいのか。
俺は、不破の頭に触り、乱れた髪を撫でた。
そして、ぽんぽんと頭を軽く叩いて、間近からひたりと目を見据える。
「付き合おう。本気で」
「本気」
不破は、俺の言葉を繰り返す。
俺は、頷いてから続けた。
「次は、抱くから」
俺の言葉に、不破は一度開いていた口を閉じて考え込んだ。
もしかして、それは嫌なのか。
互いに黙ってから数秒後に不破は言った。
「調べて、おく」
俺は、一瞬目を瞠った後、我慢しきれなくて声に出して笑った。
-END-
これは、そのうち停電するんじゃないかと、俺は天井を見上げながら思っていた。
「では、次回の発表者は──」
「はい、俺です」
ゼミ生の顔を追っていた教授に向けて、俺は手を上げた。
「ええと、君は……桜井くんだったか」
惜しい!
と言いたいところだが、相手は教授だ。
ここで笑いを取るわけにはいかない。
「佐倉です」
きっと今、樹木の方の桜が思い浮かんでいるんだろうなと思ったが、俺はただニコニコと笑う。
「そうか。レジュメは2日前までにメールで送るように」
「はい、わかりました」
残り1週間もあれば、発表原稿は準備できるはずだ。
余裕でメールを送れるだろうと、俺は返事をした。
そして、次の講義に行こうと席を立ったところで、「ああ、そうだ」と教授は続ける。
「不破くん」
名前を呼んだ相手は、俺の同期だ。
どうやら、そっちの顔と名前はしっかり覚えているらしい。
それはそうだろう。向こうは、卒業後は研究室に残る人間だ。
学部卒で就職しようとしている俺とは扱いが違って当然だ。
不破は、二年の時に既に学会でポスター発表し、既に卒業論文を書き始めていると噂されている優秀な学生だ。
見た目はパッとしないが、将来有望だということで同期の間でも人気がある。
名前を呼ばれるとペンをしまう手を止めて、教授の方を見る。
だが、返事はしない。
こういうところが、不破が「不和」と影で揶揄される原因となっている。
だが、教授の方では気にならないのか、続けて言う。
「この後、時間はあるかね」
「ありません」
今度は即答だ。
いや、教授は時間の有る無しを純粋に聞いているわけじゃない。
用事があるから残れと言っているんだ。
俺は他人事ながら、ハラハラして成り行きを見守っていた。
「おい、佐倉、聞いていたか?」
「ん? 何?」
不和と教授のやり取りに気を取られて、俺は同期の話を聞いていなかった。
「この後、実習の準備をするから、ちょっと手伝ってもらえないか?」
実習というのは、教育実習のことだ。
母校に戻って教壇に立つわけだが、それは来年のことで、別に今からやる必要はない。
要するに、自主勉強みたいなものだ。
ここで不破みたいに、「時間がない」と言えればどんなにいいだろう。
「あー……」
何か用事は見つからないかと脳をフル稼働させ、俺は微笑んだ。
「ごめん! 不破と約束しているんだ」
「え、そうなんだ?」
半信半疑と言った感じで聞き返されて、俺は頷いて肯定した。
「じゃあ、また今度な」
そうして、何とかゼミ室を出ると、廊下に不破が立っていた。
「ん? 何?」
じっと見つめられて問うと、不破はゆっくりと口を開いた。
「僕との約束って」
そうだった。
今まさに目の前で、不破を出に使ったんだった。
「いや、別に……ちょっと話したいなって前から思っていて」
どうせ時間はないはずだ。
教授に素気無くしたんだから、俺のことも断るだろう。
すると、不破は首を傾げて「わかった」と言った。
「は?」
「佐倉と話す」
こうして俺は、不破と会話をすることになってしまう。
だが、今ここで続けるわけにはいかない。
もうすぐ、ゼミ室から同期が出てくるからだ。
不破との話がこんな場所で済むのなら、終わったら手伝えと言われそうだ。
「ええと、そうだな」
学内のカフェテリアだと遭遇しそうだ。
かといって、こいつと二人、どこに行っても気詰まりだろう。
その時だ。
「うちに、来る?」
「うちって?」
「僕のマンション、すぐそこだから」
不破の部屋に行く。
この3年間、数えるくらいしか言葉を交わしたことがないのに、突然部屋に押しかけていいものか。だが、本人が誘っているのだから、いいんだろう。この不破が、社交辞令を言うとも思えない。
それに、これ以上ここに留まるわけにもいかない。
「じゃあ、そうさせてもらおうかな」
引きつった笑顔で言うと、不破は頷いて先を歩き出した。
ついて来いってことなんだろう。
俺は、不破の背中を見ながら後ろを歩いた。
こうして見ると、バランスのいい身体をしている。
背は俺より少し低いが、175以上はあるだろう。
痩せている印象はあったが、肩幅はしっかりしている。
半袖シャツの袖から覗く腕も、華奢というほどではない。
ただ、筋肉はなさそうだ。
外で運動をしそうにないし、そのせいか色も白い。
じっと観察していると、突然足を止めた。
俺も同じように立ち止まったところで、くるりと俺を振り返る。
「ここ」
そうして、指差したのはアパートではなく、本当にマンションと呼ぶにふさわしい建物だった。
実家が太いのか。
まさか、金持ちなのかと直接は聞けない。
エレベーターで11階まで行き、不破は先に降りた。
俺も続いていくと、カードキーを翳してドアを開け、俺が入るのを待っている。
意外と気遣いのできるヤツなのかと思いながら、「お邪魔します」と言って部屋に入った。
ドアを開けた先には、ドアが3つ。
1Kの俺の部屋とは雲泥の差だ。
「もしかして、家族と同居?」
「いや、1人」
「あ、そう」
俺を追い抜き、真ん中のドアを開けたところで、広いリビングが見えた。
本当に、こんな広い部屋に一人で住んでいるのか。
そう思いながら通されるままにリビングに足を踏み入れる。
すると、壁の3方がすべて本棚になっていた。
しかも、ぎっしり本が並べられている。
「これ、全部読んだのか?」
聞いてすぐに、なんて頭の悪そうな質問だろうと思った。
「悪い、今のなし」
俺が腕でバツを描いて言うと、不破は頷いてキッチンの方へ歩いて行った。
そして、グラスを二つとペットボトルの麦茶を持って戻ってくる。
「これくらいしかない」
「いいよ。充分だ」
ちょうど喉が渇いていたから、麦茶は助かる。
俺がソファに座ると、不破はその傍の床に座った。
ラグが敷いてあるとはいえ、そんなところじゃなくて隣に座れば良くないか?
「不破、ここ座れよ」
不破は俺を振り仰ぎ、押し黙る。
奇妙な間が生まれて、俺は言葉を選んで言い直す。
「見下ろしていると話しづらいから、隣に座ってほしい」
「わかった」
そして、床から立ち上がると、ソファの一番端に座った。
そんなに近付きたくないのなら、なぜ部屋に誘ったんだろうか。
俺は不可解に思いながら、麦茶を一口飲んだ。
「それで、話って」
「あ、ああ、そっか」
そういえば、話があると言った結果がこれなんだっけ。
俺は、額を指先でトントンと叩き、話題を探した。
だが、何も浮かんでこない。
そこで、ふと女子たちの話を思い出した。
──「不破くんって、血液型何型だと思う?」
──「Aじゃない?」
──「あの我が道を行く感じは、B型だと思うけどな」
俺は、頭に浮かんだその質問を、そのまま不破にぶつけた。
「不破ってさ、血液型何型?」
「どうして」
「……え?」
もしかして、血液型の話は地雷だったか?
最近、「ブラハラ」という言葉もあると聞く。
ブラッドタイプハラスメントの略で、血液型で差別をすることだ。
そんなつもりはなかったが、これは指摘されても仕方がない。
「いやあ、不破のことをもっと知りたくなったから、かな」
嘘ではない。
女子の言葉もそうだが、あまり自分のことを語らない不破に興味はある。
普段何を食っていれば、そんなに頭が良くなるのかとか。
何が楽しくて生きているのかとか。
聞きたいことは、山のようにある。
なら、それを1つ1つ聞いていくのも悪くない。
これは、最初の話題が悪かっただけで、話の方向性としてはまだ挽回できる。
そうやって一人で次の質問を考えている間、不破はただじっと俺を見ていた。
前髪で隠れて見えていなかったが、色素の薄い虹彩をしている。
陽が射し込むと、ますます茶色がかって見える。
肌の白さも相俟って、日本人離れしているように見えなくもない。
ソファに座り、向かい合って見つめるというのは、同期同士であってもなかなかないことだ。
これで相手が女子なら、恋のきっかけにならなくもない。
だが、相手は不破だ。
きっと、話と言いながらどうでもいいことを聞いた俺を、正直胡散臭く思っているに違いない。
「僕もだ」
突然、不破はそう言った。
前後の文脈がわからず、俺は自分のさっき言った台詞を反芻しようとした。
だが、その前に、不破は身を乗り出してきた。
「佐倉のこと、もっと知りたいと思っていた」
淡々とした喋り方だが、妙に胸に響く。
さっき俺が口にしたのと変わらないセリフのはずだ。
それなのに、どくりと心臓が跳ねた。
「付き合って、くれますか」
いきなり敬語で聞かれて、微妙に引っ掛かりを覚えた。
だが、特段断る理由もない。
「ああ、付き合うよ。今日は──」
俺は、そこで言葉を失った。
今日は無理でも、明日なら付き合える。
そう続けようと思っていた。
だが、不破は俺の手に手を重ねてきた。
微かに震える、冷たい指先。
俺の双眸を覗き込む瞳も揺れている。
顔色は変わっていないが、俺に向けられた直向きな眼差しが、すべてを物語っていた。
「……俺、男だけど」
「知ってる」
返ってきた声には温度がなく、やっぱりいつもの不破のものだ。
それなのに、俺の頬は火照り出し、何か言おうと開いた唇がわなないた。
不破の視線がわずかに下がり、俺の口元を見た。
「キスしていい?」
今度ははっきりと、何を望まれているのかがわかる。
不破が、俺とキスをしたがっている。
頭が良くて、人付き合いが下手くそで、何考えているか分からなくて。
キスをする理由なんて、何一つない。
それなのに俺は、瞬きを繰り返す不破の目を見つめたまま頷いた。
不破は、俺の方へと身を寄せて顔を傾けると、唇に唇を押し当てて来た。
触れ合わせるだけのキスは、瞬き一つくらいの長さだった。
顔を離し、元の位置に座りかけた不破に、俺は呼びかけた。
「お前さ」
不破はさっきと同じ、何を考えているかわからない目をして、俺の言葉を待っている。
「キスの仕方くらい、調べてから誘えよ」
どうして、そんな気が起きたかわからない。
俺は、ソファから腰を浮かせて、不破の上に覆いかぶさった。
真上から顔を覗き込み、反応の薄い不破が目を瞠っているのに気が付いた。
もっと不破の違う顔が見たい。
顔色を変えて、慌てたり怒ったり。
そういう、感情的になっている不破を見てみたい。
俺は、右手で不破の頬に触れ、輪郭に沿って撫でた。
二度目のキスは、俺からした。
唇を重ね、軽くした唇を啄むと、さすがに不破は驚いたらしい。
微かに唇を開いたところで、その狭間をちろりと舌先で舐める。
身体を硬直させ、身動ぎすらできないでいる不破に、俺はキスを仕掛けた。
口の中に舌を入れ、不破の舌と触れ合わせる。
びくりと身体が跳ね、舌が逃げる。
俺はそれを絡め取って、吸い上げた。
「ん……う……」
声が鼻に抜け、甘えたような響きとなった。
不破には似合わない、温度のある声。
「……さ、くら」
キスの合間に名前を呼ばれて、余計に俺は興奮した。
頬に触れていた手を滑らせて、その首筋にも触れる。
滑らかな肌の感触に、そこにもキスをしたくなる。
男の不破相手に、俺は欲情していた。
ここで止めなくては、取り返しのつかないことになる。
今ならまだ、冗談だと言って笑って誤魔化せるだろう。
だが、その次の瞬間、不破は俺の首筋に腕を伸ばして引き寄せた。
キスが深くなり、唾液の音がするほどに激しくなった。
息を乱して、不破は俺にキスをしてくる。
ここまでされて、止められるわけがない。
俺は、シャツの上から不破の身体を弄り、それでも飽き足らず前ボタンを開けた。
はだけたシャツの中に手を入れて、胸元を撫で、キスを解いて首筋に顔を埋める。
「ん……は……っ」
堪らずといった風な、不破の声がした。
もっと聞きたくて、胸元にもキスをし、肌を舐めた。
顔を上げて不破を見ると、ぎゅっと目を瞑って耐えていた。
キスすらしたことがなかった不破だ。
男に抱かれたことなんてないはずだ。
それは、俺も同じだ。
第一、男に興奮したのだって、これが初めてだ。
「不破、触りっこしないか?」
「さわり、っこ」
目を開けて俺を見上げ、不破は繰り返した。
わからない時の不破の癖なのだとわかって、俺はくすりと笑う。
「俺が不破に触るから、同じように俺に触って」
「わかった」
そして、俺は順番に不破に触った。
肩から腕、無唸元から腹、下腹から股間。
ズボンの上から触れると、不破のモノの存在が感じられた。
不破も、躊躇いがちに俺の股間に触った。
それまで俺を見ていた目が、股間を見下ろした後、驚きに見開かれる。
「勃起、してる」
感嘆したように言われて、俺は不破の股間を掴んだ。
「不破だって、してるじゃないか」
「……僕は、いいんだ」
「いいって?」
どういう意味かと聞き返すと、目を伏せて答えた。
「君が、好きだから……勃起は自然だ」
その理屈だと、好きでもない自分に勃起している俺は、不自然ということになる。
それは、否定しない。
俺だって、自分の身体に起きた変化が信じられない。
「キス、していい?」
「さっきもしたんだから、今更許可なんて」
「違う。──ここに」
そう言って、不破は俺の股間をぐっと押した。
「お前さ、俺のモノなんて咥えられるのか?」
「できる」
わざと卑猥な言葉を選んだのに、不破は即答した。
「じゃあ、いいよ。しても。ただし、俺もする」
「……ちょっと、待って」
不破は腰を引き、俺の手から逃れようとする。
慌てているのだとわかって、俺はなぜか嬉しくなった。
「待たない。お前のもの、咥えて舐めてしゃぶってやるよ」
「──っ」
ひゅっと喉が鳴り、声さえも出なかった。
俺に反応する不破に興奮を覚えて、忙しなく手を動かしてズボンとパンツをずり下げる。
完全に勃ち上がったモノが、不破が男だと主張してくる。
それなのに、何を俺はこんなに興奮しているのだろう。
「佐倉、駄目だ」
「駄目じゃない」
「するのは、僕だ。君に、そんなこと……させられない」
「俺がしたいんだよ」
俺は不破のモノを握り、軽く扱いた。
「あ……っ佐倉……」
ビクビクと身体が震えて、今にも達しそうになっているのが伝わってくる。
俺は床に座り、不破の先端にキスをした。
ちゅっちゅっとわざと音を立てて口付けると、不破は自分の口元を手で塞ぐ。
俺はその様子を、上目遣いで見ながら、モノに舌を這わせた。
「駄目……佐倉……まずい」
不破は、ぐっと息を呑み、ふるりと全身を震わせる。
その様子を見て、初めて不破を可愛いと思った。
もっと追い詰めて、不破を興奮させて、イかせてみたい。
不破はどんな顔でイくんだろう。
俺の興奮をよそに、不破は止めようとしてか俺の胸を押し返した。
俺はその手を逆に捕えて、押さえ込む。
やったことはないが、要は自分がしてもらいたいように感じる場所を刺激すればいい。
モノの先端を舐め、裏筋を舌で辿り、口の中まで呑み込む。
「はう……っんん……んっ……」
漏れ聞こえる声が、あまりにも可愛すぎる。
このまま、イかせたい。
出てきた唾液を啜って飲んだ瞬間、生温かいものがどっと口に溢れた。
不破がイったのだとわかり、俺はモノを口から出して、伸び上がった。
不破は、顔を真っ赤にして、荒い呼吸を繰り返している。
俺の視線に気付き、目を硬く閉じたところで、こめかみを涙が伝った。
俺は、呆気に取られて、口の中に放たれた精液を飲み下した。
ごくりと喉が鳴り、その音を聞きつけたのか、不破が再び目を開ける。
「飲んだ、のか」
「うん、飲んじゃった」
不破は固まり、唖然としている。
その様子がまたおかしくて、俺は喉の奥で低く笑った。
俺の声につられるように、不破も吐息で笑う。
「お前、可愛いな」
思ったことを口にした俺に、不破は顔を赤くしている。
舐めしゃぶられ、イってしまったことよりも、可愛いと言われたことの方が恥ずかしいのか。
俺は、不破の頭に触り、乱れた髪を撫でた。
そして、ぽんぽんと頭を軽く叩いて、間近からひたりと目を見据える。
「付き合おう。本気で」
「本気」
不破は、俺の言葉を繰り返す。
俺は、頷いてから続けた。
「次は、抱くから」
俺の言葉に、不破は一度開いていた口を閉じて考え込んだ。
もしかして、それは嫌なのか。
互いに黙ってから数秒後に不破は言った。
「調べて、おく」
俺は、一瞬目を瞠った後、我慢しきれなくて声に出して笑った。
-END-
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