39 / 58
第四章
05
しおりを挟むふと、部屋の中を見渡してみる。
「…私の部屋じゃない」
「あぁ、俺とサフィの部屋だ」
ボソリと呟いた言葉を拾った騎士の返事に聞き間違えかと顔を上げて騎士を見る。
「どうした、そんな顔をして」
私よりも先に着替えを済ませかけている騎士の服装をみて、まだ夢の中なのかと目をつぶってみる。
「サフィ」
目を開ければ、私の顔を覗き込む騎士が目の前にあった。
「騎士、どうして兄様みたいな格好をしているの?」
「…あぁ、サフィは知らなかったか。俺もお前の兄ヘンリーと同様この国を継ぐ者だ」
騎士は何を言ってるの?
「この国って?」
「ここは、リヴォルノ王国だ」
その言葉に、血の気が引く
リヴォルノ王国とはエドウィー王子の国よりも数十倍大きく、争いごとが大好きな王が領土を広げるために1つずつ近くから周りと戦争をして負けた国を吸収していっている未だなお戦争の絶えない国と聞いている。
騎士がその国の跡継ぎってどういうことなの?
貴方は、王族ではなく貴族ではないの?
「サフィ、どの様にこの国を学んだか知らんが案ずるな。この国の中での争いごとは父上の代で終わっている。これから、サフィと俺でこの国をつくっていくんだ。」
貴方は、何を言ってるの?
「国を、つくっていく?」
「あぁ」
私の横髪にキスをして、また両瞼へキスを軽くおとす。
「ねぇ騎士…ユーグスは、騎士では無いの?」
「…父上がいた頃、戦争に駆り出されていた時に騎士として戦うことを命じられていた、その上で俺がこの国の跡取りだと知られれば戦っている相手が何十倍にも膨らみ命がいくつあっても足らないからな。」
地べたに膝をつき、私の胸元へ顔を埋めるように抱きしめながら話す騎士
ここで初めて聞く言葉を聞けば誤魔化さず答えてくれるが、今までの時間はなんだったのか。私は何も知らなくて、もう何を信じればいいのかとサランのことがあった後に1番信頼していた騎士に何故か裏切られた気がして心に穴がぽっかり空いたように虚しくなる。
「…そう。」
「サフィ、俺にはお前しかいない」
まるで、捨てないでくれと言わんばかりに顔を上げて私を見つめて主張する。
「私は…もう、帰れないの?」
遠回しの返事のようになってしまったが、家族のいる城へ帰りたいと思う気持ち、自分の慣れ親しんだ部屋に閉じこもって頭の中を整理したい気持ちが無いわけでは無い。
「…サフィ、俺はお前と二人だけの世界があるならこの国を捨てたっていい。だがあそこにはサフィと俺の世界を邪魔する奴らしかいない。もし、帰りたいと言うのであればあの城に住まう邪魔者を処刑した上でなら一緒に帰ろう。」
二人だけの世界って、なに
邪魔者って、なに?
「私の家族は…」
「あんな邪魔者をサフィの近くに置いておくわけが無いだろう。」
この男には、心がないのだろうか?
今までずっと、息子のように接してきたお父様やお母様、兄さんたちだって騎士を慕い友情を育んできたのではないの、家族の一員のように接してきたんじゃないの?
それなのに、何を言ってるの?
0
あなたにおすすめの小説
わんこ系婚約者の大誤算
甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。
そんなある日…
「婚約破棄して他の男と婚約!?」
そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。
その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。
小型犬から猛犬へ矯正完了!?
主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?
玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。
ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。
これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。
そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ!
そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――?
おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!?
※小説家になろう・カクヨムにも掲載
幼馴染の許嫁
山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる