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最終章
15
しおりを挟む誓います。と言えなかった私の心は置いてけぼりのまま、ペアリングを互いの指にはめることに加え、代々受け継がれているというこの国の王妃様のティアラへの交換が行われたりと神父は待てましたと言わんばかりに次へと進める。
ユーグス陛下は片手だけだった手を両手で握りしめていつキスをしてもおかしくない程の位置で私を見つめている。
まるで私と二人だけの世界が存在しているかのように瞳の中に私を映して微笑んでいる。
全て嘘だったと言ってくれればいいのに。
神父が何かを合図として発した。
私の耳は聞こえるはずなのに、まるで水中で話しかけられているかのように聞こえが悪くなる。
だけれど神父の合図でユーグス陛下が少し空いていた私との距離をゼロにした事で、おおよそ見当がついた。
あぁ、誓のキスをするのね。
片手で私の顎に触れて上に顔を向かせる。
ゆっくりとユーグス陛下の顔がアップになり整ったお顔だと関心している場合ではないのでしょうけど、避けることが出来ないようにいつの間にか両手は自由だけど腰を支えられ顎をしっかり持たれている。
唇と唇がゆっくり重なり合う
周りからの拍手でまるで耳の中にあったシャボン玉が弾けたように、クリアな音で周りの声が聞こえるようになった。
祝福の言葉も聞こえてくるが、素直に喜べない
なんだかとても長い時間ユーグス陛下とキスをしているような気持ちになるが押しのけることが出来ないので、鼻で上手くできない呼吸をする。
やっと、ゆっくりドアップだった顔が離れて行く
肩で息をしていると、愛おしそうな目でクスクスと小さく笑いながら「大丈夫か?」なんて私だけに聞こえる声で話をふられる。
『大丈夫なわけないじゃない!』
喋ることも煩わしい気持ちになるが表情に出さないように首を縦に小さく振る。
その後のことは、まるで他人事のような感覚で進行を見ていた。
笑顔を作る気にもなれなくて下を向きがちな私から1度も離れることなくユーグス陛下が全て受け答えをしてくれていた。
全ては業務的で淡々としていて、参加者もこの機会に繋がりを深めておきたいと名ばかりな挨拶、本来なら二次、三次と祝宴会が行われるのであろうけれど、結婚式の後に食事をして解放となった。
私の腰を抱いたまま他国の王様たちにお別れの挨拶をする。
その次に貴族達と決められた階級順で挨拶を軽く行いながら退場扉へと1歩、1歩、近付いて行く。
私が何かをしないでいいようにユーグス陛下が客席側に立ち会話を全て受け持ってくれている状態で、最後扉の前で一礼を一緒にしてタイミングを測った兵士が扉を開いてくれたのでそのまま外へと1歩踏み出し、扉が閉まるまで軽い例をしたまま固まる。
その間も鳴り止まない拍手に会館は包まれていた。
…とうとう彼と結婚してしまったのね。
明日からは泣くことを我慢するので、どうか今日だけは涙をとめどなく流すことをお許しください。
誓う相手は自分だけ。
メイドたちにウエディングドレスの裾を持って貰いながら、ユーグス陛下の腕に手を添えて来た道を戻りながらなるべく何処に何があるのか見取り図も無いが頭に入れる。
絶望して終わる人生なんて嫌よ。
きっと、誰も死なずに逃げ道はある筈
いつかこの国から、ユーグス陛下から逃げて母国へ帰る日を諦めなどしないわ。
そう心に決めてーーーー
end..
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