2 / 8
謎の鉄骨塔
しおりを挟む一瞬目を閉じた、そのすぐさま数分の時も刻まずに気配を感じ目を開ければ、鉄骨に自分の後ろに立っている人物が反射して見えたのは、よく見知っている肩まである赤髪の顔立ちの整った青年だった。
その一瞬の判断で彼がいることへの驚きと共に、自然と身体がビックとなって俺は、あの人に対する恐怖心に比べればそこまで怖くはないというだけで、脳内の警告音が赤髪の彼からすぐに逃げろと鳴り響く。
直ぐに行動を移そうと身体に力を入れた瞬間、逃げる隙もなく腕を掴まれ向き合わされる。
「お前の兄貴が待ってる、お前はあいつからは絶対に逃げられない。一緒に来い。」
なんの確信を得てこいつは言ってんだと、一瞬目を見開くが、自信でもあり絶対そうだと有無を言わさせないオーラを見にまとった赤髪の彼から目を離すこともできず、無言で見いやる。
その言葉は俺にとって最終通達でしかない。絶望を感じながらも、なんの抵抗にもならないだろうが意志を伝えるために「い、いやだ。」と言ったのにまるで見えない糸で操られているかのように、なぜか体がいうことを聞かず、赤髪の彼の後ろをふらふらと自前の黒い羽を広げてついて行くが、一日にしては、もう3日以上の時間を過ごしたと思えるどの疲労を伴ったような気持ちで足取りが重くなる。
この塔に着く前まで狂った我が姉との鬼ごっことかくれんぼで、鬼は当然姉であり本気の力で殺しにかかってくるのを必死で逃れ対抗した後ということもあり、全身傷だらけの血まみれでボロボロだったというのにあの人のいる場所に連れていかれるなんて、姉とは比べ物にならないくらいこれ以上酷い目に合いに行くなど地獄じゃないか。
そんな気持ちで自分の体を視界にいれれば黒のTシャツとジーパン。あれ程ボロボロになったはずなのに傷や血のシミはなく、いつの間に表面上の修復が行われたのか不思議に思いながらも、身体の気怠さ疲労感は消え去っていない エネルギーの無さの原因を思い返していた。
あれだけ闇が深いような螺旋状の鉄骨の外側に出て羽ばたいて風を切り急降下して行く間、自分の身なりを気にして先程までのことを振り返っていたがハッとすれば赤毛の彼は先に地面に降り立っていた。
数歩差で俺も地面に足をつけて赤色の彼の背中越しにこちらに向かってくるあの人を遠目に確認しながら、顔だけかるくこちらに向けて俺に「ついたぞ。」の一声をかけてくる。
0
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ラピスラズリの福音
東雲
BL
*異世界ファンタジーBL*
特別な世界観も特殊な設定もありません。壮大な何かもありません。
幼馴染みの二人が遠回りをしながら、相思相愛の果てに結ばれるお話です。
金髪碧眼美形攻め×純朴一途筋肉受け
息をするように体の大きい子受けです。
珍しく年齢制限のないお話ですが、いつもの如く己の『好き』と性癖をたんと詰め込みました!
《うちの子》推し会!〜いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます〜お月見編
日色
BL
明日から始まる企画だそうで、ぜひとも参加したい!と思ったものの…。ツイッターをやっておらず参加の仕方がわからないので、とりあえずこちらに。すみませんm(_ _)m
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる