ハンゲツ王国ものがたり

立菓

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記憶を辿って

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 ジョンとオズワルドがベンチに座ってからすぐ、トーコは駆け足でこちらに来るのが見えた。

「オズワルドさんっ! お父様っ! 遅くなって、ごめんなさい!」

 トーコがベンチの前まで来ると、息を切らしそうにして謝った。
 頭にティアラを付けたままだったからから、少しだけズレている。トーコは呼吸を落ち着かせようとしている間に、手でティアラを定位置に持ってこうとした。

 その時、オズワルドの視線を感じて、トーコはすぐに彼の方を見た。
 オズワルドはトーコと目が合うと、微笑みながらサラリと言葉を発した。

「……似合っている」

「へ……? そう? まあ、正装だと全身が重かったから、ティアラだけは部屋に置いておきたかったけど、時間が無かったかなぁ……」



 普段とは違うトーコの姿を見て、オズワルドは王宮の近衛兵だった頃を、自然と思い出したのだった。

 彼が近衛兵になったきっかけは、伯父の剣術教室に、偶然オスカーが訪れたことである。オズワルドは他の生徒よりも群を抜いて、剣の使い方が上手かったそうだ。
 それだけでは無い。元々体力がある上、誰よりも冷静で素早い判断ができるからであった。
 
 それらの理由があって、彼は十五歳の若さで、近衛兵になることを、オスカーから勧められた。


 しかし、オズワルドは王宮の生活に、なかなか慣れることができなかった。彼は元々、にぎやかな場所は非常に苦手であったからだ。

 また、他の近衛兵と比べて圧倒的に若かったからか、特務として国王陛下専任の護衛を頼まれた時期もあったためか、皮肉にも周りからは嫉妬しっとの対象となっていた。
 それ故、常にヒソヒソ話しながら遠巻きに見られたり、避けられたりして、完全に孤立していたのだった。

 彼の心が休まるのは、一人になれる時くらいだったから、普段は周りの目を気にし過ぎて、毎日何となくピリピリとしていた。


 そんなオズワルドだったが、気にかけていた人物が一人居た。
 慣れないティアラを頭に付け、長い丈のチュニカを着て、今にも泣きそうな顔で、王族が集まる食事会にヨロヨロと向かう幼い少女を、オズワルドは王宮の廊下ろうかで、繰り返し見かけたのだった。

 その少女の姿が、いまだに悲しい過去を引きずり、感情を殺すように過ごしていた

(声をかけてみたいが、彼女とは親しい関係じゃねーからな……)

 周りの人々が経験したことの無いような特殊な悩みを、彼女も抱えている気がして、どうしても目が離せなかった。


 時は流れ、ある日……。オズワルトは気にかけていた少女を、馬小屋の前で見かけた。
 その時、彼女は珍しく楽しそうに、馬の頭に優しく触れていたところだった。

(なんだ……、ちゃーんと笑えるじゃねーかっ!)



 それから、山岳警団に転職して数年が経ち、オズワルトは偶然、彼女と再会することになった。
 彼女の家に招かれた時、彼女は、昔に王宮の馬小屋で見かけた時と同じ笑顔を見せてくれた。思わず胸が高鳴って、何だか甘いような気持ちになったのだった。

綺麗きれいになったな……。あと、淡い思慕なんかじゃねーみたいだ、コレは――)

 その時、自分は彼女にかれているのだと、オズワルドは気が付いたのだった。

 体がボロボロになろうが、それでも構わない。彼女のためなら何だってしたいと、強く思わずにはいられなかった。



 だから今、、自分を夫として迎えてくれることとなり、オズワルドは本当に満たされる心情であった。

「俺の横に座って、少し休め」

「うん、ありがとう。……お父様っ! 報告が遅くなって、本当にごめんなさい……」

「いいんだよ、トーコ。本当に良かったね。……オズワルドくん、これからもトーコのことを頼むよ」

「もちろんです」
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