【完結】純白の魔法少女はその身を紅く染め直す

細木あすか(休止中)

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3:レンジュ大国管理部メンバー、ここに見参!

10:桜の焔が鋼に変わる時②

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「いったーい!先生、本当に手加減してくれないなんて!」

 ゆり恵は空中に放り出され、地面にお尻を打ってしまう。さっきの地割れで、服も汚れてボロボロだ。ここまでされると思っていなかった彼女が独り言をいうのも仕方ない。

「まことたちを探さないと……」

 といっても、全く知らない森の中。先ほどと同じような森なのだが、少しだけ何かが違うような気もする。そんな場所に放り出されてしまった。どこに向かっていけば良いのか、検討すらつかない。
 とりあえず、ここにいても仕方ないと言い聞かせ、ゆり恵は適当な方向へ歩き出す。

「にしても、ここってさっきの演習場なのかな……」

 演習場は広かったが、今いる森林よりははるかに小さかった。となると、これも幻術なのだろうか?鳥のさえずり、木々の揺らぎ、全てが本物のように感じる。
 ゆり恵は首をひねった。

「そのタフさが、桜田の強みだよな」

 歩いていると、目の前に突如風音が現れた。
 特に、視界が狭まっている場所でもないのに急に現れたため、ゆり恵の心臓がドクンと波打つように熱くなる。しかし、先ほどのように目を瞑ってはいけない。

「!?」

 驚いたゆり恵は、立ち止まると同時に簡易シールドを展開した。

「スパーク」

 それと同時に、彼の魔法がゆり恵に向かって飛んでいく。まっすぐに飛んでくるそれは、大事なはずの生徒の心臓に狙いが定められていた。

「あっ」

 かろうじて心臓を守るも、シールドを炎用に強化していたため電流が腕に伝ってしまう。炎魔法しか使わないと思っていたのだ。その見極めは、下界には難しい。
 その代償として、ゆり恵の左指が動かなくなってしまった。

「……っ」

 ゆり恵が左利きであることを、彼は知っていたらしい。彼女の瞳に、恐怖と痛みの涙が浮かぶ。ガクガクと膝が震えるも、それを助けてくれる人はいない。

「(殺される……どうにかしないと……)」

 今まで感じたことのない殺気に押され、弱気になってしまうゆり恵。今まで、1人で戦ったことはない。「チーム戦」と言ったのに、これでは嘘つきだ。そう叫びたいが、その声すら出ない様子。
 しかも、そろそろ展開したシールドが切れそうになっている。一生懸命思考を働かせても、次の行ってになり得る良い案が何も浮かばない。

「こうなったら!……血族技!召喚、桜吹雪!」

 彼女の血族技は、幻術タイプ。魔力消費が激しいので、あまり積極的に使いたいものではない。しかし、今はそう言ってられない。
 そう大きな声で叫ぶと、ピンク色の光がゆり恵を包んだ。

「!?」

 いや、周囲の木々や草花までもが光に包まれる。今まで召喚していたものと異なる出来事に焦るゆり恵。広がる光の中、周囲の木々が満開の桜に変化していく。桜の花びらの絨毯が、地面に敷き詰められた。ここまで拡大した血族技を展開させたことがない彼女は、驚きと喜びが混じった表情をする。

「なんか、調子良いかも……!」
「桜田一族の血族技ね……」

 ゆり恵の家系は、演舞一族。幻術に長けており、それを使った芸で生計を立てている。ゆえに、血族技も芸で使える類のもの。これは、戦闘でも十分使える代物である。

「こっちだってやられてるばかりじゃないわよ!」

 そう言うと、桜の花びらを浮かばせ風音の方へと投げつけた。桜が尖り、針のように彼へと突き刺さる。

「良いコントロールだね。魔力も安定してる」

 それを避けるわけでもなく、桜の花を身に受け入れる彼。その目元に血が走る。

「やった!」
「ただ、その隙が命取りだよ」

 血族技をしまい喜んだゆり恵に向かって、風音が素早く手をかざしてきた。次の瞬間、彼の繰り出すフィールドに閉じ込められてしまう。

「あ!!!」

 フィールドを叩くが、ビクともしない。壁が分厚く、外の声も一切聞こえない。
 それに、なんだかとても眠い。

 「(ゲームオーバー。しばらく寝ててよ)」

 フィールドの中で声が響いた。風音のテレパシーだ。魔力が強いのか、かなりはっきりと聞こえてくる。
 ここまでよく聞こえるテレパシーを受け取ったことがないゆり恵が混乱するも、すでに彼の魔力量の多さはわかっている。しかし、これほどまでに多いのか。自身が負けるのは仕方ない、と膝を折ってしまう。

「それより……ここから……、出し」

 ゆり恵は、そのままフィールドの中で気を失うように眠り込む。最後に瞳に映ったのは、風音がどこかに消えていく後ろ姿だった。

「……頑張ったよ、ゆり恵ちゃん」

 その様子を近くで誰かが見ていた。フィールドに隔離され睡眠魔法にかかっている彼女の目の前に姿を現すその人物は、優しい声でそう呟く。
 巧みに隠れていたためか、それに気づいた者はいなかった。

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