【完結】純白の魔法少女はその身を紅く染め直す

細木あすか(休止中)

文字の大きさ
46 / 106
3:レンジュ大国管理部メンバー、ここに見参!

11:水面に映るは太陽の照らし②

しおりを挟む


 少し歩くと、目の前には水源が広がっていた。

「わあ……」

 この少し先まで飛ばされていたまことは、目の前に広がる光景に目を奪われた。小さくも立派な滝が、水しぶきをあげて存在を主張する。水面奥の地面が見えるほど澄んだ湖、その中で自由に泳ぐ魚。今まで見たどんな水源よりも綺麗で幻想的だった。
 そんな綺麗な水辺に我慢できなくなった彼は、湖の水を手ですくう。口に持っていくと、それを一気に飲み干した。

「……え」

 すると、すぐに体内から魔力が湧き出てくる。
 溢れ出しそうな魔力は、まことの張った気を緩めてくれた。こんなスポットがレンジュにあったのか。まことは、初めての出来事に感動する。しかし……。

「すごい、魔力の貯蔵庫だ。……っ!?」

 もう一口飲んでいるところ、後ろから感じた気配に振り向く。
 そこには、先ほどと同じく黒い戦闘服を着込んだ風音が立っていた。

「結構飛ばされたなあ」

 周囲をぐるっと見渡すと、まことに向かってそう言ってきた。余裕そうな表情が、どこまでもまことを馬鹿にしているような印象を与えてくる。これが、挑発というスキルだろう。冷静な分析をしつつ、その口を開く。

「……ええ、みんなの魔力が追えないくらい遠くでした」

 多少魔法を操れるようになると、知っている人の魔力であれば追うことができる。しかし、何度か試してもこの空間ではそれすら叶わなかった。となれば、答えは限られてくる。

「本当に、ここは魔警の中ですか?」

 その問いに、フッと笑う風音。間を取りながらも、その身体に纏われているうっすらとした殺気がまことの肌に鋭く突き刺さる。

「よく気づいたね。ここは、街外れの森だよ」
「やっぱり……」

 そう、先ほどの空間移動によって4人は屋外に飛ばされたのだ。他の2人は薄々気づいていたようだが、まことはそれに確信を持って気が付いた。さすが、アカデミーを首席で卒業しただけのことはある。

「主界の魔力はすごいですね。4人同時にここまで飛ばしちゃうとは」
「ああ、瀬田さんに魔力増強してもらってるからね」

 アリスの魔力増強はある程度離れた場所でも有効だ。よく見ると、風音は薄いオレンジ色の光に包まれていた。
 まことは、強い魔法使いが目の前にいればそれだけやる気が出る。目標は高い方が燃えるタイプだ。自身よりも未知数に強いであろう風音を、頬を紅潮させて睨みつける。

「僕も早く強くなりたいです」
「なら、実践を重ねるのみだよ。いくらでも付き合うから」
「はい!」

 風音の言葉が嬉しかったのか、笑顔でそれに答えるまこと。
 この子は、まだまだ伸び代がある。それを見た、風音は微笑みながら返事をした。とはいえ、その会話している場所の距離が縮まることはない。互いに警戒しているのだろう。

「じゃあ、本気で勝負させてください!」

 そう言い、まことは先制攻撃をすべく杖を取り出し精神統一を始める。青い光が全身から溢れ出し、まことを包んだ。周囲の水面が、その影響で波打つ。

「……やっぱり、真田はすごいな」
「行きます!」

 まことの魔力量は、上界レベル。だが、彼は自覚していない。
 青い光に包まれたまことを見た風音は、身構えた。アカデミーレベルで、この濃さの色はありえない。

「水龍!」

 まことが、風音の方を向きながら素早く湖の中に手を入れる。すると、湖から巨大な龍が出現した。先ほどゆり恵と出した龍よりも原型を保っていないが、それでも「龍」とわかる程度の形をしている。とはいえ、威力は先ほどと同等かそれ以上だろう。龍の纏っている魔力が、それを知らせてくれる。

「……やっぱり調子良い!」

 それは、いつも出している龍よりも倍大きかった。予期していなかったまことは、喜んで水龍を見た。

「全力で来いよ!」

 それを見た風音は、楽しそうに両手を広げる。その手は、太陽の光のような暖かい色に染まる。まことの青い光をも包み込むほどのそれは、素早く森の中へと広がっていった。風がないのに、草花が均等に揺れる。

「雷龍」

 すると、風音の手から水龍よりも大きな雷龍が現れた。唸り声をあげ、水龍に向かって威嚇をする。彼の身体がピンク色で包まれているということは、幻術か。

「すごい……」

 その迫力に押されるまこと。雷の幻術で作られたそれは、ヒゲまでもしっかりと表現されていた。原型を保つだけで精一杯の水龍とは、大きな差を見せつけてくる。

「負けてられない!……葉針準備!!」

 彼は、水龍に向かってさらに魔法を唱えた。すると、透き通った水龍の体内には、周囲にあった木々の葉が取り込まれていく。
 水龍を操りながら、風を起こして葉を集めているのだ。それは、周囲の状況を把握し、かつ、魔力のコントロールがないとできない高度な技。

「……いけ!」

 まことの合図で、水龍は竜巻を周囲に起こしながら雷龍に向かっていく。2人の頭上で、龍が激しくぶつかり合った。

「できた!」

 実のところまことは、今まで水龍の中に物質を入れ込むのができずにいた。
 この魔法は、魔力だけでなくバランス加減も重要な要素。魔力量をバランスよく放出させないと、物質がボロボロと崩れ落ちてしまうのだ。
 今の一連の流れで、まことは力加減を理解した。こうやって、演習でも彼は成長する。

「葉針!」

 水龍は、雷龍にぶつかりながら体内に溜め込んだ葉を針状にして風音へと向ける。いくら雷龍を攻撃しても、本体を断たなければ意味がない。それに、まことが気づいたということか。

「なるほどね」

 そう言って、シールドを展開し降ってくる葉を防ぐ風音。小さい範囲の攻撃だったため、展開されたシールドに全て吸収されてしまう。そして……。

「標的切り替え」

 シールドで吸収した葉を、そのままの勢いでまことへとぶち当てる。カウンターシールドだ。

「ああ……っ!」

 鋭い葉は、直にまことへと降り注がれる。それを防ぐ暇もなく、まことの皮膚を傷つけた。複数の浅い傷から、血がにじむ。

「油断するな」

 ふらっとしたまことに、風音が素早く距離を縮める。やられる!と目を閉じた瞬間。

「いてっ!」

 風音の魔力が込められた拳を避けるように、コケてしまった。空回りする風音。
 まことは、転けた痛みに顔を歪めるも「助かった」が本音だろう。攻撃が当たれば、今の数倍は痛かったはず。

「……え?」

 特に、滑るような地面ではない。かと言って、運動神経の良いまことが転ぶはずもなく……。疑問は残るが、そんな理由を考える隙もなく風音の攻撃が続く。
 浮遊を続ける龍同士も、激しくぶつかり合っている。

「攻撃してこないと終わらないぞ」

 と言われても、その隙がない。湖に近い場所にいるため、そこに落ちないよう注意しないといけない。風音だけに集中するだけの条件が整っていないのだ。できるわけがない。

「っ……」

 先ほどのすり傷がズキズキと痛む。しかし、ここで負けるわけにはいかない。まだ学びたいことがあるまことは、

「水波!」

 歯を食いしばり近くの湖に再度手を入れ、呪文を唱える。すると、今度は大きな波が湖に出現した。風が完全に止んでいるのに水面が大きく揺れ、波を作り出す。
 風音は、その様子を見てニコッと笑う。

「それを待ってたよ」

 そう言うと、一定の距離を保ち

「スパーク」

 と、素早く唱えてきた。

「うっ、あ……」

 もろに手を水へ入れていたため、まことは感電してしまう。そのまま前に倒れ、気絶してしまった。湖に落ちそうになった彼を、風音が近寄って素早く抱き寄せる。
 瞬間、ザパッと音がすると主人を失った水龍が崩れ落ち大量の水が2人に降り注ぐ。その水しぶきを魔法で乾かすと、

「お疲れさん、ちょっと休んでな」

 まことも、そのままフィールドへ隔離されてしまう。風音は雷龍を消し肩を回すと、

「さて、あと1人か……」

 まことを残してその場を後にした。
 演習で傷ついた周囲の草木は、彼の魔法によって元通りになっている。

「……やっぱ、まことはすごいな」

 全員の演習の様子を見ていたのは、ユキだった。木陰から満足げに呟いた彼は、湖から魔力回復の効果を取り除くとそのまま瞬間移動でどこかに消えていく。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?! 痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。 一体私が何をしたというのよーっ! 驚愕の異世界転生、始まり始まり。

処理中です...