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無音の涙は、制服を濡らす
しおりを挟む「っ、す、鈴木さん!鈴木さん!!」
「……青葉くん?なんで……」
「オレが呼んだ感じ」
「……そう」
そこに、めちゃくちゃ顔色の悪い五月も来た。全く、遅いんだよ!!
……てかこいつ、人の話聞かねぇから学校中走り回ったんじゃね?セーター着てんのに、馬鹿か?
オレの腕の中で震える鈴木さんを見て、更に顔色が真っ青になってるし。……五月まで倒れても今は支えらんねぇぞ。
五月は、こちらに寄って来ると、着ていた制服の上着を鈴木さんにかけながら話しかけている。
「怪我は!?」
「ありがとう、大丈夫。授業は?」
「そんなのどうでも良い!それより、どこか痛いとこ、ろ……は」
「……?」
「……」
「……青葉、くん?」
あ、五月、怒りのスイッチ入った。アレだな、首筋のキスマ見たんだろ。
その視線に気付いた鈴木さんは、急いでその部分を震える手で隠した。
けど、もう遅いと思う。相変わらず怖いな、五月の目。
前髪で隠れてチラッとしか見えないから、雰囲気抜群。さすが、千影さんの息子なだけあるよ。
「あっ」
「っと!」
そんなことを考えていたオレは、急に動いた鈴木さんを支えきれなかった。そのまま、一緒に床へ転んでしまう。
五月が手を貸してくれなかったら、腰打ってたな。感謝、感謝。
ただ、そのオーラはいただけない。
「ご、ごめんなさ……」
「っ、大丈夫。……おい、五月ちょっと抑えろ。怖いんだよ」
「……それ、誰にやられたの?」
五月は、オレの言葉が聞こえないように鈴木さんに向かって静かな声で質問している。
「え、あ……」
案の定、鈴木さんは震えて言葉が出てこない感じ。
わかるよ、怖いよな。オレも怖い。
「……」
すると、返事は期待していなかったのか、五月は立ち上がると無言でどこかへ行ってしまった。
「……」
「え、ちょっ」
あーーー!もう!
だから、女の泣き顔が苦手なんだよ!
鈴木さんは、五月の後ろ姿を見ながら静かに、本当に文字通り静かに涙を流し始めた。
「鈴木さん?えっと、あ、梓?」
「……」
そろそろ、高久さんに一報入れないと怒られそうだな。校門まで車つけてもらうよう連絡しとかないと。
あー、正樹にも連絡入れねぇと。
でも、今は鈴木さん優先だよな。
全く!どこ行ったんだよ!
後で埋め合わせしろよ、五月!!
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