【完結】生活を隠す私と、存在を隠す彼

細木あすか(休止中)

文字の大きさ
86 / 247
08

単純脳

しおりを挟む

 ピアス、アウト!
 前髪の長さ、アウト!
 無論、セーターも見た目的にアウト!

 だが、それ以上に、その顔! 顔、アウトだろ!?
 これで、裏方!? 表舞台の顔だよそれ!!

「……せ、整形」
「んなわけないでしょう」

 とりあえず。とりあえず、だ。
 鈴木が地味専じゃねえのは、確定したな。

「……その格好してる訳はなんとなくわかったわ。女子とトラブったことあるとかだろ」
「うん。告白断ったら無理心中させられそうになった」
「ブッッッッ! マジかよ、そこまでとは思ってなかったわ」
「ナイフで滅多刺しにされたから、未だに跡が残ってるよ」

 そう言いながら……ホント、事の重大さと比例しない軽い声で言いながら、首元のセーターを少しだけ引っ張ってきた。
 すると、そこには……。

「はあああああ!? おま、え、ちょ!?」
「傷隠し」
「……はあ。なんか、お前のこと色々勘違いしてたわ。金なくて夏服買えないのかと思ってた」

 そこには、結構立派な刺青が彫られていた。
 傷隠しってことは、その下に傷があるんだろうな。一生消えないレベルのやつが。

「まさか。目立ちたくないから着てるだけ」
「今でも十分目立……いや、曝け出した方が目立つな」
「それに、校則違反だから」
「まあな……。鈴木、それも知ってんのか?」
「うん」
「……なんで俺に教えた? 誰かに言うかもしんねーじゃん」

 こいつ、人を疑うってことしないのか? 俺が先生に言えば、即退学だろうに。
 他人事ながら、心配しちゃうぜ……。

「あー。知り合いに似た人居て。大丈夫かなって思っただけ」
「知り合い……?」
「うん。金属バットで殴り合った仲の」
「……は?」
「あ、違う。殴ったの俺か。……いや、殴ってなかったかも」
「……どんな知り合いだよ」

 ブラックジョークってやつだよな? そうだよな!?

 青葉は、なんだか不穏なことを言いながら楽しそうに笑ってやがる。……本当、明るいやつ。知らなかったよ。
 ……いや、知ろうともしなかった。鈴木のことがなければ、きっとクラス替えまで関わらなかったと思う。

「てか、お前。芸能人のセイラに似てるって言われねぇ?」
「あー」
「あ、悪りぃ。女顔って言ってんじゃなくてだな……」
「母親だから似てるかも」

 うんうん、母親似ね。母……!?
 母親がセイラ!?

 俺は、なんとか声をおさえることに成功した。
 ちょうど、部活の奴らが通ったからな。また変な目で見られたら、たまんねぇじゃんか。

「………………俺、お前が宇宙人だって言ってきても驚かねーわ」
「これも内緒ね」

 内緒もなにも! そんな突発的なこと言っても誰も信じねえよ、その顔見ない限りな!
 どうせ、これからも顔隠して学校来るんだろうし。

「お待たせー。……あれ、えっと」

 俺がため息をついた時、ローファーを履き終えたのか片足を地面にトントンと叩きながら鈴木が来た。
 今日も可愛いな。目の前で見られるとか、ラッキーだぜ。

「眞田くんとおしゃべりしてたんだ」
「そうなのね」
「色々バラしちゃった。ね、眞田くん?」
「お、おう……」

 うわー!! 鈴木が俺の方見てる!
 ありがとう、青葉! もうこれだけで、幸せです!!

「眞田くん、青葉くんと仲良かったんだ」
「おう! 友達だぜ、な?」
「……う、うん」

 なんで赤くなってんだ、青葉?
 下なんか向いちゃって、どうした? やっぱ、ここ暑い?

「よかったね、青葉くん」

 あー、こんな間近で笑顔見れるとか!
 その笑顔を俺に向けてくれたら……。いやいや、これで十分だぜ!

「うん。……じゃあ眞田くん、また明日ね」
「バイバイ、眞田くん」
「おう。……あ、青葉」
「ん?」

 俺は、帰る青葉を引き止めた。やりたいことがあってな。

「スマホ出せよ。ライン交換しよう」
「あ、……うん!」

 うわ。
 さっき顔見ちったから、嬉しそうな声出されると前髪めくりたくなるなあ。……って思ってたら、鈴木がめくってるし!

「ちょっと、鈴木さん!」
「んー? 青葉くんが嬉しそうだったから、顔が見たくなって」
「……」

 お、また顔赤くしてやんの。嬉しい、とか? だって、こいつ友達居なさそうだし。
 俺は、笑いながら青葉とライン交換をした。

「鈴木さんも交換したら? 俺、よくスマホ忘れるから。眞田くんの連絡先わかってれば、俺と連絡取れることあるだろうし」
「うん、いいよ」

 うお!?
 ナイス青葉!
 よくわかんねぇ理由だけど、なんだっていい!!

 俺は、スマホを取り出す鈴木を見ながら、QRコードの画面を出す。すると、鈴木が読み取ってくれた。今世紀最大の歓喜!!

「後で送るね」
「おう! 2人とも気をつけて帰れよ!」
「うん、またね」

 俺は、スマホを握りしめながら、帰る2人を見送る。なんだか、今日は気分がいいぜ!

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー
恋愛
異世界へ転生していると気づいたアザレアは、このままだと自分が死んでしまう運命だと知った。 同時にチート能力に目覚めたアザレアは、自身の死を回避するために奮闘していた。するとなぜか自分に興味なさそうだった王太子殿下に溺愛され、聖女をざまぁし、チート能力で世界を救うことになり、国民に愛される存在となっていた。 そんなお話です。 以前書いたものを大幅改稿したものです。 フランツファンだった方、フランツフラグはへし折られています。申し訳ありません。 六十話程度あるので改稿しつつできれば一日二話ずつ投稿しようと思います。 また、他シリーズのサイデューム王国とは別次元のお話です。 丹家栞奈は『モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します』に出てくる人物と同一人物です。 写真の花はリアトリスです。

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

処理中です...