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繊細な親友はちょっとだけ面白い
しおりを挟む「と言うことで、失恋しました」
「いやいや、まだわかんねえじゃん! なんで、そんな落ち込んでんだよ!!」
五月の話をリビングで聞いていたオレは、喝を入れるべく少し大きめの声を出した。
だって、喫茶店から梓とスポ専のやつが出てきただけだろ? ラブホから出てきたわけじゃねえし、なんでそこまで落ち込むんだ!?
繊細すぎんだろ、お前!
「……あの鈴木さんが、スポーツ科の人に笑ってた」
「笑うくらいいいじゃんか」
「鈴木さんは、どうでも良い人に笑いかけない……」
「わかんねえじゃん、笑うかもしんねえだろ!」
五月は、そう言いながらソファベッドに突っ伏している。顔は見えないけど、絶対「無」になってるだろ。
……重症。こいつ、こんな性格だったか?
梓のこと好きだって自覚したらコレかよ。可愛いやつ。
「全くお前は! 梓に直接聞けよ。どうせ、その喫茶店でケーキでも奢ってもらったんだろ」
「ありがとう。奏の気遣いで、今日は良く眠れそうだよ」
「ああ、もう! 辛気臭ぇ!!」
梅雨は明けたよな!?
ここ、湿度高くねえか!?
親友の姿に呆れつつ、オレはスマホを取り出す。
……まあ、学校で抱きつかれてる姿も見てたらしいし、こいつにとってはダメージ大きかったんだろうな。オレが知る限り、五月にとっては初恋だし。
こうなったら、本人に直接聞いてやる!
***
「~♪」
あー、テスト終わりって開放的!
私は、鼻歌を唄いながら夕飯の洗い物をしていた。
赤点は、多分ない。……パパみたいに、解答欄ズレてなければね。お風呂入ったら、問題用紙と教科書見て確認しよ。
「おねえちゃん、ごきげん!」
「ねえちゃん、どうしたの?」
「んー? テストが終わったんだよ」
「テストが終わったら、シャインレンジャーの歌をうたうんだね!」
「え、あ……」
「ぼくもテスト終わったらうたう!」
「わたしも!」
誤解よ!
というか、今私、シャインレンジャーの歌唄ってたの!?
なんかもっとこう……おしゃれな………………私、そんな歌知らないや。
シャインレンジャーとキュアガールのオープニングエンディングは、完璧だけど。だって、日曜朝に双子と一緒に見てるし。
私の年代って、どういう歌が流行ってるんだろう? ……ああ、橋下くんとセイラさんが出てるドラマのオープニングもなんとなく覚えてるわ。
「……お姉ちゃんがシャインレンジャー歌ってたのは、秘密ね」
「えー、なんで?」
「おねえちゃん、お歌上手だよ?」
「う、うーんと」
「そうだぞ! 梓ちゃんは、そんじょそこらの歌手より上手いんだぞ! そうだ、声を取って芸能事務所に売り込みに「こう言うバカな人がいるから、内緒にするのよ?」」
反面教師ってやつ。
私は、ちょうどリビングに入ってきたパパを指差して双子に言い聞かせる。……人を指差しちゃダメだけど。それも教えてあげなきゃ。
「わかった!」
「内緒!」
「……傷ついた」
「はいはい。洗い物続きやるから、あっち行ってて」
「よし、梓ちゃん。録音バッチリだから、いつでも歌っ…………」
さっき、私の話聞いてた!?
これじゃあ、無意識にも歌えないじゃないの!
私がパパをひと睨みすると、やっと黙った。
パパってば、もう少し声量下げて欲しいんだよね。何回か言ってるんだけど。
「あ」
「何!? まだ何か……」
洗い物を再開しようとしてたら、またパパが話しかけてくる。
もう! 全く、なんなのよ!
私は、多少……いえ、かなりイラつきながら返事をした。すると、
「スマホ、洗面所に忘れてたぞ」
「あ、ありがとう……」
そう言って、私のスマホを手渡してきた。
プラネットのストラップが、電球の光に反射してキラッと光っている。青葉くんと色違いのやつ。……これ、外した方がいいのかな。でも、青葉くんはつけてくれてるしそのままでも……。
私は、そんなことを考えながら手をタオルで拭いて、スマホを受け取る。
「で、さっきから電話来てるぞ。マオくんから」
「!? それを先に言ってよ!!」
言うの遅いよね!?
画面を見ると、ちょうどコールが切れたところだった。私は、急いで橋下くんへかけ直す。
「マオくんくるの?」
「マオくんにあいたい!」
「電話するから、静かにね」
「「はーい」」
「……はーい」
双子の声しか聞こえなかったから、パパの方を睨んだらちゃんと返事してくれた。
にしても、何の用だろう?
撮影の追加伝言、とか?
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