198 / 247
15
夏休み前の話題を掻っ攫ってく2人
しおりを挟む「眞田! 大ニュース!」
「なんだよ、朝から」
俺が教室に着くとすぐに、後ろから来た横田が慌てた様子で話しかけてきた。
なんとなく内容のわかる俺は、カバンをおろしながらめんどくさそうな声で対応する。
「鈴木が、なんか派手な男連れて登校してる!」
「あー。彼氏か」
「やっぱ、マジ? みんなそう言ってるんだけど、信じらんねぇ。鈴木から聞いたのか?」
「ああ。青葉と付き合うようになったって」
「は? 何組の青葉?」
「この組にしか居ねえよ。青葉五月」
「違うって! あんな地味なやつじゃなくて、クッソイケメンだったぞ!?」
「だから、それが青葉だって。昨日、髪切ったんだと」
「……もう一回見てくる」
昨夜、青葉から律儀に写メ付きでラインがあったんだ。「髪切ったよ」って。
驚いたけど、まあ、鈴木の隣に居るって決めたならそうなるわなあって感じ。むしろ、先に教えてくれてありがとさんって。
俺と横田の話を聞いていた男子どもは、そのまま一斉に教室を出て行ってしまった。数えてねえが、20人はいたぞ。しかも、廊下でも騒いでやがる。祭りじゃねえんだから、落ち着けって。
……まあ、事情を知らなきゃ俺もあっちで騒いでたんだろうな。
横田と入れ違いに、今度は東雲が俺のところにやってくる。リュックを机の上に置くと、すぐに俺の席に座りやがった。
「はよー、眞田あ。行かなくて良いの?」
「別に。行かなくても、どうせ教室くるだろ」
「珍しー。でもさあ、あんな騒がれてたら鈴木も青葉も教室来るの大変なんじゃないの?」
「あー……。行ってくるか」
「いってらー。俺は、教室で楽しみに待ってる」
「おう。写メでも送ってやるよ」
「マジ? よろー」
最初から行かせるつもりだったらしい。
俺は、東雲が自席で寝こけている姿を見ながら、教室を後にする。
***
昇降口には、天使がいた。
「っっっっっっっ!??!!!?!?」
「あ、眞田くんおはよう」
ンンンン!?
なんだ、この可愛さの塊は!?
あ、もちろん鈴木のことな。
「眞田くん?」
「天使」
「え?」
「おはよう、眞田くん」
「お、おう……」
「俺が切ったんだけど、どう?」
「天使……」
「だよねえ」
鈴木は、今まで横に流していた前髪を眉上までバッサリと切っていた。しかも、パッツン。クソ可愛い。
メイクも、いつもの濃い化粧じゃなくて、なんて言うんだ? めちゃくちゃ自然な感じのやつになってる。クソ可愛い。もう、それしか出てこない。クソ可愛い。
青葉ナイス! 今すぐ写メりてぇけど、なんか怖がられそうだからやめておこう。
今日の俺は紳士だ。だから、後で横田がさっきから撮ってる写メをもらおう。
「変じゃないかな?」
「全っ然! むしろ、めちゃくちゃ似合うというかなんというか」
「本当? さっきから視線がすごいから、変なのかなって思ってた」
その逆です! ごちそうさまです!
なんていうか、青葉も顔出してるせいかめちゃくちゃ美男美女カップルになってる。俺がここにいるのが不自然なくらい。さっきから、「眞田どけ、鈴木さんがカメラに収まらねえ」みたいな声がちらほら聞こえてるが無視だ。知ったこっちゃねえ。
「そんなことないよ。俺は好き」
「わ、私も……好き」
「はいはい、ごちそうさま。奏は?」
「仕事」
「そっか。じゃあ、教室行こうぜ」
にしても、すげー視線。とりあえず、見渡す限りみんなが2人を見ている。
この中登校してきたって、結構猛者だぞ。青葉は気づいてるっぽいな。さっきから鈴木の手を握って牽制してるし。鈴木は……まあ、気づいてねえよな。そうだよな。
いまだに、「あれ、誰?」「鈴木の彼氏じゃないよな?」「誰だ?」なんて会話が聞こえてくる。
今までお前らが地味だって言ってた青葉だよ!
「眞田くん、今日の全校集会って体育館?」
「おう。昨日までは外だったんだが、お偉いさんがくるとかで。館履き必須だって言ってたぞ」
「やっぱり……。私、持って帰っちゃってないや」
「他にも持ち帰ったやついるみたいで、生徒会の方でスリッパ用意するって言ってた」
「良かった。途中で戻ろうかなって思ってたんだ」
「青葉は持ってんの?」
「持ってるよ。眞田くんは?」
「俺も持ってる。とりあえず、教室行こうぜ」
「うん」
「……青葉も似合ってるよ」
「ありがとう」
にしても、髪切るだけでこんな雰囲気変わるんだ。
初めて見た時はセイラに似てるなあって思ったけど、切ったら切ったでちゃんと男に見えるから不思議だ。……俺、隣に居ても大丈夫か? 浮いてねえ?
俺らは、そのまま教室へと向かった。
もちろん、スッゲー視線を浴びながらな。
多分、今日の話題はコレで持ちきりだろうな。
明日から夏休みで良かったぜ。
10
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。
みゅー
恋愛
異世界へ転生していると気づいたアザレアは、このままだと自分が死んでしまう運命だと知った。
同時にチート能力に目覚めたアザレアは、自身の死を回避するために奮闘していた。するとなぜか自分に興味なさそうだった王太子殿下に溺愛され、聖女をざまぁし、チート能力で世界を救うことになり、国民に愛される存在となっていた。
そんなお話です。
以前書いたものを大幅改稿したものです。
フランツファンだった方、フランツフラグはへし折られています。申し訳ありません。
六十話程度あるので改稿しつつできれば一日二話ずつ投稿しようと思います。
また、他シリーズのサイデューム王国とは別次元のお話です。
丹家栞奈は『モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します』に出てくる人物と同一人物です。
写真の花はリアトリスです。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる