性別で子を判断するのはやめませんか?

細木あすか(休止中)

文字の大きさ
1 / 6
プロローグ

待望の我が子を出産しました

しおりを挟む

 産まれて18年。
 怪我一つせず育ち痛みを経験してこなかった私にとって、「出産」という大舞台は過酷なものだった。
 丸2日も陣痛で苦しみ、いざ出産となるも今度は赤子の頭が出てこないという。……って話を、うっすらとした意識の中で耳にしていた。

 まるでそれは、深海に居るような気分だった。
 どこまでも苦しく、なにも見えてこない。
 ここで私の人生が終わるんだ。我が子の顔も見れず。そう、何度思ったかわからない。

 とにかく、痛みで全身が砕けそうなの。
 生まれてきてから今まで、ずっとしていたはずの息の仕方がわからない。声を出そうとすると、そこからは別の何かが出てくるだけ。ああ、きっと私の顔は吐瀉物まみれになっていることでしょう。嫌だわ。これでも、王太子妃なのに。
 こんなところを夫であるヴァレリー様に見られなくて良かったわね。そう思った時だった。

「う、産まれました! 女の子です! ああ、可愛らしい。なんて可愛らしい子なの。お嬢様、よく頑張りましたね」

 隣でずっと手を握ってくれていた専属メイドのサフランが、うわずった声を出す。
 でも、私はそれを半分も聞けていなかった。

「ああ……。ねえ、抱きたいわ。抱いて、ヴァレリー様にお見せしたい」

 それよりも、我が子の産声を聞くので手一杯だった。
 そんな気持ちをサフランもわかっているのか、

「わかりました! 周辺を整えますので、少々お待ちください」

 と、これまたうわずった声……いいえ、泣いているわ。泣き声で、助産師と医師に「シーツを取り替えても良いか」を聞いてくれていた。

「お嬢様、よく頑張りましたね」
「先生、ありがとうございます……」
「大量の出血があるので、しばらくは動けないでしょう。子を抱きたい時は、私かメイドに一言おっしゃってくださいな」
「はい……。ヴァレリー様にも見せたくて」
「わかりました。こんな可愛らしい子ですから、絶対にお喜びになりますよ」
「ええ……。本当に、ありがとうございます」

 助産師たちがベッドを整えてくれている中、医師と会話をしつつサフランに身体を拭いてもらい新しい服に着替えた。
 全く動けなくて、シーツを変える時も2人がかりで身体を持ち上げてもらってしまったわ。何度もサフランと助産師に謝って、その度「お嬢様はもっと威張ってください。だって、こんな可愛い子を産んだのですから!」と言って涙を流してくれたの。

 ああ、この高揚感。とても気持ちが良いわ。
 早く、ヴァレリー様と共有したい。

 そう思った時だった。

「産まれたのか!」

 部屋の中に、ヴァレリー様が入ってきた。
 とても嬉しそうなお顔で、助産師の抱く我が子に視線を向けている。体重や身長を測っていた途中だったらしく、裸のままの我が子が私からも見えた。

 あの子には、どんな服が似合うかしら? 今から、それを選ぶのも楽しみだわ。

「ヴァレリー様! お呼びするまで、外でお待ちくださいと……」
「良いわ、サフラン。もう着替えは終わったし、大丈夫」

 私は、怒るサフランを宥めつつヴァレリー様の言葉を待つ。
 しかし、それは私が想像していたものとはかけ離れすぎていた。


「なんだ、女か」


 ヴァレリー様の表情は、我が子を見た瞬間に無へと変わった。
 そして、そのまま私とは目も合わせずに部屋を出て行ってしまわれたの。

 今の出来事によって、部屋の中の物音が一瞬にして消え去る。でもそれは、私の中だけだった。
 どうやら、私は我が子を抱かずにそのまま気絶したみたい。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。 ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

処理中です...