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五. 多雨野界隈徘徊記
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私ぐらいになると土曜の朝っぱらから多忙である。
なぜかと問われれば、世界が私を放っておかないからだと答えるつもりだ。まだ誰も問うてくれないので、答える機会も同様にまだない。
多忙ゆえにすべてを素早く。まずは里芋を皮ごとレンチンする。すると皮が簡単に剥けるので、マッシュして芝えびやら青葱を加えて形を整え、ごま油で両面をこんがりと焼く。里芋のおやきは冷めても美味だし腹持ちがよい。
さらにおにぎりを握る。まず定番の鮭とおかか。加えて我が家のランキングで上位人気を誇るしそ味噌のおにぎりも握る。これで完璧だ。
しそ味噌はフライパンに味噌や蜂蜜を放り込み、さらに刻んだしそをケチケチせずたっぷりぶち込んで、とろ火で汁気を飛ばしながら練って仕上げたものだ。まさに万能調味料であり、食べるラー油や塩麹に勝るとも劣らぬポテンシャルだ。なんにでも合うが、なんと言っても白いご飯との相性は恐ろしいほど良い。
「ええ匂いやあ」
二階から宮内さんが伸びをしながら降りてきた。
「おいしそうやね、今日のお弁当も」とおやきをひょいと奪ってパクつく。
「うまっ。シェフを呼べぃ。褒めてとらす」
「はいはい。朝ごはんは別に用意していますから、つまみ食いしないでください。それより若葉を起こしてくれませんか? もうすぐ味噌汁もできますから」
「了解いたしました、料理長」
口をもごもご動かしながら敬礼し、階段を駆けあがっていった。
今日も若葉は部活だし、宮内さんは多雨野を歩き回る予定だ。ふたりにはおにぎりメインの弁当に腹持ちのよいおやきを添えて持たせる。宮内さんはおやきが好物なので、醤油味にチーズ入りにマヨネーズ焼きと、一つあたりを小振りにしてバリエーションを増やした。
宮内さんが我が家にきてからまだ半月も経たないが、毎日のようにフィールドワークに勤しみ、自転車で多雨野のあちこちに出没しているらしい。町の人々にも歓迎され、おやつやお茶をご馳走になることもあるそうだ。
特にばあさまがたの受けは抜群で、「いやいや、宮内さんみたいな人が孫の嫁にきてくれたらなあ」などと言われている。葦原家以外では関西弁を封印しているのだからそれも納得がいく。標準語で喋る宮内さんは慎ましいお嬢さんにしかみえない。
「いってきます」と朝食を済ませた若葉がでかけると、宮内さんは「ウチも」とあとを追う。
母の書斎におやきを運んで、「少しでかけてきます」と告げた。
さて、出番だ。私のポテンシャルをみせつけるときがきた。
なぜかと問われれば、世界が私を放っておかないからだと答えるつもりだ。まだ誰も問うてくれないので、答える機会も同様にまだない。
多忙ゆえにすべてを素早く。まずは里芋を皮ごとレンチンする。すると皮が簡単に剥けるので、マッシュして芝えびやら青葱を加えて形を整え、ごま油で両面をこんがりと焼く。里芋のおやきは冷めても美味だし腹持ちがよい。
さらにおにぎりを握る。まず定番の鮭とおかか。加えて我が家のランキングで上位人気を誇るしそ味噌のおにぎりも握る。これで完璧だ。
しそ味噌はフライパンに味噌や蜂蜜を放り込み、さらに刻んだしそをケチケチせずたっぷりぶち込んで、とろ火で汁気を飛ばしながら練って仕上げたものだ。まさに万能調味料であり、食べるラー油や塩麹に勝るとも劣らぬポテンシャルだ。なんにでも合うが、なんと言っても白いご飯との相性は恐ろしいほど良い。
「ええ匂いやあ」
二階から宮内さんが伸びをしながら降りてきた。
「おいしそうやね、今日のお弁当も」とおやきをひょいと奪ってパクつく。
「うまっ。シェフを呼べぃ。褒めてとらす」
「はいはい。朝ごはんは別に用意していますから、つまみ食いしないでください。それより若葉を起こしてくれませんか? もうすぐ味噌汁もできますから」
「了解いたしました、料理長」
口をもごもご動かしながら敬礼し、階段を駆けあがっていった。
今日も若葉は部活だし、宮内さんは多雨野を歩き回る予定だ。ふたりにはおにぎりメインの弁当に腹持ちのよいおやきを添えて持たせる。宮内さんはおやきが好物なので、醤油味にチーズ入りにマヨネーズ焼きと、一つあたりを小振りにしてバリエーションを増やした。
宮内さんが我が家にきてからまだ半月も経たないが、毎日のようにフィールドワークに勤しみ、自転車で多雨野のあちこちに出没しているらしい。町の人々にも歓迎され、おやつやお茶をご馳走になることもあるそうだ。
特にばあさまがたの受けは抜群で、「いやいや、宮内さんみたいな人が孫の嫁にきてくれたらなあ」などと言われている。葦原家以外では関西弁を封印しているのだからそれも納得がいく。標準語で喋る宮内さんは慎ましいお嬢さんにしかみえない。
「いってきます」と朝食を済ませた若葉がでかけると、宮内さんは「ウチも」とあとを追う。
母の書斎におやきを運んで、「少しでかけてきます」と告げた。
さて、出番だ。私のポテンシャルをみせつけるときがきた。
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