【完結】推しを死亡フラグから救済したら溺愛ルートに入りました⁉︎

白(しろ)

文字の大きさ
6 / 119
第一章

同情か、否か

しおりを挟む
「話す前にオレからも聞きたいことある。なんで助けたのがオレだってわかったんだ?」
「……以前から聖女たちに付き纏う、やけに腕のいいアイテム職人の話は聞いていた」

 付き纏う、という言葉につい反論しそうになったが言葉を飲み込む。

「あの時の俺の傷は致命傷だった。それを治せるのは治癒術が使える聖女か、規格外の性能を持ったアイテムしかない。聖女が俺を救う義理はない。なら、残された選択肢は一つだ」

 反論のしようがない内容に苦笑いしか浮かばない。
 俺は恋愛や冒険を進める際のお助けキャラだ。そしてその傍ら、アイテム職人として生計を立てている一面もある。
 ゲームの中のリアス・オルロンはアイテム職人としての腕は中の上だった。
 けれど俺は違う。
 アイテム職人という括りでいけば、今の俺は間違いなく上の上だ。素材さえあれば作れないものはこの世に存在しないと言い切れる。
 そうしたのも全部、目の前のキャラを救うためだった。

「辿っていけば自然にオレに辿り着くよな、そりゃ。聖女たちの後を追ってたのも事実だし」

 もう一度息を吐いて、マグの中で揺れるコーヒーを見る。

「オレ、今から相当変なこと話すけど、信じれる?」
「内容次第だ」

 こんなタイミングで打ち明けることになるなんてなぁ。
 そう思いながらオレは口を開いた。

「この世界に生まれる前から、あんたがあそこで死ぬって知ってた」

 静寂の中、オレは話を続ける。

「オレさ、前世の記憶あるんだよね。あ、前世ってわかる? で、その時のオレは、物語としてこの世界を楽しんでた」

 声に出しながら頭の中を整理していく。
 けれどいつかは誰かに聞いてほしいと思っていたからか、自分で思っていたよりもスムーズに言葉が出てきていた。

「その物語では聖女が主役。彼女が幸せな結婚をするための物語だった。そこに、ルークが出てくるんだ」

 そこでようやくオレはルークを見た。
 彼の表情は静かだった。怒ってもなければ、オレを異常者として見ているわけでもない。ただ静かに、オレのことを見ていた。

「……そこでもルークはダリアの仲間だったよ。街に魔物を放ったり、要人を誘拐したり、そもそも国一つを人質に取ったりさ。こう言葉にしたら悪行三昧だな」
「それならどうして助けた。悪人は死ぬべきだろう」
「物語だとルークは死んだよ。そうはっきり言われたわけじゃないけど、多分死んでた」

 ここで初めてルークの眉間に皺が刻まれた。不快だというような表情に思わず苦笑する。

「……お前の話を信じるなら、俺は死ぬべきだ」

 オレは言葉に詰まった。
 ルークを助けたいと思った理由が、あまりに彼の内面を抉るものだからだ。
 それでもここで黙っていても、この男は納得しないだろうと息を吸った。

「物語だって言っただろ。物語には、大体登場人物の紹介ってページがある。そこには、その人の過去や、どうしてそうなったのかって理由が書いてある」

 過去、という単語に明らかにルークの雰囲気が変わった。
 静かだった室内に殺気にも似た冷ややかな空気が滲み出し、喉を潤したばかりなのに渇きを覚えた。

「オレはあんたの過去を知ってる。その顔の傷の経緯も」
「──同情か」

 怒気を孕んだ低音に反射で肩が跳ねた。
 その挙動が、ルークへの答えになってしまったらしい。
 は、と嘲笑じみた笑みを浮かべてオレを見る。歪に口角を上げて笑う様は邪悪と言っても差し支えないように思えた。

「馬鹿にされたものだな、俺も」
「違う。馬鹿になんてしてない」
「何が違う。どう理屈を並べ立てようが、お前が俺の過去を持ち出した時点でどの言葉も意味は為さない」

 ルークが大きく溜息を吐き、全てを諦めたような顔で視線を下げた。

「一体どんな理由があるのかと思ってこんなところまで来たというのに、結果がこれか。これならあのまま死んでいた方が余程有意義だった」

しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

もふもふ獣人に転生したら最愛の推しに溺愛されています

  *  ゆるゆ
BL
『もふもふ獣人転生』からタイトル変更しました! 白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で息絶えそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 本編、完結済です。 魔法学校編、はじめました! リクエストのお話や舞踏会編を読まなくても、本編→魔法学校編、でお話がつながるようにお書きしています。 リトとジゼの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントなくてもどなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! 第12回BL大賞さまで奨励賞をいただきました。 読んでくださった方、応援してくださった皆さまのおかげです。ほんとうにありがとうございました! 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?

水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。 断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。 しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。 これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない

北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。 ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。 四歳である今はまだ従者ではない。 死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった?? 十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。 こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう! そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!? クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。

処理中です...