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第二章
元、攻略対象
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「いらっしゃいませー」
「オルロン!」
びりびりと空気を震わせるような圧の強い声に、思わず手に持ったアイテムを落としそうになる。
「うわっとっと。相変わらず声がでけえよノクト」
「ああ、すまない」
なんとか落とさずに済んだアイテムを棚に置き、オレは改めて扉の方を見た。
そこには銀髪で体格のいい男が立っていた。顔だってもちろんイケメンだ。目力が強すぎて、オレは未だにあの猛禽類みたいな目で見られると一瞬身構えてしまうけど。
「どうしたんだよ。騎士様は復興の巡業で大変なんじゃねえの?」
「団長に働きすぎだと言われて帰された。久しぶりの休暇だ」
「マジかよ。大戦のあとでも休まなかったお前がなぁ。でも休めるくらい落ち着いてきたってことか」
「ああ、そういうことだ」
ノクトは白い歯を見せながら爽やかに笑った。
こいつはノクト・エンダーソン。この国の騎士であり、聖女と共にこの国を救った英雄の一人でもある。
つまり、攻略対象だ。もう元が付いてしまうけれど。
「折角の休みにこんなとこ来てどうした? お前に売れるもんなんてねえぞ」
「そんなことはない。傷には君の薬が一番効く」
「騎士団お抱えの職人が泣くぜ。たまにならいいけど、普段はそっちを頼ってやれよ。じゃあ今日は回復薬か? それなら今ちょうどすげーのがあるんだよ。水晶花の花弁で作ったやつでさ」
「いや、今日はそうじゃない」
回復薬を取りに行くべく、調合室に入ろうとしたオレはノクトの言葉で足を止めた。
それならばなんの用があるのだろうと向き直ると、そこには少しだけ緊張した面持ちの男がいた。
こいつのこんな顔を見るのはいつぶりだろうか。式典の前や、冒険の途中で女性に迫られていた時、確かこんな顔をしていた。
……どうしてオレ相手に緊張してるんだ?
「この前祭りがあっただろう」
「あったあった。賑やかだったよなー。ノクトは、行けねえか。騎士団は治安維持に努めねえとだもんな、ああいう時」
「……君は行ったのか?」
「行った。すげえ楽しかった」
「一人か?」
「え?」
「祭りには一人で行ったのか?」
問いかけの意味がわからず首を傾げたが、頭の中がばちっとピースがはまった感覚がして、途端に背中に冷や汗が流れだした。
ノクトは攻略対象だ。つまり、ルークのことを知っている。
なんならルークが致命傷を負った時、最後の隙を作ったのは何を隠そうこの男だ。
まずい。めちゃくちゃにまずい。冷や汗と動悸が止まらない。
もしかしたらルークのことがバレたのだろうか。ていうかバレない方がおかしい気がしてきた。あんなイケメンがそこら辺歩いてたら普通に噂になるし、ここは攻略対象が集まっている王都だ。
バレていた場合どうしよう。今ある店のアイテムの中でノクトの動きを封じられるものはあるだろうか。なくてもどうにかルークが逃げる隙を。
かつてない程高速で頭を働かせていたオレだが、続く一言でばちんとその思考が弾けた。
「恋人が、できたのか……?」
「は?」
はあ?
オレはもう一度声に出した。なんだって?
「え、なに。嫌がらせ? オレの恋人いない歴イコール年齢ってのをいじりにきたのお前」
「ちが、決してそうでは。ただオルロンがこの店に男と入るのを見たと、騎士団の者が教えてくれて」
思い違いだったと思った途端核心を突かれて舌を噛みちぎりそうになった。
危ない。怪しさ満点で咳き込むところだった。
「友達だって」
「友人? 君に友人がいたのか」
「オレにだって友達くらいいますーー! そりゃごく僅かだけどいるし! いるもんね!」
「悪かった。拗ねないでくれ」
「拗ねてねえし! でもとりあえずムカついたからこれ買ってけ」
そう言ってオレはどこにでもある回復薬をカウンターの上に置いた。
「千リラ」
「ぼったくりじゃないか」
「オレの機嫌を損ねた罰だ。払え」
「……商売の仕方が悪徳なんだ、君は」
「安心しろ。オレがこんな売り方すんのはお前らだけだよ」
そう言って出された紙幣を受け取って、引き換えに回復薬を渡す。
「僕たちだけ?」
それまでどこか緊張していたノクトの様子が少し和らいだ気がした。
「当たり前だろ。他にこんなのしてたら商売続けられねえわ」
「それもそうだ」
二人で顔を見合わせて笑い、その日ノクトは帰っていった。
結局どうして店に来たのかはわからなかったが、オレは閉店準備を終えたと同時に階段を駆け上ってリビングに続く扉を開けた。
「引っ越しを検討します」
「何を言っているんだお前は」
オレを見るルークの顔は呆れていた。目が「お前は馬鹿か」と言っている気がする。そして多分間違ってもいないと思う。
それに少し悲しくなりつつ、オレは先程あったことをルークに話すのだった。
「オルロン!」
びりびりと空気を震わせるような圧の強い声に、思わず手に持ったアイテムを落としそうになる。
「うわっとっと。相変わらず声がでけえよノクト」
「ああ、すまない」
なんとか落とさずに済んだアイテムを棚に置き、オレは改めて扉の方を見た。
そこには銀髪で体格のいい男が立っていた。顔だってもちろんイケメンだ。目力が強すぎて、オレは未だにあの猛禽類みたいな目で見られると一瞬身構えてしまうけど。
「どうしたんだよ。騎士様は復興の巡業で大変なんじゃねえの?」
「団長に働きすぎだと言われて帰された。久しぶりの休暇だ」
「マジかよ。大戦のあとでも休まなかったお前がなぁ。でも休めるくらい落ち着いてきたってことか」
「ああ、そういうことだ」
ノクトは白い歯を見せながら爽やかに笑った。
こいつはノクト・エンダーソン。この国の騎士であり、聖女と共にこの国を救った英雄の一人でもある。
つまり、攻略対象だ。もう元が付いてしまうけれど。
「折角の休みにこんなとこ来てどうした? お前に売れるもんなんてねえぞ」
「そんなことはない。傷には君の薬が一番効く」
「騎士団お抱えの職人が泣くぜ。たまにならいいけど、普段はそっちを頼ってやれよ。じゃあ今日は回復薬か? それなら今ちょうどすげーのがあるんだよ。水晶花の花弁で作ったやつでさ」
「いや、今日はそうじゃない」
回復薬を取りに行くべく、調合室に入ろうとしたオレはノクトの言葉で足を止めた。
それならばなんの用があるのだろうと向き直ると、そこには少しだけ緊張した面持ちの男がいた。
こいつのこんな顔を見るのはいつぶりだろうか。式典の前や、冒険の途中で女性に迫られていた時、確かこんな顔をしていた。
……どうしてオレ相手に緊張してるんだ?
「この前祭りがあっただろう」
「あったあった。賑やかだったよなー。ノクトは、行けねえか。騎士団は治安維持に努めねえとだもんな、ああいう時」
「……君は行ったのか?」
「行った。すげえ楽しかった」
「一人か?」
「え?」
「祭りには一人で行ったのか?」
問いかけの意味がわからず首を傾げたが、頭の中がばちっとピースがはまった感覚がして、途端に背中に冷や汗が流れだした。
ノクトは攻略対象だ。つまり、ルークのことを知っている。
なんならルークが致命傷を負った時、最後の隙を作ったのは何を隠そうこの男だ。
まずい。めちゃくちゃにまずい。冷や汗と動悸が止まらない。
もしかしたらルークのことがバレたのだろうか。ていうかバレない方がおかしい気がしてきた。あんなイケメンがそこら辺歩いてたら普通に噂になるし、ここは攻略対象が集まっている王都だ。
バレていた場合どうしよう。今ある店のアイテムの中でノクトの動きを封じられるものはあるだろうか。なくてもどうにかルークが逃げる隙を。
かつてない程高速で頭を働かせていたオレだが、続く一言でばちんとその思考が弾けた。
「恋人が、できたのか……?」
「は?」
はあ?
オレはもう一度声に出した。なんだって?
「え、なに。嫌がらせ? オレの恋人いない歴イコール年齢ってのをいじりにきたのお前」
「ちが、決してそうでは。ただオルロンがこの店に男と入るのを見たと、騎士団の者が教えてくれて」
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危ない。怪しさ満点で咳き込むところだった。
「友達だって」
「友人? 君に友人がいたのか」
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「悪かった。拗ねないでくれ」
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そう言ってオレはどこにでもある回復薬をカウンターの上に置いた。
「千リラ」
「ぼったくりじゃないか」
「オレの機嫌を損ねた罰だ。払え」
「……商売の仕方が悪徳なんだ、君は」
「安心しろ。オレがこんな売り方すんのはお前らだけだよ」
そう言って出された紙幣を受け取って、引き換えに回復薬を渡す。
「僕たちだけ?」
それまでどこか緊張していたノクトの様子が少し和らいだ気がした。
「当たり前だろ。他にこんなのしてたら商売続けられねえわ」
「それもそうだ」
二人で顔を見合わせて笑い、その日ノクトは帰っていった。
結局どうして店に来たのかはわからなかったが、オレは閉店準備を終えたと同時に階段を駆け上ってリビングに続く扉を開けた。
「引っ越しを検討します」
「何を言っているんだお前は」
オレを見るルークの顔は呆れていた。目が「お前は馬鹿か」と言っている気がする。そして多分間違ってもいないと思う。
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