【完結】推しを死亡フラグから救済したら溺愛ルートに入りました⁉︎

白(しろ)

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第二章

マナーとブラックアウト

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「あ、あの、ルーク?」
「あれはなんだ」
「え、ノクトのこと? 前も言ったじゃん、ていうか、お前知ってるだろ」
「そうではない。なぜあんなに親しげなんだ」
「なぜって」

 ルークの顔が不機嫌だ。眉間に深く皺を寄せて、まるで肉食獣が威嚇をする時みたいに気が立っている。
 どうしてそうなっているのかわからなくて困惑するけれど、思いつく限りを話そうと口を開いた。

「オレ、聖女のあとをついて行って商売してたのは知ってるよな? いろんな街で料理覚えたのも」
「ああ」
「でも南の国でさ、ノクトがどうしても食い物を受け付けないところがあって」
「……それでお前が食事の世話をしたというわけか」
「はい。大体それで合ってます」
「つまりお前は異国の地であの男の味覚に合わせた料理を振る舞っていたということか」
「え、あ、はい。概ねその通りです」

 ルークの盛大な舌打ちに猫みたいに体が跳ねた。
 ものすごく不機嫌なのがわかる。けれどどうして不機嫌になってしまったのかがわからない。

「る、ルーク?」

 声を掛けても返事がない。しかも目も合わない。
 ただルークが怒っているのだけが伝わってきて視線が下がっていく。けれど理由がわからないままというのも嫌で、おずおずと手を伸ばして袖を摘んだ。

「なんで怒ってんの? オレのせい?」

 まだルークからの返事はない。けれどそれから数秒経って大きな溜息が聞こえ、視線を上げる。そこにはやはりまだ不機嫌そうなルークいて眉が下がった。

「怒ってる理由言ってくれよ。じゃないと直せないし謝れない」
「……直したところでもう手遅れだ。全く」

 散々な言われように口がへの字に曲がる。ならどうしたらいいんだと訴えようとした時、顎を掴まれた。

「だから今はこれで許す」

 上を向かせられ、綺麗な目が間近に見えた。
 今日このパターン多いなと思ったのも束の間、唇に柔らかなものが触れてゆっくりと瞬きをした。

「ここに触れたやつは?」

 顎を掴んでいる手の親指が、器用にオレの唇を撫でた。

「……」

 意味がわからないまま首を横に振る。するとルークの口角が上がり、機嫌がよくなったのがすぐにわかった。

「ならいい」

 艶のある低音と共に、もう一度柔らかいものが触れて、離れ際に小さな音もした。

「キスの時は目を閉じるのがマナーだ」

 楽しげに囁かれた言葉を最後に、オレの意識はブラックアウトした。
 どうか誰か今の一連の物事全てを夢だと言ってくれ。そう頭の中で叫ぶのに、唇に残る感触が、それが現実なのだと嫌でもオレに叩きつけてきていた。

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