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第二章
知らない匂い
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結局エスタに言われたことと同じようなことを言われている気がする。
だってルークは推しだ。確かに好きだけど、推しなのだ。どうしたってオレは不釣り合いだし、名前のついた関係にしたくない。この距離がいい。
願うならもう少し離れてほしい。離れてくれたら、多分オレは距離感の修正ができる気がする。
「どうしてそんなに頑固なのかアタシには全然わかんないけど、早くしないと取られちゃうわよ」
言われている言葉の意味がわからなくて首を傾げる。するとマリリンは呆れたように息を大袈裟に吐いた。
「あんなイケメン誰も放っておかないわよ。当然でしょ? 顔よし体よし声よしで、おまけに剣の腕だって立つっていうじゃない。狙われてない方が変よ」
「……」
「好きなのは自分だけじゃないって、そう思ってた方がいいと思うわ」
そう言ってマリリンはパンケーキの最後の一口を食べた。
会計を済ませて店を出て、オレは歩きながら考えた。隣でマリリンが何やら熱く語っていたが何も耳に入らない。
正直、マリリンの言葉に焦っていたのだ。
確かにオレの推しが他の人からも推されないはずがないからだ。もっと言うなら、好かれないはずもない。
だってルークは顔がいい。性格もオレと一緒にいるせいか最初より随分と柔らかくなったし、立ち居振る舞いにも品がある。それに声も低くて素敵だし、とにかく非の打ち所がない。
そんな人を、誰が好きにならずにいられるんだろう。
「帰る」
「そうね早く帰りなさい。そして次来た時大量に野菜買ってもらうから覚悟しなさいよっ‼︎」
マリリンの声を背に足早に家に戻る。
扉を開けて中に入っても、そこにはルークはいない。なら家の方かと調合室の扉を開けたところで、求めていた姿を見つけた。
「どうした、走ったのか」
アイテムの調合の手を止めて、ルークが立ち上がってオレの側にくる。
言われて初めて自分の息が乱れているのに気付いた。
「早歩きはした」
「そうか。今日はどこに行っていたんだ?」
「茶飲みに行ってた。パンケーキ食ったよ、クリームが山みたいに盛ってるやつ」
「……この薄い腹のどこに入るんだ、それが」
視線がオレの腹に向けられる。ストンと障害なく爪先まで見下ろせるが、別にガリガリというわけではない。
「普通じゃね?」
「俺はお前の普通を信用していない」
「ひでえ」
そう言って笑うと、心の中に渦巻いていた焦りが消えていくようだった。
ルークは確かにイケメンだ。絶対にモテる。でも今オレの目の前にいるルークは、多分オレしか知らない。そんな優越感に頬が緩む。
自分が不釣り合いなのに、こんなルークを誰にも知ってほしくないなんて矛盾が生まれる。でもそんな思考も止められないのだから、恋とは厄介だ。
「リアス」
名前を呼ばれて視線を向ける。すると近い距離に顔があって、思わず一歩引く。
「なぜ離れる」
「だ、だってお前、今絶対するつもりだったろ!」
「慣れろ」
「無理、ちょ、ルークっ」
簡単に距離が縮まり、瞬きの間に唇が奪われる。
心臓がうるさいくらい早くなるのと同時に、やっぱり嬉しくて胸が温かくなる。もしかしたらなんて、自分に都合のいいことを思っていると唇が離れる間際にふと違和感を覚えた。
「戻るぞ。ここは狭い」
ルークが微笑んで離れる。その時ふわりと香った匂いに、さあっと血の気が引いていくような心地がした。
甘い匂いがした。ルークのものじゃない、知らない匂いだった。
だってルークは推しだ。確かに好きだけど、推しなのだ。どうしたってオレは不釣り合いだし、名前のついた関係にしたくない。この距離がいい。
願うならもう少し離れてほしい。離れてくれたら、多分オレは距離感の修正ができる気がする。
「どうしてそんなに頑固なのかアタシには全然わかんないけど、早くしないと取られちゃうわよ」
言われている言葉の意味がわからなくて首を傾げる。するとマリリンは呆れたように息を大袈裟に吐いた。
「あんなイケメン誰も放っておかないわよ。当然でしょ? 顔よし体よし声よしで、おまけに剣の腕だって立つっていうじゃない。狙われてない方が変よ」
「……」
「好きなのは自分だけじゃないって、そう思ってた方がいいと思うわ」
そう言ってマリリンはパンケーキの最後の一口を食べた。
会計を済ませて店を出て、オレは歩きながら考えた。隣でマリリンが何やら熱く語っていたが何も耳に入らない。
正直、マリリンの言葉に焦っていたのだ。
確かにオレの推しが他の人からも推されないはずがないからだ。もっと言うなら、好かれないはずもない。
だってルークは顔がいい。性格もオレと一緒にいるせいか最初より随分と柔らかくなったし、立ち居振る舞いにも品がある。それに声も低くて素敵だし、とにかく非の打ち所がない。
そんな人を、誰が好きにならずにいられるんだろう。
「帰る」
「そうね早く帰りなさい。そして次来た時大量に野菜買ってもらうから覚悟しなさいよっ‼︎」
マリリンの声を背に足早に家に戻る。
扉を開けて中に入っても、そこにはルークはいない。なら家の方かと調合室の扉を開けたところで、求めていた姿を見つけた。
「どうした、走ったのか」
アイテムの調合の手を止めて、ルークが立ち上がってオレの側にくる。
言われて初めて自分の息が乱れているのに気付いた。
「早歩きはした」
「そうか。今日はどこに行っていたんだ?」
「茶飲みに行ってた。パンケーキ食ったよ、クリームが山みたいに盛ってるやつ」
「……この薄い腹のどこに入るんだ、それが」
視線がオレの腹に向けられる。ストンと障害なく爪先まで見下ろせるが、別にガリガリというわけではない。
「普通じゃね?」
「俺はお前の普通を信用していない」
「ひでえ」
そう言って笑うと、心の中に渦巻いていた焦りが消えていくようだった。
ルークは確かにイケメンだ。絶対にモテる。でも今オレの目の前にいるルークは、多分オレしか知らない。そんな優越感に頬が緩む。
自分が不釣り合いなのに、こんなルークを誰にも知ってほしくないなんて矛盾が生まれる。でもそんな思考も止められないのだから、恋とは厄介だ。
「リアス」
名前を呼ばれて視線を向ける。すると近い距離に顔があって、思わず一歩引く。
「なぜ離れる」
「だ、だってお前、今絶対するつもりだったろ!」
「慣れろ」
「無理、ちょ、ルークっ」
簡単に距離が縮まり、瞬きの間に唇が奪われる。
心臓がうるさいくらい早くなるのと同時に、やっぱり嬉しくて胸が温かくなる。もしかしたらなんて、自分に都合のいいことを思っていると唇が離れる間際にふと違和感を覚えた。
「戻るぞ。ここは狭い」
ルークが微笑んで離れる。その時ふわりと香った匂いに、さあっと血の気が引いていくような心地がした。
甘い匂いがした。ルークのものじゃない、知らない匂いだった。
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