【完結】推しを死亡フラグから救済したら溺愛ルートに入りました⁉︎

白(しろ)

文字の大きさ
118 / 119
終章

一緒にいよう

しおりを挟む
 ルークの手首に嵌められているブレスレットと似たような指輪が、今俺の左手の薬指に嵌っている。
 前世ではここに婚姻の証を嵌めるんだと話したら、ルークが作ってくれたのだ。
 オレはそれにかなり驚いた。ルークが彫金もできると知っていたけれど、まさかこんなものまで作れるとは思っていなかったからだ。

「いつかお前に何か送りたいと思ってやり始めたことだ。叶ってよかった」

 そう言って指輪にキスをする姿はどこからどう見ても王子様で、オレは尊さに涙を禁じ得なかった。

「それはなんの涙だ」
「ルークが尊すぎて泣いてる」
「嬉しくはないのか」
「嬉しいに決まってんだろ! 舐めんな!」
「泣くか怒るかどっちかにしろ」

 そう言いつつルークは心から楽しそうに笑ってオレを抱き締める。その背中に腕を回して抱き着き、胸元に耳を寄せた。
 するとじわりと体温を感じると同時に、一定のリズムを刻む心音も聞こえてくる。
 オレはルークの心音を聞くのが好きだ。生きていると実感できるから。

「幸せだなぁ」
「ああ、本当にな」

 しみじみそう呟いて、お互いに顔を見合わせて唇を触れさせる。
 ……こんな穏やかな時間がもう数年と続いていた。
 一時期は世界を賑わせていたらしいダリアの残党の話題もすっかり消え失せ、今では紙面には王国のスターのスキャンダルや闘技場の結果予想、それと並んでたまに政治的な情報が載るのみとなった。

 一年程前にはエスタの妊娠と出産の記事も出た。ノクトは副団長に昇進したし、あの時エスタと共に世界を救った攻略対象たちは順当に政治の中枢へと上り詰めている。
 ダリアのことが過去になったなと、なんとなく思った。
 それはルークも同じだったのか、ある日の夜ソファに並んで座っていたらこう切り出された。

「旅に出たい」

 思い詰めたような顔で告げられたのだけが意外だった。

「おう、いいぞ。いつ行く?」

 軽く返すとルークは目を丸くし、信じられないものを見るような目でオレを上から下まで眺めた。

「なんだよ」
「そんなに軽く言えることなのか」
「ルークなら言うだろうなって思ってただけだよ。それに、オレもそろそろだなって思ってたし」
「……どうして」
「愛の力ってやつじゃね?」

 嘘である。
 実際はルークをよく観察していたからわかったことだ。
 新聞からはダリアの記事は消えた。けれど完全ではない。
 世界をひっくり返そうとした悪事がそう簡単に全て片付くはずがなく、王国から離れた場所は未だに復興が終わっていない箇所がある。

 そしてダリアの残党とまではいかずとも、そこに近しい人物が各地で悪事を働いていることも知っている。
 ルークの中でダリアのことは過去にならない。自分がやってきたことも。
 だからいつか外に出ると言いだすだろうなとは予想していた。それが今だっただけだ。

「で、いつ行くんだよ? さすがにちょっと準備はした方がいいだろ」

 すっかり馴染んだ獣人の里での生活だったが元々いつかは旅に出ると伝えてある。頭の中で必要なものを叩き出していたら、ルークが小さく口を開いた。

「……着いてきてくれるのか?」

 それに目を丸くして、一拍置いて仕方がないなと笑う。

「あの世にも着いていってやるよ」

 数年前の自分ならまだ気持ちが伝わっていないのかと怒って不安になっただろう。けれど数年も連れ添えばルークの性格はわかる。
 ルークは優しい。きっとこの話を切り出す前からずっとオレについて考えてくれていたはずだ。
 この旅は旅行とは違う。きっと危険な目にも遭うだろう。
 ルークはオレのことを愛しているから、多分傷一つだって付けたくないはずだ。
 だから悩んでいたんだと思うが、そんなのは知らねえっていうのがオレの意見である。

「お前今更オレがいない人生歩けると思ってんの? ちなみにオレは無理です。ルークがいないと寂しいので、テコでも引っ付いていきます」

 真顔で親指を立てて言えば、ルークが呆気に取られた顔をした。
 その表情が面白くもあり、可愛くもあると捉えられるようになった。
 そして何よりルークが飛び抜けて優しいとわかったから、オレはこの数年で簡単にわがままを言えるようになった。

「一緒に連れてってよ。オレのこと置いていきたくねえだろ?」

 そう言って腕を広げるとルークは一瞬戸惑いを見せたけれど、割とすぐに抱き締められた。

「オレだってルークを一人で行かせたくねえもん。分かれよ」

 広い背中に腕を回して抱き締める。

「ああ、そうだな。今更リアスを一人にさせられない」

 少し震えている声に笑みを浮かべた。

「愛してるよ、ルーク」

 そう言ってキスを贈ると、いつもなら「愛してる」と返してくれるルークが何も言わないことに違和感を覚えた。
 どうしたんだろうかと視線を向けると、そこには嬉しそうな、けれど今にも泣いてしまいそうな顔をしたルークがいた。
 どうした、と声を掛けるよりも先にルークの口が開く。

「やはりお前は変人だ」

 その言葉に目を丸くして、そしてすぐに笑う。

「頭おかしいとは言わなくなったな」
「頭もおかしいと思っているぞ、たまに」
「はあ⁉︎  ちょっと聞き捨てならねえぞ」
「それでもリアスを心から愛しいと思う。この先何があっても、俺はお前を愛し続けるだろう」

 ルークの手が頬に触れる。
 その温かさに目を細めて頷いた。

「俺も。何年経っても、多分生まれ変わっても。俺はずっとルークのことを愛してると思う」

 頬に触れていた手が降りて、自然と指を絡めるように握る。
 そっと額を触れ合わせて誓うように口にする。

「一緒にいよう。ずっと」
「……ああ」

 近い距離で視線を絡ませて、どちらともなく笑い合う。
 そのままキスをして、時間が許す限り愛を交わし、同じベッドで朝を迎える。
 オレたちが旅立ったのは、それから一月もしないある日のことだった。

しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

もふもふ獣人に転生したら最愛の推しに溺愛されています

  *  ゆるゆ
BL
『もふもふ獣人転生』からタイトル変更しました! 白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で息絶えそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 本編、完結済です。 魔法学校編、はじめました! リクエストのお話や舞踏会編を読まなくても、本編→魔法学校編、でお話がつながるようにお書きしています。 リトとジゼの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントなくてもどなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! 第12回BL大賞さまで奨励賞をいただきました。 読んでくださった方、応援してくださった皆さまのおかげです。ほんとうにありがとうございました! 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

オメガだと隠して魔王討伐隊に入ったら、最強アルファ達に溺愛されています

水凪しおん
BL
前世は、どこにでもいる普通の大学生だった。車に轢かれ、次に目覚めた時、俺はミルクティー色の髪を持つ少年『サナ』として、剣と魔法の異世界にいた。 そこで知らされたのは、衝撃の事実。この世界には男女の他に『アルファ』『ベータ』『オメガ』という第二の性が存在し、俺はその中で最も希少で、男性でありながら子を宿すことができる『オメガ』だという。 アルファに守られ、番になるのが幸せ? そんな決められた道は歩きたくない。俺は、俺自身の力で生きていく。そう決意し、平凡な『ベータ』と身分を偽った俺の前に現れたのは、太陽のように眩しい聖騎士カイル。彼は俺のささやかな機転を「稀代の戦術眼」と絶賛し、半ば強引に魔王討伐隊へと引き入れた。 しかし、そこは最強のアルファたちの巣窟だった! リーダーのカイルに加え、皮肉屋の天才魔法使いリアム、寡黙な獣人暗殺者ジン。三人の強烈なアルファフェロモンに日々当てられ、俺の身体は甘く疼き始める。 隠し通したい秘密と、抗いがたい本能。偽りのベータとして、俺はこの英雄たちの中で生き残れるのか? これは運命に抗う一人のオメガが、本当の居場所と愛を見つけるまでの物語。

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

処理中です...