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第一章
移送中の馬車にて2
俺は、フィリアスは、王族とは名ばかりの普通の人間だった。
王族の証でもあり、同時に武に秀でた父と同じ金色の髪に青い目。そして賢妃と呼ばれる母に似たこの顔は、俺にとってプレッシャーにしかならなかったのだ。
「この程度の剣技、父君は十の頃には我が物にしておりましたぞ」
「……この設問は以前解き方をお教えしたではありませんか。王妃様に似ているのはお顔だけのようですね」
これに似たようなことを数え切れない程言われた。
始めは俺も躍起になって認められようと努力したが、それが越えられない壁なのだと気付いた瞬間があった。
「ロザリア・フォークナーと申します」
婚約者候補として連れて来られたロザリアだ。
彼女は才女だった。頭脳も剣技も、それ以外も、彼女は全てにおいて俺よりも遥か上に立っていた。同い年の女の子に手も足も出なかった俺は、その日絶望したのだ。
それでも食らいつこうとした時期もあった。
けれど俺には大した才覚もなくて、そしてそれを認めるだけの度量もなかった。
結果どうなったかといえば、権力を振りかざすわがままで傲慢な放蕩王子に成り下がったというわけだ。
「……救いようがない」
本当に、どうしようもない程に。
拗ねるのが一年やそこらならまだいい。けれど俺は畑中陽一の記憶を思い出すまで、そのコンプレックスを拗れに拗れさせたのだ。
「だからあんな女に……」
そんな恨み言を吐いて、頭を振る。
全ては自分の弱さが招いた結果で、彼女もまた自分のわがままの被害者なのだ。
王族を侮辱した罪で男爵令嬢は修道院送りとなり、男爵家は貴族位剥奪の上国外追放となった。
犯した罪を考えれば、俺も男爵家も命があるだけ運がいいのだろう。
これから待っている暮らしは生きながら死んでいるようなそれだ。以前の俺なら癇癪を起こして暴れ回っていただろうが、今は随分と落ち着いていた。
これも畑中陽一の記憶のおかげだろう。
「……元々その器じゃなかったんだ。これからは静かに暮らそう」
こう思えば、あのタイミングで記憶が戻ってきたのも意味があるように思えた。
あの場を回避できたとしても、俺にはとても王は務まらないし、あの男爵令嬢を御せる器でもない。つくづく分不相応だったと思いながら、これからの生活に思いを馳せた。
きっと今までとは比べ物にならない質素な生活になるだろう。
元王族とはいっても俺は罪人に等しいから、関わり合いになる人間もきっといない。
寂しい余生になるのだろう。
だが仕方がない。それ程俺のしたことは悪だったのだから。
……公爵領に着くまであと数日はある。その間、もう少し畑中陽一の記憶に思いを馳せてみよう。この記憶は今まで読んだどの本よりも面白い。
暇を潰せるものがあってよかったと、俺は目を閉じて馬車の揺れに身を任せた。
王族の証でもあり、同時に武に秀でた父と同じ金色の髪に青い目。そして賢妃と呼ばれる母に似たこの顔は、俺にとってプレッシャーにしかならなかったのだ。
「この程度の剣技、父君は十の頃には我が物にしておりましたぞ」
「……この設問は以前解き方をお教えしたではありませんか。王妃様に似ているのはお顔だけのようですね」
これに似たようなことを数え切れない程言われた。
始めは俺も躍起になって認められようと努力したが、それが越えられない壁なのだと気付いた瞬間があった。
「ロザリア・フォークナーと申します」
婚約者候補として連れて来られたロザリアだ。
彼女は才女だった。頭脳も剣技も、それ以外も、彼女は全てにおいて俺よりも遥か上に立っていた。同い年の女の子に手も足も出なかった俺は、その日絶望したのだ。
それでも食らいつこうとした時期もあった。
けれど俺には大した才覚もなくて、そしてそれを認めるだけの度量もなかった。
結果どうなったかといえば、権力を振りかざすわがままで傲慢な放蕩王子に成り下がったというわけだ。
「……救いようがない」
本当に、どうしようもない程に。
拗ねるのが一年やそこらならまだいい。けれど俺は畑中陽一の記憶を思い出すまで、そのコンプレックスを拗れに拗れさせたのだ。
「だからあんな女に……」
そんな恨み言を吐いて、頭を振る。
全ては自分の弱さが招いた結果で、彼女もまた自分のわがままの被害者なのだ。
王族を侮辱した罪で男爵令嬢は修道院送りとなり、男爵家は貴族位剥奪の上国外追放となった。
犯した罪を考えれば、俺も男爵家も命があるだけ運がいいのだろう。
これから待っている暮らしは生きながら死んでいるようなそれだ。以前の俺なら癇癪を起こして暴れ回っていただろうが、今は随分と落ち着いていた。
これも畑中陽一の記憶のおかげだろう。
「……元々その器じゃなかったんだ。これからは静かに暮らそう」
こう思えば、あのタイミングで記憶が戻ってきたのも意味があるように思えた。
あの場を回避できたとしても、俺にはとても王は務まらないし、あの男爵令嬢を御せる器でもない。つくづく分不相応だったと思いながら、これからの生活に思いを馳せた。
きっと今までとは比べ物にならない質素な生活になるだろう。
元王族とはいっても俺は罪人に等しいから、関わり合いになる人間もきっといない。
寂しい余生になるのだろう。
だが仕方がない。それ程俺のしたことは悪だったのだから。
……公爵領に着くまであと数日はある。その間、もう少し畑中陽一の記憶に思いを馳せてみよう。この記憶は今まで読んだどの本よりも面白い。
暇を潰せるものがあってよかったと、俺は目を閉じて馬車の揺れに身を任せた。
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