【完結】婚約破棄を言い渡した王子は悪役令嬢の兄に執着される

白(しろ)

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第二章

一夜明け

 その翌日、朝になって顔を合わせたエルダーにこう聞かれた。

「昨夜はどうして途中で?」
「すまない。無作法だったな」

 苦笑しながら答えるが、それはどうやらエルダーの求めていた言葉ではなかったらしい。なら求められているのは謝罪ではなく、その決断に至った経緯だと推測した。

「俺がいたらせっかくの料理の味が悪くなると思ったんだ」
「……」

 エルダーが目を見開き、言葉を探しているように視線を左右に泳がせた。

「あの場に俺がいなければ、フォークナーももう少し自然体で二人と話せていたかもしれないしな。早めに退室できなくてすまなかった」
「フィリアス様が謝るようなことではございません」
「そうだとしても、あの雰囲気に邪魔だったのは俺だ」
「……どうされたのですか、フィリアス様。あなた様はそのようなことをお気になさらずとも」

 困惑したような声と表情に眉を下げる。

「俺は罪人だ、エルダー」

 頭で考えて、声に出して、そして実感する。
 自分の立場というものを、もう一度ちゃんと見つめ直さないといけないと思った。

「それなのによくしてくれてありがとう。だが、今でも十分貰いすぎているんだ。その上にリュシアンの時間まで奪うわけにはいかない」

 エルダーは何も言わなかった。
 理解してくれたのだろうと俺は笑みを浮かべ、支度を整えて外へと向かう。

「菜園に行こう」
「はい」

 昨日ベッドの中で生きながら死ぬ、というのはどういうことか考えた。
 答えはわからなかったけれど、一つの可能性として浮かんだものがある。
 それは他者との繋がりだ。他者と繋がれず、何ものになれないままただ生を続けるしかない。これほどまでに無限とも思える苦痛を覚えるものはあるのだろうか。
 孤独は恐ろしい。俺だって一人は嫌だ。

 エルダーやゴードンがいてくれるだけ俺は恵まれているかもしれないが、それでも俺は独りだ。きっとこれは、死ぬまでそうだ。
 長い時間をここで過ごすことになる。俺がその間に学ぶことは、いかに孤独に殺されないかという術だ。
 俺は自死を許されていない。かといって正気を保てなくなってしまってもリュシアンに迷惑が掛かってしまう。それなら俺がすることは、どれだけ迷惑を掛けずに生きていくということ、それだけだ。

 悲しくも、リュシアンの言う通りだと苦笑する。
 何もせず考えず、ただ生きているだけでいい。本当にその通りだ。
 そんなことを思いながら足を前に出す。館からそれ程離れていないから、菜園まではすぐに着く。
 さてゴードンは、と視線を巡らせた俺は目を丸くした。
 そこに子供がいたからだ。

「リオル様⁉︎」
「エルダー!」

 黒髪に陽の光を反射させながら振り返ったその顔は、リュシアンによく似ていた。

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