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第二章
気まずさと驚き
その言葉に俺は笑ったが、リオルの後ろにいたリュシアンは驚いていた。信じられないというような顔をしてリオルを見ているから、きっと筋金入りのトマト嫌いなのかもしれないと予想する。
それを考慮して、小さなサイズにカットしたものをフォークに刺す。これでいいかとリオルに視線を向けた時、彼は両目を固く閉じて口を開けていた。
「お、俺が食べさせるのか?」
「ぼくトマト自分じゃ食べられない」
余程嫌なのか頑なに目を開けず、断固としてフォークを持とうとしない姿勢に少し困る。おずおずとリュシアンを見れば、仕方がないとばかりに首を縦に振った。
「じゃあ、食べさせるぞ。あー……ん」
「んんん」
小さなかけらを口内へと入れると、リオルは意を決したように咀嚼を始めた。最初は深く眉間に刻まれていた皺も少し経てば薄くなり、飲み込む頃には目を開けていた。
「美味しいっ」
星のような目をキラキラと輝かせてまた口を開けた。
どうやら次も欲しいらしい。
「気に入ったのか?」
「うんっ、これすごく美味しい! もう一個ちょうだいっ」
少し離れた場所でゴードンが嬉しそうに拳を突き上げている。それを見て俺も笑い、今度は切らないままの塊をリオルの口に入れた。
それもぺろりと食べたリオルが口を開けたところでラナがやってきた。
「リオル様、ご自身でお召し上がりください」
「はぁい。じゃあこれお皿いっぱいにちょうだいっ!」
「お野菜もお召し上がりになってください」
「ええー……」
ラナに背中を押されて戻っていったリオルを微笑みながら見送る。
俺にもああやって食べたくないとわがままを言った時期があったなと懐かしくなるが、あんなに和やかな空気ではなかったなと苦笑する。
つくづく、俺は人間ができていなかったのだなと何度目かわからない反省をしたところで、隣にいる人物について思い出した。
「……」
俺の隣にはリュシアンがいる。
名前を呼んでもいいという許可はもらったが、それでも気軽に話せるようになったわけではないのだ。
リオルのおかげで解れた緊張がまた舞い戻ってきて、俺がぎこちなく皿に手を伸ばして料理にフォークを刺した。こうなったら食べて気分を誤魔化そうと思ったところで、リュシアンの声がした。
「それは美味しいですか」
「へ」
緊張のあまり変な声が出てしまった。
そのままぎこちなくリュシアンの方を見るも、彼は俺の方を見てはいなかった。でも意識はこちらを向いているのがわかり、フォークを握る手に力が入る。
「お、美味しい。その、リュシアンは、食べたのか?」
「いつもの食事なら」
「、そうか」
会話が悲しいくらいに続かない。
俺にもっと社交性があればと思うが、生憎そんなものは培ってきていない。どうしようもないくらい気まずい空気をどうにかしたくて、俺はほとんど勢いのまま口を開いた。
「あの、これ、食べてみるか?」
「……」
リュシアンが驚いたような顔で俺を見ている。
「その、嫌なら無理にとは言わないが、でも、美味しいし……」
言葉がどんどん尻すぼみになる。あまりの気まずさにエルダーやゴードンに助けを求めたくなる。
けれどこういう時に限って、二人とも俺の様子を気にしている気配がしない。
「では、一ついただきます」
「そうか、一つ、……え?」
また会話が終わってしまった、どうしたら、そう思い込んでいたところ耳を疑う言葉が聞こえてきて目を見開く。
「あ、じゃあ、皿とか取ってくるから、ちょっと」
「これで結構」
リュシアンの手が俺の右手に触れた。
それを考慮して、小さなサイズにカットしたものをフォークに刺す。これでいいかとリオルに視線を向けた時、彼は両目を固く閉じて口を開けていた。
「お、俺が食べさせるのか?」
「ぼくトマト自分じゃ食べられない」
余程嫌なのか頑なに目を開けず、断固としてフォークを持とうとしない姿勢に少し困る。おずおずとリュシアンを見れば、仕方がないとばかりに首を縦に振った。
「じゃあ、食べさせるぞ。あー……ん」
「んんん」
小さなかけらを口内へと入れると、リオルは意を決したように咀嚼を始めた。最初は深く眉間に刻まれていた皺も少し経てば薄くなり、飲み込む頃には目を開けていた。
「美味しいっ」
星のような目をキラキラと輝かせてまた口を開けた。
どうやら次も欲しいらしい。
「気に入ったのか?」
「うんっ、これすごく美味しい! もう一個ちょうだいっ」
少し離れた場所でゴードンが嬉しそうに拳を突き上げている。それを見て俺も笑い、今度は切らないままの塊をリオルの口に入れた。
それもぺろりと食べたリオルが口を開けたところでラナがやってきた。
「リオル様、ご自身でお召し上がりください」
「はぁい。じゃあこれお皿いっぱいにちょうだいっ!」
「お野菜もお召し上がりになってください」
「ええー……」
ラナに背中を押されて戻っていったリオルを微笑みながら見送る。
俺にもああやって食べたくないとわがままを言った時期があったなと懐かしくなるが、あんなに和やかな空気ではなかったなと苦笑する。
つくづく、俺は人間ができていなかったのだなと何度目かわからない反省をしたところで、隣にいる人物について思い出した。
「……」
俺の隣にはリュシアンがいる。
名前を呼んでもいいという許可はもらったが、それでも気軽に話せるようになったわけではないのだ。
リオルのおかげで解れた緊張がまた舞い戻ってきて、俺がぎこちなく皿に手を伸ばして料理にフォークを刺した。こうなったら食べて気分を誤魔化そうと思ったところで、リュシアンの声がした。
「それは美味しいですか」
「へ」
緊張のあまり変な声が出てしまった。
そのままぎこちなくリュシアンの方を見るも、彼は俺の方を見てはいなかった。でも意識はこちらを向いているのがわかり、フォークを握る手に力が入る。
「お、美味しい。その、リュシアンは、食べたのか?」
「いつもの食事なら」
「、そうか」
会話が悲しいくらいに続かない。
俺にもっと社交性があればと思うが、生憎そんなものは培ってきていない。どうしようもないくらい気まずい空気をどうにかしたくて、俺はほとんど勢いのまま口を開いた。
「あの、これ、食べてみるか?」
「……」
リュシアンが驚いたような顔で俺を見ている。
「その、嫌なら無理にとは言わないが、でも、美味しいし……」
言葉がどんどん尻すぼみになる。あまりの気まずさにエルダーやゴードンに助けを求めたくなる。
けれどこういう時に限って、二人とも俺の様子を気にしている気配がしない。
「では、一ついただきます」
「そうか、一つ、……え?」
また会話が終わってしまった、どうしたら、そう思い込んでいたところ耳を疑う言葉が聞こえてきて目を見開く。
「あ、じゃあ、皿とか取ってくるから、ちょっと」
「これで結構」
リュシアンの手が俺の右手に触れた。
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