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第七章
下がれ
けれどこれでいいんだと自分に言い聞かせる。この会さえ終われば、きっと全部が元通りになるはずだと思ったから。
そしてテーブルの上が片付けられ、代わりにデザートが置かれる。
生クリームがふんだんに使われたフルーツケーキだ。パウンドケーキは食べたけれど、こんな豪華なケーキが出てくるなんてと思わず目を丸くした。
「最近料理じゃフィル様に遅れを取りっぱなしなんでな。ちょっと張り切っちまったぜ」
鼻の下を指で擦りながら満更でもない様子のゴードンを見て素直に「すごいな」と声を掛けるとゴードンはでれっと笑った。
「よせやい人を天才みたいに!」
「そこまでは言っておりませんぞ」
「でもすごいよゴードン! 早く食べようっ」
リオルのかわいい声に急かされて、ゴードンではなく彼の弟子らしい料理人たちがケーキを切り分け、それを俺たちの前に置いていく。
俺の前に皿が置かれる間際、料理人の手が震えてテーブルと皿が音を立てた。
「も、申し訳ございません」
「いい、問題ない。ありがとう」
普段リュシアンの前で給仕をしないからか、緊張しているのが手に取るようにわかった。
リュシアンの前で萎縮する気持ちは痛い程わかるため料理人の方を見ながら言えば、彼は俺の顔を見るなり肩を跳ねさせた。
俺にまで緊張をしなくてもと思うが、ふと違う可能性もあるなと眉を下げた。俺が元王子でここの監視対象だとわかっているなら、そんな反応にもなるなと思った。
何せ俺の王都での評判はすこぶる悪い。
以前の俺であればこの料理人を無礼者だと糾弾して簡単にクビにしていただろう。
「……すまないな」
思わず小さく謝罪すると料理人が目を丸くした。
「下がれ」
その瞬間、リュシアンの冷たい声が響いて今度は俺が肩を跳ねさせる。
「聞こえなかったのか。下がれと言ったんだ」
穏やかな空気が一瞬で凍り付きリオルが小さな声で「兄様……?」と呟く。それにリュシアンは何も答えず。鋭い言葉を発したくせにこちらを見ようともしていない。
リュシアンが何がしたいのかわからない。そう思って俯くと、恐怖で固まってしまった料理人をゴードンが困った様子で後ろに下がらせていた。
直前まで表面上だけでも楽しい食事会だったのに、途端に苦痛の時間になってしまった。
こうなったら早く俺だけでも食べ終えてこの場から離れた方がいい。
そう判断してケーキに手を付ける。すると止まっていた時間が動き出し、リオルもおずおずとケーキを口に運んでいた。
とても美味しいはずなのにそう素直に言葉に出せない程空気が重たい。どの道リオルに負担を掛けてしまったと自己嫌悪に陥りそうになりながら、一度手を止めて紅茶に手を伸ばす。
「フィリアス様、お砂糖は」
エルダーの言葉に首を振る。
「大丈夫だ。ケーキがあるから」
こんな状況でもゴードンが作ったものは美味しい。甘さとフルーツの酸味がちょうどよく、そしてスポンジもふわふわだ。感想を伝えたいけれど、今それは難しい。
また明日にでも直接伝えようと思いながら、カップに口を付けた。
そしてテーブルの上が片付けられ、代わりにデザートが置かれる。
生クリームがふんだんに使われたフルーツケーキだ。パウンドケーキは食べたけれど、こんな豪華なケーキが出てくるなんてと思わず目を丸くした。
「最近料理じゃフィル様に遅れを取りっぱなしなんでな。ちょっと張り切っちまったぜ」
鼻の下を指で擦りながら満更でもない様子のゴードンを見て素直に「すごいな」と声を掛けるとゴードンはでれっと笑った。
「よせやい人を天才みたいに!」
「そこまでは言っておりませんぞ」
「でもすごいよゴードン! 早く食べようっ」
リオルのかわいい声に急かされて、ゴードンではなく彼の弟子らしい料理人たちがケーキを切り分け、それを俺たちの前に置いていく。
俺の前に皿が置かれる間際、料理人の手が震えてテーブルと皿が音を立てた。
「も、申し訳ございません」
「いい、問題ない。ありがとう」
普段リュシアンの前で給仕をしないからか、緊張しているのが手に取るようにわかった。
リュシアンの前で萎縮する気持ちは痛い程わかるため料理人の方を見ながら言えば、彼は俺の顔を見るなり肩を跳ねさせた。
俺にまで緊張をしなくてもと思うが、ふと違う可能性もあるなと眉を下げた。俺が元王子でここの監視対象だとわかっているなら、そんな反応にもなるなと思った。
何せ俺の王都での評判はすこぶる悪い。
以前の俺であればこの料理人を無礼者だと糾弾して簡単にクビにしていただろう。
「……すまないな」
思わず小さく謝罪すると料理人が目を丸くした。
「下がれ」
その瞬間、リュシアンの冷たい声が響いて今度は俺が肩を跳ねさせる。
「聞こえなかったのか。下がれと言ったんだ」
穏やかな空気が一瞬で凍り付きリオルが小さな声で「兄様……?」と呟く。それにリュシアンは何も答えず。鋭い言葉を発したくせにこちらを見ようともしていない。
リュシアンが何がしたいのかわからない。そう思って俯くと、恐怖で固まってしまった料理人をゴードンが困った様子で後ろに下がらせていた。
直前まで表面上だけでも楽しい食事会だったのに、途端に苦痛の時間になってしまった。
こうなったら早く俺だけでも食べ終えてこの場から離れた方がいい。
そう判断してケーキに手を付ける。すると止まっていた時間が動き出し、リオルもおずおずとケーキを口に運んでいた。
とても美味しいはずなのにそう素直に言葉に出せない程空気が重たい。どの道リオルに負担を掛けてしまったと自己嫌悪に陥りそうになりながら、一度手を止めて紅茶に手を伸ばす。
「フィリアス様、お砂糖は」
エルダーの言葉に首を振る。
「大丈夫だ。ケーキがあるから」
こんな状況でもゴードンが作ったものは美味しい。甘さとフルーツの酸味がちょうどよく、そしてスポンジもふわふわだ。感想を伝えたいけれど、今それは難しい。
また明日にでも直接伝えようと思いながら、カップに口を付けた。
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