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第八章
また来たらその時は
あ、と思った時にはもう目に涙が溜まっていて俺は目を見開き、慌ててリオルを抱き締める。
「どうした? 何か嫌なことを言っただろうか、すまないリオル」
「違うぅ」
ぎゅうっと俺に抱き着きながらリオルが首を振る。
「ぼ、ぼく、もうフィルたちと会えなくなっちゃうのー」
「!」
「お父様と、お母様がっ、もう安全だから、帰っておいでって」
ああ、なるほど。緊張していた体から力が抜けていくのと同時に、言葉では言い表せない寂しさを覚えた。
リオルは次期公爵でもあるけれど、まだまだ幼い子供だ。命を狙われるという脅威がなくなった今、両親の元から離れて暮らす理由がない。
喜ばしいことだ。これからきっとリオルは健やかに成長する。安全な場所でのびのびと育っていってほしい。心からそう思うのに、ぽかりと胸に穴が開いたような心地だ。
「寂しいよぉ」
「うん、俺も寂しいよ。すごく、本当に寂しい」
「兄様とフィルも一緒に王都に行こうよぉ」
ぐずぐずと泣きながら溢れた言葉にちくりと胸が痛む。
「……すまない、リオル。俺はここから出られないんだ。けどリュシアンならきっと大丈夫だ。ずっとは難しいかもしれないけど、たまにならリオルに会いに行って」
「フィルも一緒じゃなきゃやだーっ!」
被せるようにぶつけられた言葉に胸が痛む。
つくづく過去の自分の所業を悔やむけれど、過去は変えられない。だがこんなに泣いているリオルをどう慰めていいかもわからない。
ただ何も言えずにリオルを抱き締めていれば、ふと側から声がした。
「それならばリオル様がまたこちらにいらっしゃれば良いのです」
いつの間にか戻ってきたエルダーが穏やかな声でリオルに声を掛ける。
「ずっとは難しいでしょうが、たまになら旦那様もお許しくださるかと。それではお嫌ですかな?」
洗練された所作で紅茶を注ぎ、視線をリオルに向けないまま伝えられる声はとても優しい。紅茶が注がれたカップをそれぞれの席の前に置いてからこちらを向いた表情も、やはり声と同じく優しいものだった。
「リオル様がお寂しいように、私共も寂しいのです。けれどもう一生会えないわけではないと、リオル様もご存知でしょう」
エルダーは優しいけれど、厳しいとも思う。
もし俺がリオルと同じ歳だったなら、こんなことを言われても絶対に納得はしなかった。だって俺にはものの分別がつかなかったからだ。
優先順位はいつでも自分が一番上で、自分の思い通りにならなければ癇癪を起こす。そんな手の掛かる子供だった。
けれどリオルはそうじゃないと俺は知っている。
「……っ」
今も自分が抱えている気持ちを飲み込んで、ぎゅっと唇を噛んでいる。
将来爵位を継ぐからこその気概なのか、それともリオルの生まれ持った性質なのかはわからないけれど、俺は彼が立派だと思った。
「また来たら、その時は遊んでくれる?」
震える声に深く頷いて、涙の滲む眦に指を添える。
「どうした? 何か嫌なことを言っただろうか、すまないリオル」
「違うぅ」
ぎゅうっと俺に抱き着きながらリオルが首を振る。
「ぼ、ぼく、もうフィルたちと会えなくなっちゃうのー」
「!」
「お父様と、お母様がっ、もう安全だから、帰っておいでって」
ああ、なるほど。緊張していた体から力が抜けていくのと同時に、言葉では言い表せない寂しさを覚えた。
リオルは次期公爵でもあるけれど、まだまだ幼い子供だ。命を狙われるという脅威がなくなった今、両親の元から離れて暮らす理由がない。
喜ばしいことだ。これからきっとリオルは健やかに成長する。安全な場所でのびのびと育っていってほしい。心からそう思うのに、ぽかりと胸に穴が開いたような心地だ。
「寂しいよぉ」
「うん、俺も寂しいよ。すごく、本当に寂しい」
「兄様とフィルも一緒に王都に行こうよぉ」
ぐずぐずと泣きながら溢れた言葉にちくりと胸が痛む。
「……すまない、リオル。俺はここから出られないんだ。けどリュシアンならきっと大丈夫だ。ずっとは難しいかもしれないけど、たまにならリオルに会いに行って」
「フィルも一緒じゃなきゃやだーっ!」
被せるようにぶつけられた言葉に胸が痛む。
つくづく過去の自分の所業を悔やむけれど、過去は変えられない。だがこんなに泣いているリオルをどう慰めていいかもわからない。
ただ何も言えずにリオルを抱き締めていれば、ふと側から声がした。
「それならばリオル様がまたこちらにいらっしゃれば良いのです」
いつの間にか戻ってきたエルダーが穏やかな声でリオルに声を掛ける。
「ずっとは難しいでしょうが、たまになら旦那様もお許しくださるかと。それではお嫌ですかな?」
洗練された所作で紅茶を注ぎ、視線をリオルに向けないまま伝えられる声はとても優しい。紅茶が注がれたカップをそれぞれの席の前に置いてからこちらを向いた表情も、やはり声と同じく優しいものだった。
「リオル様がお寂しいように、私共も寂しいのです。けれどもう一生会えないわけではないと、リオル様もご存知でしょう」
エルダーは優しいけれど、厳しいとも思う。
もし俺がリオルと同じ歳だったなら、こんなことを言われても絶対に納得はしなかった。だって俺にはものの分別がつかなかったからだ。
優先順位はいつでも自分が一番上で、自分の思い通りにならなければ癇癪を起こす。そんな手の掛かる子供だった。
けれどリオルはそうじゃないと俺は知っている。
「……っ」
今も自分が抱えている気持ちを飲み込んで、ぎゅっと唇を噛んでいる。
将来爵位を継ぐからこその気概なのか、それともリオルの生まれ持った性質なのかはわからないけれど、俺は彼が立派だと思った。
「また来たら、その時は遊んでくれる?」
震える声に深く頷いて、涙の滲む眦に指を添える。
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